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独自指標「株時計」で読む!期待高まる成長分野と回復兆しを見せるバリュー株
経済が複雑に絡み合う現代において、投資判断の指針を見出すことは容易ではない。
本記事では、山和証券調査部部長の志田憲太郎氏が提唱する独自の投資判断ツール「株時計」を紐解きながら、今後特に注目すべき6つの業界について詳細な分析を提供する。
市場のトレンド、隠れたポテンシャル、そして将来性のある企業群を深掘りする。
最先端テクノロジーが牽引する成長分野から、見落とされがちな伝統産業の回復の兆しまで、それぞれの業界が「株時計」のどの局面に位置し、どのような投資機会を秘めているか考察していく。
この詳細な分析が、読者の賢明な投資戦略の一助となるであろう。


Q. 独自の投資判断ツール「株時計」はどのように活用するのか?
「株時計」とは、個別の株価ではなく、産業・業種ごとの「業績」サイクルを時計の文字盤で可視化する独自のツールである。
正午の位置にある業種は業績が極めて好調であり、皆がその状態を認知しているが、依然として成長余地がある局面を示す。
一方、夜明け前の朝の時間帯は、業績が改善傾向にあるものの、まだ完全に需要が回復していない状態を指す。
この時計は必ずしも右回りに動くわけではなく、常に変化する市場環境によって位置は変動するため、状況に応じた見極めが重要である。
今回の分析では、昼のフェーズに属するロボット、DX、半導体装置と、夜から朝への変化が注目される旅行関連、エンタメIP、オールドエコノミーの計6つの業界に焦点を当て、その投資妙味を検証する。
Q. ロボット・FA業界は一時的な決算減益でも買い場と言われるのはなぜか?
ロボット・FA(ファクトリーオートメーション)業界では、安川電機を例に挙げることができる。
同社は欧州での構造改革費用計上により、前期比19.2%の営業減益となった結果、株価は一時的に売られた。
しかし、同社の本質的な状況は依然として健全である。FAにおいて不可欠な「モーションコントロール」と「ロボット」の両事業で、受注高が四半期連続で増加を継続しており、高い利益率を維持している点は重要だ。
このトレンドはオムロンや三菱電機といったFA業界全体にも共通し、堅調な設備投資需要が業界を支えていることがわかる。
また、AI半導体の性能向上に伴いAIデータセンターの利用コストが低下すると、動画学習を多用するフィジカルAIの利用が促進され、ロボット・FA業界に新たな追い風が吹く。
目先の決算結果に惑わされず、長期的な視点で見れば、現在は買い場であるという見方も存在する。
Q. DX業界でAIによる代替が懸念される中で成長の要因は何か?

