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住宅価格を下げるため、世界の都市が動き始めた。日本が導入すべき「7つの施策」
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2026年8月27日

なぜ新築も中古もマンション高騰が止まらないのか?その背景にある構造変化と、過度な高騰を抑えるための政策について、明治大学の野澤千絵教授に聞いた。 <ゲスト> 野澤千絵|明治大学教授 大阪大学大学院修士課程修了後、ゼネコン勤務を経て、2002年東京大学大学院にて博士(工学)取得。2007年より東洋大...
「金融商品化する住宅」にどう立ち向かう?非居住化が進む日本のマンション市場の真実
現代の日本社会で、住宅は「住むためのもの」という本質的な機能から乖離し、急速に「金融商品」としての側面を強めている。都心の新築マンションが高騰を続ける中で、目立つのが法人や外国人投資家による購入とその後の短期転売だ。
この動きは表面的な統計データだけでは見えない実態を伴い、都市の住宅市場に歪みをもたらしている。私たちは住宅を再び「住む人」のための空間に戻せるだろうか。世界の先進事例を参照し、日本が直面するこの問題の真実と、今後の政策的課題について考察する。

Q. 日本のマンション市場で、海外からの投資がどのように進行しているのか?
日本国内の、特に都心部では、一見すると「よく分からない法人」が新築マンションを購入し、その後すぐに海外の投資家へと転売されるケースが増加している。この初期段階での法人による購入は、国籍の不明瞭さや、実態が分かりにくい複雑な流通構造を生んでいる。
データでみると、短期転売が恒常的に多いのは墨田区、渋谷区、大田区など一部の地域である。また、新宿区の新築マンションにおいては、国外に住所がある購入者の割合が、ある時期に急上昇する傾向が確認されており、場所によっては突出して高い比率を示す場合がある。
Q. 公式データが示す「外国人所有率」と実態にはどのような乖離があるのか?
国土交通省が公表するデータは、新築マンションが最初に販売された時点での購入者の住所しか捕捉していないという限界がある。このため、日本の法人が最初に物件を買い取り、その後すぐに外国人投資家へ転売する実態は、現在の統計には反映されていないのが現状だ。
実際のところ、外国籍の個人が直接日本で新築マンションを購入するには、情報収集や複雑な契約手続きといった高いハードルがある。そこで、初期の買い手となる国内法人が一旦多数の物件を一括購入し、情報整理や諸手続きの代行役となり、後にそれを外国の個人投資家に売却することで利益を得る構図がある。
このような間接的な取引を含めれば、実際の外国人によるマンション保有率は公式データよりも相当に高い可能性がある。デベロッパーも日本市場の需要だけでは限界があるため、海外の投資層に頼らざるを得ない構造も背景にあると指摘できる。

