
「スタバ疲れ」で激変する東京カフェ戦国時代の勝ち筋
カフェ新時代:東京を席巻する新潮流と「スタバ疲れ」の先に
東京都心のカフェは近年、ただの憩いの場ではなく、ビジネスパーソンから観光客までが殺到する「戦場」と化している。誰もが求める休息のひと時でさえ、席の確保に奔走し、時間制限に追われる「スタバ疲れ」という新たなストレスが生まれている現状がある。 このような状況の中、カフェの役割は多様化し、高品質な体験を短時間で享受できる「タイパ型」と呼ばれる新しい潮流が市場を席巻し始めている。本稿では、激変するカフェ業界の最前線と、消費者のニーズを捉えた新たなビジネスモデルに迫る。

Q. 東京のカフェマーケットは現在どのような状況にあるのか?
カフェ業界は全国的には店舗数が減少傾向にあるが、東京都心部では「カフェ難民」と称されるほど席不足が深刻化している。全国のカフェ店舗数は2029年に向けて7%減少すると予測されているが、これは主にノウハウを持たずに開業した個人経営の小規模店舗が、食材や人件費、光熱費の高騰に耐えきれず閉店していることが背景にあると考えられる。 一方で、東京都心部では大手チェーンやSNSで話題のカフェが常に満席状態であり、需要と供給のミスマッチが生じている。大手チェーンでは、スターバックスが国内に2116店舗を構え、2位のコメダ珈琲店(1079店舗)やドトールコーヒー(1074店舗)を大きく引き離して圧倒的な存在感を示している。スターバックスは年間125店舗増加しており、これは「3日に1店舗」という驚異的なペースであり、もはや都市インフラの一部となっている。

Q. なぜ「スタバ疲れ」という現象が起きているのか?
多くの人々がカフェを訪れる理由は、リフレッシュや時間調整、時には仕事をするためなど多岐にわたるが、現在の都心のカフェではそうした期待が裏切られるケースが多いようだ。ゲストの大関氏も言及するように、「スターバックスに入って居心地が悪い」と感じる人が増えているのは事実である。 具体的な要因としては、まず都心部の店舗の圧倒的な混雑が挙げられる。注文前に空席を探す苦労は日常茶飯事であり、やっと見つけたと思えば、90分制といった時間制限が課せられることもある。特に猛暑の中や移動の合間など、体力を消耗している時に席探しや時間制限のプレッシャーを感じることは、癒やしを求める消費者に大きなストレスを与えている。また、充電目的の利用も増えている中、コンセント付きの席は常に争奪戦となり、これも不満の一因となっている。さらにインバウンド観光客の増加も混雑に拍車をかけており、利用者の体験価値が低下していることが「スタバ疲れ」の主な理由である。
Q. カフェ業界の再編はなぜ進み、大手チェーンはどのように対応しているのか?
カフェは他の飲食店と比べて比較的参入しやすい業態であると思われがちだが、原材料費、人件費、光熱費の高騰により、その経営難易度は飛躍的に上昇している。この厳しい環境下で、飲食業界全体でM&A(合併・買収)などの業界再編が活発化している。例えば、プロントのように昼はカフェ、夜は居酒屋という形で「二毛作」運営する店舗もあるが、コロナ禍を経て、一つの会社が一つの業態に依存するリスクが強く認識されるようになった。 多くの企業が、異なる業態を傘下に収めることで、経営ポートフォリオの安定化を図っている。これは、飲食業界の「二極化」とも関連する。低価格でカジュアルな大衆向け店舗と、高品質・高付加価値な体験を提供する店舗へと分化が進み、中途半端なポジショニングの店舗が減少しているのが現状である。大手カフェチェーンもこうした潮流に乗り、多様なブランド展開や業態変更で生き残りを図っている。
Q. 東京のカフェを分類する3つのタイプとは何か?そして「タイパ型」の魅力はどこにあるのか?
現在の東京のカフェは、大きく以下の3つのタイプに分類でき、それぞれ異なるニーズに対応している。
コスパ型: 早く、安くコーヒーを提供するタイプである。ドトールなどが代表例で、一杯200円〜300円台で迅速な提供が可能である。長居には向かないが、時間調整や手軽に休憩を取りたいビジネスパーソンには重宝されている。
滞在型: ゆったりと過ごせる空間を提供するタイプである。コメダ珈琲店などがこれに該当し、フルサービスで快適なボックス席などを備え、長時間の利用を促す。郊外型店舗も多く、家族連れなどでの利用が多く見られる。
タイパ型: 迅速なサービスと高品質な商品を両立させる新興勢力である。コーヒー豆や抽出方法にこだわった質の高いコーヒーを提供するが、セルフサービスでサクッとカジュアルに楽しめるのが特徴である。高価な商品を短時間で気軽に楽しみたいという現代の「タイムパフォーマンス」を重視する消費者のニーズを捉えている。
スターバックスはかつて滞在型とコスパ型の中間に位置し店舗数を拡大してきたが、現在では混雑により「スタバ疲れ」を感じる層も生んでいる。「タイパ型」のカフェは、ブルーボトルコーヒーや猿田彦珈琲などが開拓してきた市場の中で、忙しい現代人の限られた時間において高い満足度(時間の質)を提供するという新たな価値を生み出している。