生成AIの登場により、DX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するシステム開発企業が不要になるという「AI代替論」が一時的に懸念され、株価を圧迫した。
しかし、大企業の基幹システム構築においては、AIだけで全てを賄うことは不可能であり、人による管理や高度な発注プロセスが依然として必要不可欠である。
実際、企業のDX需要は一向に衰えておらず、日立の「Lumada(ルマーダ)」事業はその成功例である。
ルマーダは企業のデータと現場設備を組み合わせてDXを支援し、第一四半期で売上が前年同期比31%増の1兆1440億円を達成、日立全体の売上高の43%を占める稼ぎ頭となった。
さらに、AIのプログラム生成能力は、文法が厳格なコーディング領域と極めて相性が良い。
これにより、SaaS企業はAIを活用することで開発の生産性を劇的に向上させ、安価で効率的なサービス提供が可能となった。
また、足元で年率20〜30%の増益を続けながらもPERが10倍台に放置されている割安なAIベンチャーも、将来的な成長が期待できる隠れた存在といえよう。
Q. 半導体装置業界の新たな伸びしろはどこにあるのか?
これまでのAI投資では、GPUやメモリを量的に増やす「後工程」が主戦場であったが、膨大な電力消費が問題となり、半導体業界の焦点は「量の追求」から「電力効率化と性能最適化」へとシフトしている。
具体的には、CPUによる全体の管理能力を高め、少ない消費電力で最大限のパフォーマンスを引き出す「前工程」技術への回帰が注目される。
このような流れの中、アドバンテストのような半導体テスト装置メーカーは強力な優位性を持つ。
半導体が複雑化・微細化すればするほど、その品質を保証するためのテスト工程は増加し、需要が拡大する構造にあるからである。
さらに、AI半導体の出荷遅延があったとしても、データセンターの「建屋」自体を整備する需要は先行する。
そのため、データセンター向けの電源設備、空調設備、そしてこれらを支える送配電網を担う日立、三菱電機、富士電機、明電舎といった関連企業群の売上は、半導体の供給状況に左右されず極めて堅調に推移する可能性がある。
Q. インバウンド需要鈍化が言われる中で旅行関連業界は本当に好調なのか?
訪日外国人の伸び率は鈍化傾向にあり、生活防衛意識の高まりから内需が冷え込む可能性が懸念されていたものの、旅行関連業界の直近決算は驚くほど堅調であった。
例えば、東京ディズニーシーの新エリア効果により、オリエンタルランドはチケットの値上げに加えグッズ販売の好調が収益を押し上げた。
また、JR九州の高額な列車旅行も販売好調が続くなど、高価格帯の体験に対する国内消費意欲は高い状態を保っている。
さらに、すき家、吉野家、サイゼリヤといった外食チェーンや、トレファク、ブックオフなどのリユース市場でも軒並み大幅な増収増益を記録している。
これは富裕層だけでなく、アベノミクス以降に社会に出た35歳以下の若年層が、投資や賃上げの恩恵を受けて消費に積極的であり、国内消費を牽引している構図が明らかになったといえる。
今後、この国内消費の動きが持続するかが、旅行関連業界が「夜」から「朝」へ転換するかの試金石となるであろう。
Q. エンタメIP業界の収益源とその魅力はどこにあるのか?

AIによるゲーム開発が容易になることで大手企業の優位性が失われるという見方もあったエンタメIP業界であるが、実際には「IP(知的財産)の強さ」がその収益性を大きく左右することが明らかになった。
カプコンのケースを見ると、総販売本数の8割以上を占めるのが、開発費用を回収済みの旧作(リピート作品)である。
PlayStationやSwitchといった特定ハードの枠を超え、PCゲームプラットフォーム(Steam)を通じて世界展開することで、高い利益率を実現している。
新作のリリースやアナウンスが過去作の再評価を促し、売り上げが活性化するという好循環も確認できる。
加えて、コロナ禍で海外ユーザーが日本のコンテンツを字幕・吹替に関わらず享受するようになり、メディアミックス戦略(アニメ化、映画化など)や多言語展開がIP価値をさらに高めている。
また、日本の有力IPは中東のオイルマネー層に人気がある。
世界トップクラスの企業に投資する傾向のある中東資金は、日本のゲーム企業をターゲットとしやすく、国家予算の決定後、例年1月から2月にかけて買いが入る季節性も見られるという。
Q. オールドエコノミーはこれから注目の的となるのか?
7月の決算発表を控え、市場では合理的な資金シフトが起きていた。
すなわち、好材料が出尽くせば売られやすい高PERのAI関連株を売却し、悪材料はある程度織り込み済みで、少しでも好材料があればサプライズとなり買われる割安なオールドエコノミー(伝統産業)株へ資金を移動する動きであった。
製造業の景況感指数が50を超える堅調な水準を維持しており、世界的な需要回復は劇的ではないものの、日本製鉄やトヨタのような企業には業績の底打ちの兆しが現れている。
特にトヨタは、半導体不足や関税、地政学的リスクといった数々の逆境にもかかわらず生産計画を維持している点で注目される。
アメリカ市場における10年周期の買い替えサイクルも控えており、多くの悪材料を織り込み済みであるため、株価の下値は固いと判断される。
全体として、市場はAI集中から物色の広がりを見せ、リスクリターンのバランスが変化する中で、底打ち感のあるオールドエコノミーに再度注目が集まる可能性がある。