Q. 海外の都市、特にバルセロナでは住宅問題にどう対処しているのか?
バルセロナでは、住宅を投資目的の金融商品ではなく「社会的機能」を持つものと明確に位置づけ、多様な政策パッケージを通じて住む人のための住宅市場を回復させる努力を続けている。
歴史的な景観が厳しく保全されているため新規の住宅建設が困難な同市では、一般の長期賃貸よりも高い利回りが見込める民泊への転換が急増し、結果として市民が居住するための住宅が不足し家賃が高騰した。これに対し、バルセロナ市は新たな民泊の営業を停止し、家賃上限規制を導入するなど、極めて強力な抑制策を打ち出している。
さらに、開発業者に対して新規開発プロジェクトの3割を「アフォーダブル住宅」、つまり低所得者でも手の届く価格帯で恒久的に供給される社会住宅として提供することを義務付けている。自治体が空き物件の優先購入権を持ったり、改修支援を行ったり、「空室税」を導入したりする多角的なアプローチは、日本や京都市の「空き家税」の導入事例にも多くの示唆を与えている。
Q. 世界的に導入が進む「空室税」は、どのような効果を発揮しているのか?
空室税は、経済のグローバル化による国際マネーの流入が住宅価格を高騰させ、一般市民が住居を持てなくなる問題を解決するため、世界中で導入が進む政策である。特にカナダのバンクーバー市では2017年の導入以降、段階的に税率や適用範囲を強化した結果、驚くべきことに空き家の数が67%も減少したと報告されている。
この税制のユニークな点は、その税収を低所得者向けの「アフォーダブル住宅」の建設資金に再投資していることである。結果として、バンクーバーでは数百億円規模の税収が居住環境改善のために活用されている。また、病気や相続、転勤などの正当な理由による空室は課税対象から除外されており、単に不動産を遊休資産として保有し続ける層への適正な負担を求める側面が強い。これは、公共サービスによる利益だけを受けながら、住民税などの「負担」を負わないフリーライダーを抑制する意図も持つ。
Q. 「空室税」導入によって、住宅価格は抑制されるのか?
興味深いことに、カナダのバンクーバーで約7~8年間の運用データに基づく研究によると、空室税が直接的に住宅の市場価格を下落させる効果は統計的には限定的であるという結論に達している。つまり、空室税は価格抑制を主な目的とするのではなく、適切に活用されていない住宅を市場に流通させ、住宅供給量を増やすことを意図したものだ。
この税は、「理由なく空室を維持するなら、それに伴う公共の負担を分かち合うべきである」という、所有者への強いメッセージと受益と負担の関係性の適正化が本質にある。空室率を減少させることで、確実に市場の賃貸・売買物件供給が増加し、住宅へのアクセスが改善されるという点で極めて有意義な政策であると評価できる。

Q. 日本の住宅政策は、現状の課題にどう対応すべきなのか?
日本も、もはや住宅市場の「金融商品化」問題を無視できない段階に到達している。政策対応としては、まず居住者を最優先する税制への抜本的見直しが必要となる。例えば、新築住宅の固定資産税が5~7年間半額になる優遇措置は、居住の有無にかかわらず一律適用され、年間1300億円もの市町村税収を減少させている。投資目的や非居住の物件もこの恩恵を受けるという矛盾を是正し、居住者に限定した優遇策に改めるべきである。
次に、法人による超短期転売への課税を強化することも求められる。法人税の枠組みとは別に、個人の短期譲渡所得課税と同様に高額な税率を適用するなど、投機的な取引を抑制する仕組みの検討が必要だ。また、新築マンションの販売においても、過半数を実需目的の居住者に販売するガイドラインを設けるなど、販売ルールの適正化も有効だ。
外国人購入者に対しては、日本の区分所有法や管理組合の仕組み、議決権の責任などを事前に多言語で厳格に説明する義務を課し、「国内管理人」の選定を必須とすることで、マンションの適切な管理運営体制の維持を図るべきである。国際的な差別にあたらない範囲で、実務上の課題に対応した方策を講じる必要に迫られている。
Q. 「非居住化」問題は都市の持続可能性にどのような影響を与えるのか?
マンションの「非居住化」、つまり住む人がいない状態で所有され続ける状態は、一見問題がないように見えるが、戸建ての空き家とは異なる「静かな空き家問題」として都市の持続可能性を内側から蝕む。外部からは住んでいるかどうか判別しにくいため問題が顕在化しにくく、気づかぬうちに進行していることが多いのだ。
非居住のマンションが過半数を占めるようになると、マンション管理組合の総会が開催できない、理事会が発足しないといった実務上の機能不全を招く恐れがある。これは建物の老朽化や維持管理に大きな影響を及ぼし、最終的にはそのマンションだけでなく、地域全体のコミュニティの希薄化やスラム化につながりかねない。都市全体のインフラが維持されているという「受益」に対し、住民税といった「負担」を負わない非居住者の増加は、社会全体の負担公平性という観点からも大きな問題だ。住宅は一体誰のためのものか、この根本的な問いに向き合う時期が来ている。