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自衛隊に単独採用:テラドローンの真相
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2026年9月4日

防衛省の迎撃ドローン取得プログラムに海外勢をさしおいて単独採用され、株価はストップ高となるなど大きな注目を集めるテラドローン。その実力は本物なのか。開発現場への独占潜入取材と社長への直撃インタビューで、その裏側に迫る。 <ゲスト> 徳重徹|Terra Drone CEO 九州大学を卒業後、アリゾナ...
日本の国防にイノベーションを:テラドローンが挑む迎撃ドローン開発の最前線
ウクライナや中東での紛争激化に伴い、ドローンは現代戦の主要な武器としてその重要性を高めている。このような国際情勢を受け、日本政府も動き出した。特に防衛省は、「3ヶ月でのドローン取得」という異例の超短期プログラムを発動。これに対し、38社がエントリーし、試験段階へ進んだのはわずか4社であった。
その中で、唯一の日本企業として最終的な開発・納品契約を勝ち取ったのがテラドローンである。世界的な防衛ドローンの趨勢の中で、なぜテラドローンが選ばれ、日本の防衛産業にどのような変革をもたらそうとしているのか。同社の戦略と覚悟を探る。

Q. 防衛省の迎撃ドローンプログラムでテラドローンが唯一の日本企業として契約を勝ち取ったのはなぜか?
テラドローンが防衛省の迎撃ドローンプログラムにおいて単独で契約を獲得できた理由として、アジャイルな開発スピード、優れた自律機能、そして国産メーカーとしての立ち位置が挙げられる。競合他社は海外企業の技術輸入体制が多くを占める中、テラドローンは買収したウクライナ企業と協力し、わずか半年でAIによる自律機能を独自に開発し実装した点で決定的な優位性を確立した。国内で保守・改良ができる「日本発メーカー」としての存在は、日本の気候に合わせた調整や継戦能力の確保に不可欠だと判断された。
同社の強みは、元々EVメーカー「テラモーターズ」の役員らが創業メンバーであることに由来する。彼らは創業初期からものづくりメーカーとしての部品調達、品質管理、サプライヤー連携といったハードウェア開発のノウハウを有しており、この経験が国防を目的としたハードウェア製造において活かされた。特に、中国企業のドローンが市場の8〜9割を占める現状において、「ノンチャイナ」という安全保障上の要請に応える形で、2年前から本格的なハードウェア開発に着手していた点も高く評価されている。
Q. ウクライナの戦況からテラドローンが学んだことは何か?

テラドローンの徳重社長は、防衛事業の立ち上げにあたり、ウクライナの戦地へ15回以上渡航し、現代戦の「リアル」を肌で感じた。戦地では金型製造のような時間のかかるプロセスは通用せず、前線からのフィードバックを瞬時に反映させるアジャイルな開発体制が求められる。3Dプリンターを積極的に活用し、設計データを共有することで遠隔地でも即座に部品を製造し、機体を改良する「リアルなものづくり」が日常であった。
また、徳重社長は地政学的な危機意識から、国内での参入障壁や過去の失敗を乗り越え「自分たちがやらねば日本が破滅する」という「狂気的な」覚悟を胸に事業参入を決意した。平時と戦時を往復する日々の中で、常に「ギリギリ感」を持って情報収集を行い、防空警報が鳴り響く地下壕での避難やマイナス20度の酷寒の中で電車を待つといった過酷な経験が、同社の社員に国防への強い当事者意識と使命感を醸成させた。
Q. 迎撃ドローンの具体的な機能と仕組みはどのようになっているか?
テラドローンが開発した迎撃ドローンは、敵の自爆ドローン「シャヘド」(時速約180km)に対抗するため、時速300kmを超える高機動性を有する。単なる速さだけでなく、戦場で実際に機能するかを証明する「コンバットプルーブン」と、圧倒的な低コストの両立が最重要指標である。
従来のドローンが容易な自動運転なのに対し、競技用ドローンの「FPVドローン」はマニュアル操作が極めて難しい。迎撃ドローンはさらに高度な操作スキルを要するが、人員不足の軍にとって操縦士の訓練は大きなボトルネックだ。そこでテラドローンはAIを搭載した自律追尾システムを構築した。このシステムでは、パソコン上からボタン一つでドローンが離陸し、レーダー情報から敵の約200m圏内までGPSで誘導される。その後、機体搭載のカメラとAIによる自動画像認識(終末誘導)に切り替わり、標的を識別。約3mの距離で自動突撃し、近接信管により爆発、標的を無力化するという一連の流れで機能する。
この革新的な迎撃ドローンの原型は、徳重社長がウクライナの展示会で見出した。一般的なFPVドローンが多数を占める中で、わずか数社だけが「インターセプタードローン」を展示しており、これを手掛けるウクライナ企業をM&Aにより傘下に収めた。徳重社長はこの迎撃ドローンを、「10万円程度のコストで10億円の戦車を破壊するFPVドローンがコモディティ化した中で、差別化を図る」切り札と位置づけた。
Q. 日本の防衛ドローン産業に不可欠な課題は何か?

