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大企業のAI活用はなぜ失敗するのか?4つの壁の克服法
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2026年8月19日

AI導入の投資は急増しているが、結果が出ている大企業はわずか。なぜ大企業はAI活用に失敗するのか?「4つの壁」の克服法についてナレッジワークの麻野耕司CEOに聞いた。 <ゲスト> 麻野耕司|ナレッジワーク CEO 慶應義塾大学を卒業後、リンクアンドモチベーションに入社。2010年最年少で執行役員。...
企業のAI活用がなぜ95%も失敗するのか?劇的な生産性向上を実現する「垂直型AIエージェント」と克服すべき4つの壁
多くの企業がAI導入を加速させるなか、その成功率は決して高くはない。MITの調査によると、企業における生成AI導入の約95%が投資対効果(ROI)を実感できず、失敗に終わっているという実情がある。これは単なるツール導入に留まらない、より本質的な課題の存在を示唆している。
では、企業はどのようにAIを活用すれば劇的な生産性向上を実現できるのか。SaaSカンパニーからAIカンパニーへと大きく事業転換を果たしたナレッジワークCEOの麻野耕司氏が、企業のAI活用を阻む課題と、真の成功への道筋を語る。

Q. 企業のAI活用がなぜ95%も失敗するのか?
MITのデータは企業における生成AIの導入が95%もの割合で失敗している実態を明確に示している。この「失敗」の定義は、PL(損益計算書)レベルで明確なROI、すなわち売上増加やコスト削減、利益向上といった具体的な成果を確認できない状態を指す。世界中でこの傾向は共通しているため、AI活用が役に立たないというわけではない。
マッキンゼーのレポート「AIエージェント型時代の到来」は、AI活用を大きく二つのユースケースに分けている。一つは全社共通でチャットボットやコパイロットを導入する「水平型」ユースケースだ。これは業務の利便性向上には貢献するものの、劇的な生産性向上には繋がらないとされている。

もう一つは、研究開発、サプライチェーン、セールス、カスタマーサービスなど特定の業務機能に特化した「垂直型」ユースケースである。真の大幅な生産性向上は、この垂直型AIエージェントに踏み込むことで初めて実現する。AIエージェントとは、単に質問に答えるだけでなく、人間の代わりに業務を遂行する機能を持つ。
Q. 垂直型AIエージェント導入を阻む「4つの壁」とは何か?
劇的な生産性向上をもたらす垂直型AIエージェントだが、その実現には4つの大きな壁が立ちはだかっている。これらの壁のいずれかで、多くの企業は導入プロセスにつまずいているのが現状だ。
1.データの壁:AIエージェントを機能させるには高品質なデータが不可欠だ。しかし、多くの企業ではデータが集約されておらず、散在したり整理されていなかったりする。例えば営業部門では、商談データが適切に残されていなかったり、「最終_田中修正.pptx」といった古いファイルが多数残存したりするため、AIが正確な情報を選別できない。
2.業務の壁:AIは優秀な新入社員に似ているため、企業の「勝ちパターン」や業務プロセスを論理的に教え込む必要がある。しかし、日本企業では仕事が属人化しており、業務が体系的に言語化・整理されていないことが多い。そのため、AIにどのような行動をさせれば良いかを明確に指示できないという問題がある。
3.実装の壁:現場の業務理解とAI技術者による実装スキルの両方が必要となる。だが、この両者の間で業務理解と技術実装がスムーズに往復できないケースが多く見られる。業務担当者がAIの可能性を理解しきれていなかったり、エンジニアが業務の具体的なニーズを捉えきれなかったりすることが、実装の遅延や停滞を招いている。
4.ユーザーの壁:最高のAIエージェントが完成しても、現場の社員に使われなければ意味がない。複数のAIツールに個別にログインする手間や、ユーザー目線ではない使いづらいインターフェースが普及を阻む場合が多い。また、「新しいことに取り組みたい」「成果を出したい」といった主体的なモチベーションがないと、いくら効率的なツールであっても定着しづらい現実がある。
Q. 垂直型AIエージェントは具体的にどのような機能を実現するのか?