Q. 丸亀製麺を展開するトリドールのカフェ戦略の全貌はどのようなものか?
うどんチェーン「丸亀製麺」を展開するトリドールは、多角的なブランド戦略でカフェ市場の攻略に乗り出している。その中核をなすのは、以下の3つのハワイアンテーマのブランドである。
コナズ珈琲(滞在型): 郊外のロードサイドを中心に展開するハワイアンカフェ。内装でハワイの非日常空間を徹底的に演出し、「時間制限なし」というポリシーで顧客の支持を得ている。客単価は高く、家族連れのご褒美利用などに適しているが、大型店舗であるため出店に2年ほどの時間を要することがネックであった。
KNOWS COFFEE(タイパ型): コナズ珈琲の別ブランドとして今年1号店がオープンした新業態。イオンモールや駅チカなどに出店し、セルフサービスで高品質なコーヒー(一杯850円など)をサクッと提供する。スタバ疲れした客層や、高いお金を払ってでも良質なコーヒーを短時間で楽しみたい消費者をターゲットにしている。
goodNess(全方位型): さらに都心部の一等地への出店を目指すブランドで、朝昼晩と時間帯を問わず利用できるレストラン・ダイニング的な要素を持つカフェである。幅広い時間帯の客層に対応できる店作りで、市場シェアの獲得を狙っている。
トリドールはこれらのブランドを、郊外、駅ビル、都心と異なる立地やターゲット層に最適化し、出店スピードの課題をクリアしながらカフェ市場の全方位獲得を目指している。円安などでハワイ旅行が難しい現状も、これらのハワイアンカフェの人気を後押ししている。
Q. 今後、コーヒー一杯が1,000円を超える時代は訪れるのか?そして生き残るカフェの条件とは?
カフェのニーズは今後も減少することはなく、むしろ増加傾向が続くと見られている。その背景には、記録的な猛暑により涼しい場所を求める人が増えることや、スマートフォンでSNSや動画を見ながら長時間座って過ごしたいというニーズがある。これらは「モノ消費」から「時(時間)消費」への変化とも言え、空間で過ごす時間に対してお金を払うことに抵抗がなくなってきている。 このような状況で生き残るカフェには「明確なポジショニング」が不可欠となる。コスパに徹底的に振り切るのか、コナズ珈琲のようにゆったり過ごせる時間を提供するのか、KNOWS COFFEEのようにタイパ型を目指すのか、あるいは特定の目的を持たせるのか、それぞれの軸を明確にすることが重要である。「居心地も微妙で、価格も安くない」といった中途半端なカフェは厳しくなっていくだろう。 コーヒー豆の価格高騰もある中、一杯1,000円を超えるコーヒーであっても、その場所と価格に納得できる店作りがされていれば、日常の中で十分に成立し得ると予測されている。
