PIVOT TALK BUSINESS
通信4社の明暗と楽天の戦略
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2026年9月4日

通信大手4社の最新決算から「2強2弱」と呼ばれる業界の現状と明暗を読み解く。10月に一部ローミングが終了する楽天モバイルの今後の戦略、ドコモの課題を徹底分析。プラチナバンドや衛星通信がもたらす変化から、激化する「ポイント経済圏」の最新動向まで専門家が解説する。 <ゲスト> 石川温|スマホジャーナリ...
携帯キャリア4社の決算分析:KDDIの楽天ローミング終了が通信業界に与える影響
日本の携帯キャリア大手4社の最新決算が出揃い、市場には鮮明な「2強2弱」の構図が浮上した。KDDIとソフトバンクが堅調な業績を維持する一方、NTTドコモと楽天モバイルは苦戦を強いられている状況だ。この明暗を分ける最大の要因として、「ネットワーク品質の差」が指摘されている。
中でも、特に注目を集めるのは、KDDIが楽天モバイルへのローミング契約を9月末で終了すると正式に表明したことである。この発表は、単に一方のサービス提供の終了にとどまらず、楽天モバイルの今後のネットワーク品質と事業戦略、さらには国内通信市場全体の競争環境に甚大な影響を与えると考えられる。
本稿では、最新決算データとKDDIのローミング終了に関する詳細な分析を通じて、各社の現状と将来の戦略、そして通信業界全体の未来図を読み解く。楽天モバイルが直面する課題、KDDIの決断に至った背景、そして各社が加速する「経済圏」戦略の実態について解説する。

Q. 最新の携帯キャリア4社の決算から見えてくるのはどのような状況か?
最新の携帯キャリア決算は、KDDIとソフトバンクを「2強」、NTTドコモと楽天モバイルを「2弱」とする構図が浮き彫りになった。KDDIとソフトバンクは強力なネットワーク品質を背景に、料金値上げを行ってもユーザーの離脱を抑え、堅調な業績を維持している。
一方、ドコモはネットワーク品質の低下により顧客流出に直面し、それを阻止するため多額の販促費を投じているが、収益を圧迫する結果となっている。楽天モバイルも、表面的な契約数増加の裏で、自前の基地局網整備の遅れによるネットワーク品質の課題が深刻化している。
この「2強2弱」の背景には、いずれもネットワーク品質の問題が横たわっており、特にドコモは従来の「どこでもつながる」という信頼性を揺るがす事態に陥っているのが現状だ。
Q. 楽天モバイルはKDDIのローミング終了後、どのようにサービス品質を維持するのか?
KDDIによるローミング契約の9月末での終了は、楽天モバイルのネットワーク品質に重大な影響を及ぼす可能性がある。これまでの楽天モバイルの通信エリアは、自社ネットワークに加えてKDDIのローミング回線に大きく依存していた。既に一部エリアでのローミング終了後には、SNS上で通信不具合への不満が頻繁に投稿されている。
楽天モバイルのエリアマップ上では広くサービス提供されているように見える都市近郊の住宅街や繁華街も、実際にはKDDIの回線を活用している部分が少なくない。これらの「重ね合わせエリア」でのローミング終了が、日常的な使い勝手を著しく低下させる懸念がある。
そのため、多くの楽天ユーザーがサービス品質の悪化を理由に、メイン回線を他社に移行する「大移動」や、ポイント優遇などのメリットを享受しつつも、繋がりの良さを求めて他社のサブ回線と併用する「2回線持ち」といった選択肢を検討する可能性がある。
Q. KDDIはなぜ楽天モバイルへのローミング終了を決断したのか?