日本の防衛ドローン産業が健全に発展するために、二つの喫緊の課題が存在するとテラドローンは指摘する。
第一の課題は、「ワンライン生産体制」の維持である。有事の際、数十万台規模のドローン需要に対応するには、平時から年間数千台〜1万台程度の小規模ながらも一貫した生産ラインを恒常的に稼働させておく必要がある。トヨタやホンダが海外展開で採用したマザー工場のように、品質管理や人材育成のノウハウを蓄積するワンラインを確立しておけば、有事の際にそのコピーを大量展開することで一気に生産量をスケールさせることが可能となる。しかし、現在の日本ではこの基盤が整っておらず、政府による最低限の継続的な発注が不可欠だ。中国をはじめとする周辺国が既に数万機以上の自爆ドローンを保有する中、日本もそれに対抗するには膨大な数の迎撃ドローンが必要であり、平時のオーダーが少なすぎるのが現状だ。
第二の課題は、「主要部品の国産化」である。現在の防衛ドローンにおいて、台湾製の部品が利用されるケースも少なくない。しかし、台湾有事のような地政学的なリスクが発生すれば、部品供給が滞り、生産停止に陥る可能性が高い。入札条件で明示されないため、目先のコスト効率を優先し海外製部品を選びがちだが、長期的視点で見ればこれは日本の安全保障上の脆弱性となる。米国が近年、ドローンの国産化義務付けや関税を通じて国内部品産業を育成している事例があるように、日本も防衛省が入札条件として主要部品(電池、モーターなど20~30点)の国産化を義務付けるべきだと主張する。
この国産化推進は、かつて日本を支えた中小部品メーカーの再活性化にも繋がる。テラドローン自身も電池の国産化を目指し、かつてスマートフォン用電池を量産し現在は苦境に立たされている国内の優良企業をパートナーに見出している。ゲームチェンジャーたるドローン産業が、日本の製造業に「ラストチャンス」を与えることができると考えている。
また、生産体制においても、ウクライナでの教訓を活かすべきだと提案する。ウクライナでは、大規模工場が爆撃の標的となることを避けるため、15人程度の小さなオフィスやショッピングモール、アパートなど、複数の極小拠点に生産設備を分散させ、さらに8~9ヶ月おきに物理移転を行うことで、生産継続性を確保している。
Q. 防衛事業に参入するテラドローンの決意と今後の展望はどのようなものか?

テラドローンは、防衛産業への参入に伴うレピュテーションリスクを恐れることなく、オープンな姿勢で事業を進める。「国家の命運を守る誇り高きデュアルユース産業」としてのプライドを持ち、戦時中に多くの先人が命を賭した日本の歴史的背景を顧みながら、「高杉晋作のような大義に立ち向かう」覚悟で取り組むべきだとの信念を持つ。日本の防衛への貢献を隠す文化ではなく、当事者意識と責任感を持って国家防衛の重要な部分を担う姿勢を表明している。
徳重社長は、創業からEV分野でテスラやBYDといったグローバルスタートアップに日本が遅れを取った苦い経験を、「防衛ドローン」分野で世界をリードすることで「リベンジする」との強いコミットメントを掲げる。
中東戦争によって迎撃ドローンの死活的な重要性が世界的に認知され、このことがテラドローンにとって大きな追い風となった。世界の防衛プライム企業は、自社開発が難しい自律迎撃ドローン技術を持つスタートアップとの提携を血眼で探している状況だ。テラドローンが有するウクライナでの実戦実績、すなわち「コンバットプルーブン」は、国際的な連携における最大の「ドアオープナー」となる。
今後、日本国内における陸・海・空自衛隊での防衛体制構築を基盤としつつ、武器輸出三原則の見直し(防衛装備移転三原則)を追い風に、世界中の防衛プライム企業を提携先として、グローバルなドローン市場の覇権を奪還するビジョンを描いている。迎撃ドローン技術は単なる兵器開発に留まらず、日本発の防衛スタートアップが世界の最先端を走る、新たな産業創出の鍵となる可能性を秘めている。