PIVOT TALK BUSINESS
地震・水害に強い土地の見分け方
(135)
1,868回視聴
2026年8月17日

7月の熊本の震災と、8月に千葉を襲った記録的豪雨。災害列島日本で、 不動産選びの際、何を見るべきなのか?地震・地盤災害の専門家の横山芳春氏が、具体的にチェックすべき事項や便利なマップサイトなどを紹介しつつ、災害リスクと不動産選びについて解説する。 <ゲスト> 横山芳春|さくら事務所 地盤・防災コン...
家一軒ごとに異なる地震・災害リスク:知られざる地盤の見方と不動産選びの真実
家探しにおいて立地、価格、交通利便性、教育環境など重視する点は多い。しかし、忘れられがちなのが地震をはじめとする災害リスクである。国土交通省のハザードマップをチェックする人は増えたが、それで全てがわかるわけではない。
地形と地質、地盤災害の専門家であり、さくら事務所の地盤・防災コンサルタントを務める横山芳春氏は、「災害リスクは家一軒ごとに異なる」と語る。都心のど真ん中でさえ地盤は一様ではなく、その地域ならではの複雑なリスクが存在する。災害から命と資産を守るため、ハザードマップでは分からない真の地盤リスクの読み解き方を解説する。

Q. なぜ同じ地域でも地震リスクが異なるのか?
同じ千代田区内、港区内であっても、地盤の揺れやすさは場所により大きく異なる。地震による揺れやすさを示す「J-SHISマップ」で確認すると、黄緑色や黄色の地域は比較的揺れにくい地盤で、オレンジ色や赤色が濃くなるほど揺れやすい地盤である。都心部では皇居周辺が緑色(揺れにくい)を示す一方で、周辺に赤色が多く見られるなど、局地的な差が顕著である。
この揺れやすさは、居住地の地面の下の地盤構造によって決まる。軟弱な粘土層や泥層が深い場所ほど揺れやすく、一方、岩盤や硬い砂利層がしっかりした場所ほど揺れにくい傾向にある。関東平野の中心部に向かうほど地盤が軟弱化し、揺れやすい地域が増加するため、場所ごとの地質を知ることが重要だ。

Q. 従来のハザードマップ以外にどのような地盤情報があるのか?
地方自治体が提供するハザードマップだけでなく、以下の専門的なツールもあわせて活用すべきである。
J-SHISマップ: 地震発生時の地盤の揺れやすさを示す
地理院地図(国土地理院): 土地の成り立ち(台地か、谷地かなど)を判別でき、地盤の強さを把握する上で有用
数メートル離れた隣接地でさえ、地盤の性質が大きく異なる事例は少なくない。また、災害リスクとして「沈みにくさ」「揺れにくさ」「液状化のしにくさ」はそれぞれ独立した現象である。揺れにくさは地盤の軟らかさ(泥層)に関係し、液状化のしにくさは緩い砂層と地下水の多さに起因する。戸建て購入時には特に、これら異なる特性を複数のマップで多角的に確認する視点が不可欠である。

Q. 戸建て住宅購入時に地盤リスクをどう評価すべきか?マンションとの違いは?
マンションは、鉄筋コンクリート造の堅牢な構造に加え、綿密な地盤調査と硬質な地盤まで達する深い杭打ち工事を行うため、地震による建物自体の損傷リスクは低い傾向にある。しかし、戸建て住宅の場合、マンションほど地盤調査に費用をかけないケースが多く、詳細な液状化判定が行われないことがある。
「地盤改良工事が行われていれば安心」というのも誤解である。地盤改良の主な目的は、建物の重みによる「不同沈下(家が傾く現象)」を防ぎ、居住者の心身の健康被害を防ぐことだ。地震動による揺れやすさや液状化そのものを完全に抑制するわけではない。中古の戸建て住宅購入時には、「地盤調査報告書」や「地盤改良施工報告書」の内容を確認し、どのような地盤改良が施されているか、その深度と目的を詳細に把握すべきである。
なお、マンションであっても安心は禁物だ。周辺インフラや配管が損傷すると、建物自体が無事でも水回りが使えなくなるなどの被害が生じるリスクがある点には留意したい。
Q. 首都直下地震における火災リスクと「帰宅困難者」問題の実態は?
首都直下地震では、建物の倒壊や地盤の揺れだけでなく、「火災による延焼」が大きな脅威となる。東京都の被害想定マップを見ると、都心部を取り巻くドーナツ状の地域(世田谷区、荒川区、江戸川区など)には、狭い路地に木造住宅が密集する「木密地域」が広がり、火災の同時多発と大規模延焼のリスクが極めて高い。これは関東大震災時にも経験された日本の都市特有のリスクである。
地震発生後、都心のオフィスから自宅(特に神奈川、千葉、埼玉方面)へ一斉に帰宅しようとすると、徒歩経路がこれらの火災危険地域や、建物倒壊により寸断された道路と重なる可能性が高い。これにより二次災害に巻き込まれるリスクが著しく増加するため、東京都や政府はオフィスや堅牢なマンション内にとどまる「在宅避難・留まり」を強く推奨している。
マンションに留まる場合でも、給水停止や電力網の遮断により、エレベーターや上下水道が1ヶ月近く機能停止する可能性もあるため、最低でも1週間〜10日分の食料、飲料水、簡易トイレなどの備蓄が不可欠だ。

Q. 不動産価格に災害リスクはどの程度反映されているか?正しい住まい選びの指標は何か?
現状、不動産価格に災害リスクが適正に反映されているとは言い難い。特定の地域内では水害リスクが高い土地がわずかに安価になる傾向もあるが、全体としては「駅近」「利便性」「ブランド価値」といった要因が優先され、高リスク地域でも高値が維持されている。しかし、東日本大震災時の浦安のように液状化で地価が一時的に下落した事例もある。災害で人命に関わる大きな被害が出れば、今後の価格変動トレンドが変わる可能性もあるだろう。
住まい選びにおいて、地名に「沼」や「橋」といった水辺を連想させる漢字が含まれていても、必ずしも危険な地盤とは限らない。過去の地名の合成や近代的な再開発により、実際の地形と地名が乖離しているケースも多いからだ。地名にとらわれず、国土地理院の地図などで実際の地形を確認する姿勢が重要である。
最終的に、自身と家族の防災対策のために確認すべき指標は以下の3点である。
地盤の揺れやすさ
液状化危険度
ゲリラ豪雨や河川氾濫による水害リスク
さらに、局所的な「内水氾濫」は雨が降らないと判断できない。物件内覧の際にはあえて雨の日を選び、排水状況や水の流れ込む場所を直接自分の目で確認すること。これが最も現実的な災害リスク対策と言えるだろう。