KDDIが楽天モバイルへのローミング終了を決断した背景には複数の要因がある。最も直接的なのは、楽天ユーザーのデータ通信量増加がau本回線ユーザーの通信品質に悪影響を与え始めたことだ。自社顧客の体験品質を優先するため、楽天モバイルへのローミングサービス提供を継続する利点が低下したと考えられる。
また、以前は菅政権下での値下げ圧力により通信料収入が落ち込む中、楽天からの数百億円規模のローミング接続料はKDDIにとって貴重な収入源であった。しかし、現在のKDDIは自身の決算が好調であり、自力で十分な収益を確保できる段階に達した。これにより、ローミング収入に依存する必要性が薄れたのだ。
さらに、楽天モバイルが「最強ネットワーク」を目指すと公言していることに対し、高橋社長をはじめとするKDDI幹部が「誰のおかげで最強と言えているのか」という心理的な反発を覚えた可能性も指摘されている。
Q. 楽天モバイルは自社ネットワークの整備をどのように進める計画か?
楽天モバイルは、KDDIのローミング終了に対応するため、自社ネットワークの強化を急いでいる。年間2,000億円規模の設備投資を計画しているが、これは他の大手キャリアが投じる3~4倍の投資額と比較すると著しく低い水準にある。全国に高品質なネットワークを構築するには、単純な資金だけではなく、地権者との交渉、住民からの反対運動といった複雑な課題が伴い、膨大な時間と労力を要する。
地方における基地局建設のコスト効率の悪さも問題である。山間部などに基地局を設置するには、電力線や光回線の敷設が必要となるが、利用者数が少ないため投資回収が極めて難しい。
この問題に対し、楽天は独自の解決策として「衛星通信」に大きな期待を寄せている。年内にAST社との提携による衛星からの直接通信サービス開始を目指し、地上基地局がないエリアでもカバーする狙いだ。これにより、地理的な制約や地上インフラ整備のコストを大幅に削減し、広範囲を網羅できる可能性があると見ている。
Q. 楽天モバイルの契約者数の伸びにもかかわらず、その事業戦略の本質は何を意味するのか?

楽天モバイルは1,000万契約を超える規模を達成したが、その事業戦略の本質は、単に通信サービスを安価に提供することにとどまらない。真の目的は、モバイルを顧客との接点とし、「楽天経済圏」へのユーザー囲い込みを強化することにある。毎月の通信料金支払いを通じて、楽天ポイントを付与し、そのポイントを楽天銀行、楽天証券、楽天市場など、グループ内の多様なサービスで利用させることで、顧客を長期的に囲い込むことを狙っている。
モバイル通信は、金融サービスなどに比べライバルが少なく、顧客が一度利用を開始すれば長期継続しやすい特性があるため、経済圏への入り口として極めて強力なフックとなるのだ。三木谷会長の強いリーダーシップのもと、楽天市場出店店舗や楽天トラベル提携施設といったビジネスパートナーをも味方につけ、この異例の成長を成し遂げた経営手腕は高く評価される。
また、総務省も新規参入を促進し、通信市場の競争を活性化させる目的で、他社からプラチナバンドの一部を楽天に再配分するなどの異例な支援を行ってきた経緯もこの成長に貢献している。
Q. ドコモを含む大手キャリア各社は今後どのような戦略で市場競争に臨むのか?

国内の携帯通信市場は、人口減少と料金プランの限界により、通信サービス単体での収益拡大が難しい局面を迎えている。このため、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの主要キャリア各社は、楽天モバイルと同様に「通信」を基盤としつつ、金融サービスを軸とした「経済圏」の構築と拡大に舵を切っている。
NTTドコモは「ドコモフィナンシャルグループ」を立ち上げ、マネックス証券や住信SBIネット銀行との連携を強化している。同社は特に、全国に約2,000店舗あるドコモショップを、単なる携帯契約窓口ではなく、金融商品相談や資産運用、終活サポートといった、地域の「生活インフラ」としての機能を持たせることで、顧客層の拡大と深耕を目指す。
ソフトバンクは「PayPay経済圏」を中心に、PayPay銀行やPayPay証券との連携を進める。一方で、ドコモのような多額の販促費を投じた短期的な顧客獲得競争には慎重であり、ホッピング対策を強化するなど、「顧客の質」を重視した堅実な戦略を採っている。総務省の規制により直接的な長期優遇が難しい中、各社は住宅ローンなどの長期金融商品と紐づけた複合ポイント付与などで、実質的な顧客囲い込みを図っている。