PIVOT TALK SPECIAL
【Japan Drone 2026現地取材】ドローン国産化、勝算は?
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2026年6月24日

流通するドローンの9割以上が中国製で、国産はわずか3%の日本市場。政府が掲げる「国産比率6割」は実現可能なのか?PIVOT取材班は展示会を徹底取材。ACSLやテララボらトップランナーが集結し、国防や物流の最前線から、コストや供給網の課題まで「儲かるドローンビジネス」のリアルな未来を解き明かす。 ...
国産ドローンは日本を救うか?「Japan Drone 2026」から読み解く最前線
急速な進化を遂げるドローンは、もはや空撮にとどまらない。その活用領域は災害対応から防衛、物流、農業、インフラ点検といった社会インフラ全般に拡大し、まさに現代社会に不可欠なツールへと変貌を遂げている。しかし、日本のドローン市場の実情を見ると、国産ドローンの比率はわずか3%に過ぎず、約9割を海外、特に中国製が占める現状にある。これに対し、政府は国産化率を6割にまで引き上げるという野心的な目標を掲げているが、その道のりは決して平坦ではない。
本稿では、「Japan Drone 2026」での取材をもとに、日本のドローンビジネスが直面する現実と未来を多角的に掘り下げる。災害・安全保障の「官需」、そして物流・インフラ点検といった「民需」、それぞれの領域で奮闘する企業の取り組みを詳らかにし、国産化をめぐる議論の深層に迫る。果たして日本はドローン大国としてその地位を確立できるのか、その課題と可能性を探求する。

Q. なぜ今、国産ドローンの開発が注目されているのか?
現在、国産ドローンが注目される背景には、大きく分けて「安全保障」と「経済」の二つの側面がある。データ漏洩リスクや有事におけるサプライチェーンの寸断への懸念から、重要インフラや防衛分野での海外製ドローンへの依存は日本の安全保障上の喫緊の課題と捉えられている。政府が掲げる国産化率6割目標は、この脆弱性を解消するための強い意思の表れだ。
一方で、ドローンは新たな成長産業として経済活性化の牽引役となる期待も大きい。物流、農業、測量、点検など、多様な分野でのニーズが拡大しており、これらの領域で国産技術を育成することは、日本の技術力向上と国際競争力強化に直結すると見られている。このように、国産ドローンの開発は単なる技術的課題に留まらず、国家戦略として多方面から推進されていると言えよう。
Q. テララボのドローン開発は、他社とどのような点が異なるのか?
テララボは災害対応に特化した固定翼ドローンを開発している点が最大の特徴だ。他社のドローンが速度や飛行距離を追求する中、テララボはあえて「ゆっくりと安定して飛ばせる」ことに重点を置く。具体的には時速60km程度の低速飛行を可能にし、これにより災害現場での広域な情報を高精細かつ正確に収集できる。高速飛行は得られる情報が荒くなるという問題点を解消するため、現場のニーズから逆算し、最適な機体をゼロから設計するアプローチをとった。
実用機である「テラドルフィーVTOL」は翼長4.3m、ガソリンエンジン搭載で、10時間で1000kmの長距離飛行を目指している。垂直離着陸(VTOL)機能を持ち、滑走路がない場所でも運用が可能だ。さらに、機体を約10個の部品に分解し、車両で運搬、現地で2名で組み立てられるという高い運用性を誇る。これは災害発生直後の迅速な展開を想定した設計であり、テララボが現場での実用性を徹底的に追求した結果だ。

また、同社はさらなる高高度を飛行するコンセプトモデルの開発も進める。高度を上げれば一度にスキャンできる範囲が広がるが、これに伴い高精度のセンサーが必須となる。単なるハイスペック機体ではなく、「欲しい時に撮れて、使いたい時に使える」という運用のリアルタイム性を重視し、顧客の多様なニーズに応えるための異なるスペックの機体ラインナップを持つことが重要と考えている。
Q. 国産化推進において、テララボはどのような視点を持っているのか?
テララボは国産化を急ぐことは重要だと認識する一方で、単に国産品を目指すこと自体をゴールとは考えていない。真の安全保障を考慮すれば、100%の国産化に固執するよりも、同盟国や同志国との間でサプライチェーンを多角化(冗長化)し、有事の際にいずれかのルートが途絶えても運用可能な体制を築くことがより重要だという見解だ。全ての部品を国内生産する難しさ、また特定の原材料がストップすれば国産化も意味をなさない現実があるからだ。
防衛分野においては、国内政府との協議は継続中だが、民生機をデュアルユース(防衛転用)する際の要求仕様がまだマッチしないという課題がある。そのため、テララボは先に国外で自社ドローンの運用実績を積み、そのノウハウを日本国内向け機体の再開発に「逆輸入」するという戦略を取る。これは国際的な実用経験を通じて、日本の安全保障ニーズに合致するより高性能で実戦的な機体を開発しようとするアプローチだと言える。