ナレッジワークが提供するセールスAIエージェントのデモンストレーションは、垂直型AIの具体的な機能と、それによって営業活動がどう変革されるかを示す。
顧客情報AIエージェント:ウェブ上の情報から業界トレンド、競合分析を提供し、外部情報による顧客理解を促進する。
アカウントプランエージェント:CRM/SFAデータなど内部情報と外部情報を組み合わせ、最適な案件候補をAIが示唆。例えば、「データ統合基盤の構築」というテーマでの提案を推奨する。
レコメンドエージェント:案件化のシナリオを作成し、商談で活用すべき資料や過去の成功事例などを提示する。
AI商談記録:オンライン・オフライン問わず商談内容をAIがリアルタイムで書き起こし、要約する。そこから詳細な顧客課題が抽出され、次のステップへと活用される。
提案作成AIエージェント:顧客データ、商談記録、営業ナレッジを元に、顧客向けにカスタマイズされた提案書をAIが自動で作成。提案内容の調整も容易である。
AI商談練習(ロープレ)機能:提案書の練習相手をAIが務める。AIが顧客の質問を再現し、営業担当者の模擬回答に対して客観的で一貫したフィードバックを瞬時に提供するため、人間相手のようなプレッシャーがなく、質の向上が図れる。
Q. AI時代において、人間はどのように役割とスキルを進化させるべきか?
AIが知識の収集・整理や論理構築に優れているのは明らかだ。その一方で、人間には相手の感情を動かして意思決定を促す交渉力や共感力といった固有の強みがある。AIと人間がそれぞれの得意分野を分担することで、全体の生産性は最大化される。
「AIが議事録を取るようになると営業担当が成長しない」といった懸念に対し、麻野氏は「電卓の登場で人間の計算能力が落ちると心配された時代と似ている」と指摘する。電卓や表計算ソフトが普及しても、人間はそれらを活用しながら、より高度な思考や新たなスキルの獲得へと進化してきた。AI時代においても同様に、人間の成長の形は変化するだろう。
営業は相手の感情を動かし、意思決定を促す人間的な要素が非常に大きい業務である。AIに事務作業や知識提供を任せることで、営業担当者は顧客との関係構築、複雑な課題解決、戦略的な交渉といった「人間にしかできない」価値提供に集中できる。これがAI時代に求められる、人間のあるべき役割とマインドセットである。
Q. 企業がAI活用を成功に導くには何が必要か?

企業のAI活用を成功に導くためには、これまでに挙げた「4つの壁」を一つずつ丁寧に乗り越える覚悟が必要だ。特に、大企業にありがちな情報システム部門と現場の間のセクショナリズムを解消し、両者が密に連携することが極めて重要となる。
日本国内には、業務ノウハウとAI技術の両方を熟知した人材(FDE:Frontend Development Engineer)が不足しているのが現状である。そのため、導入を加速させるためには、業務に精通したコンサルタントとAI技術に強いエンジニアがタッグを組む、外部の専門パートナーを活用することが現実的な解決策となる。
さらに重要なのは、「作る」ことだけを目的とせず、「使われ、結果を変える」ことへ目を向けることだ。従業員に対し、「なぜ今仕事を変えなければならないのか」(Why)、「新しい役割とは何か」(What)を丁寧に伝え、AI活用への納得感と動機付けを醸成することが不可欠である。
これからのスタートアップ市場は、特定の業務領域に特化した垂直型AIエージェントの構築・運用を支援する企業が席巻するだろう。ナレッジワークは創業から6年間、営業ドメインに特化してきた知見を持つため、労働人口が多い営業分野の巨大な市場において大きな競争優位性を確立している。企業にとって、この2~3年がAI活用による生産性向上競争の大きな勝負どころとなるだろう。