Q. 国産ドローンのパイオニアであるACSLは、防衛分野でどのような役割を担っているのか?
ACSLは国産ドローンメーカーとして唯一の上場企業であり、ドローンの自律制御を司る「フライトコントローラー技術」を強みとしている。同社の事業は大きく「防衛」、「国内公共インフラ点検」、「北米での公共インフラ点検・パブリックセーフティ」の三本柱で構成され、官民双方の需要に対応している。特に国内防衛分野ではその重要性が増す中、本年度には防衛省から合計14億円規模の受注を獲得し、国産化の追い風を受けて事業を拡大させている。
今後、ACSLは偵察を目的とした小型空撮ドローンだけでなく、より広範囲をカバーする固定翼機や有事に対応するドローンなど、防衛ミッションの多様化に応じた製品ラインナップの拡充も視野に入れる。しかし、国産化への道のりは課題も多い。これまでの市場が海外製を中心に発展してきたため、国内には十分なサプライチェーンや量産設備が不足している現実がある。
ACSLは「需要があってサプライチェーンができ、サプライチェーンができて需要ができる」という“鶏と卵”のような循環が課題であると指摘する。また、部品レベルまで含めた完全な国産化はコスト面で非現実的であるとも語る。どこまでコストを許容し、それを実現するためのサプライチェーンや生産設備をいかに構築するかが、国産化率6割達成への最大のボトルネックとなっていると言えるだろう。

Q. 異業種からの参入が、ドローン業界にどのような革新をもたらしているのか?
自動車の試作メーカーであるトピアは、レーシングカー開発で培ったカーボンの軽量・高剛性化技術を武器に、ドローン市場へと参入した。カーボンは材料コストが下がる一方、製造コストは依然高いため、同社は自身のノウハウを活用し、コストダウンを図っている。ドローン市場や「空飛ぶクルマ」へのニーズ拡大を見越し、異業種が持つ高い技術力と生産性が、ドローン開発のボトルネック解消に貢献している良い事例だ。
トピアとエアロネクストが共同開発した物流ドローンは、その代表例と言える。従来の物流ドローンが荷物を吊り下げる形式であったのに対し、このドローンは機体内部に荷物を格納する革新的な設計を採用。荷物を上から簡単に搭載でき、到着地で人の手を介さずに自動で荷物を切り離す機能を持つ。これは「汎用機ではなく、用途に特化した最適形状」という思想に基づいている。

機体は空気力学に基づき最適化された丸い卵のような流線型をしており、前進方向へ効率的に飛行できるよう設計されている。さらに、補助翼を搭載することで揚力を発生させ、モーターの消費電力を抑えることを可能にした。機体が傾いても翼の角度を常に一定に保つ制御技術により、安定した揚力を維持し、従来のマルチコプターよりも長距離・安定した飛行を実現する。このように、異業種からの知見と協業は、ドローンに特定の用途に応じた専門性と効率性をもたらし、技術革新を加速させている。

Q. ドローンビジネスの社会実装における最大の課題は何ですか?
ブルーイノベーションは、ドローンのハードウェアを製造するのではなく、ソフトウェアとサービスを提供するシステムインテグレーター(SIer)として、ドローンメーカーとエンドユーザーの間に立ち、最適なソリューションを提供している。インフラ点検や防災といった官民両方の顧客に対し、ハードに依存しない柔軟なアプローチで事業を展開する。彼らが指摘するドローンビジネスの社会実装における最大の課題は、まさしく「制度設計」である。
これまでのドローンは「飛ぶこと自体がすごい」という実証段階であったが、今は費用対効果が問われるフェーズに入った。特に公共事業などでドローンの活用を促進するためには、コストや効果を適正に評価するための「積算基準」のような統一単価が必須である。この基準が整備され、ドローン導入による投資対効果が明確に示されれば、市場は一気に拡大するだろう。

また、同社は海外展開の重要性も強調する。例えば、アジアでは農薬散布ドローンの需要が大きく、こうした市場へ効率的に参入するには、台湾企業のような現地のハードウェアメーカーとのアライアンスが有効な戦略だ。一社で全ての工程を垂直統合するのではなく、自社の強み(ソフトウェア・サービス)を活かし、地域のニーズに精通したローカル企業と連携する水平分業モデルが、グローバル展開を加速させると見ている。