
AIバブル崩壊はまだ。大相場は2027年夏まで続く
AIバブルはいつまで続く? 市場の陶酔と賢明な投資戦略
現在の株式市場は、日経平均が7万円を超えるなど記録的な高値圏で推移し、多くの投資家を驚かせている。特に今年上半期だけで株価が40%近くも上昇した事実は、過去のどの相場とも異なる急ピッチな動きとして注目を集める。この加速する株高はいつまで続くのか、そして市場はすでに危険なバブルの状態にあるのかという疑問が投資家の間で広がっている。
本記事では、アネックス証券チーフストラテジストの広木隆氏の分析に基づき、現在の市場を深く掘り下げる。AI革命が牽引する現代の株高の真の背景から、歴史が示唆するバブルの終焉時期、そしてこの特異な市場環境下で投資家が取るべき具体的な戦略について詳述する。

Q. 現在の株価の急騰をどう解釈すればよいだろうか?
株価の急騰を目の当たりにすると、多くの人がそのスピードに驚きを隠せないだろう。しかし、広木氏は、株価水準が上がると同じ「値幅」での上昇でも「上昇率」が小さくなるため、値幅を意識しすぎると急騰しているように見えやすいと指摘する。例えば、5万円から6万円への1万円の上昇は20%だが、6万円から7万円への1万円の上昇は約16.7%となり、数値的な達成ハードルは相対的に低下するのだ。
この「数字のマジック」を考慮しても、今年に入ってからの日本株が半年間で2万円、率にして40%も上昇したのは尋常ではない。過去の相場と比較しても記録的なペースであることは間違いない。この事実こそが、現在の市場を牽引する強大な推進力があることを示唆していると言える。
Q. なぜ今、株価は急上昇を続けているのだろうか?
現在の株高を語る上で避けて通れないのは、「AI革命」という巨大な時代の潮流だ。AIがもたらす産業構造の変化への期待が、関連銘柄、特に半導体株に莫大な資金を集中させている。これは単なる一時的なブームではなく、今後の経済や社会の根幹を変える可能性を秘めた、紛れもない「本物の革命」であると広木氏は語る。
日本のデフレ脱却や企業統治改革、あるいは強気な経済成長を目指す政権の誕生といったマクロな追い風も確かに存在し、日本株を根底で支えている。しかし、足元のこの圧倒的な上昇スピードを生み出している主役は、米国市場と同様に、AI関連銘柄や半導体株への一極集中にある。金融引き締め観測が強まっても半導体株だけが上昇する米国の状況が、このテーマの強烈さを物語っていると言えるだろう。

Q. 現在の相場はバブル局面にあるのか?
客観的な数値から見れば、現在の市場はすでにバブルの様相を呈していると見てよい。ノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラー教授が提唱するCAPEレシオ(景気循環調整済みPER)が、米国株市場で史上最大のバブルであったITバブル期の水準に迫る40倍超に達している。過去10年間の利益をならして算出するこの指標は、株価の過熱度を示す重要なバロメーターとなる。
投資家心理の面から見ても、市場は最終局面に近づいている可能性が高い。「強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観とともに成長し、美しい陶酔の中で消えていく」というジョン・テンプルトンの格言がある。今はまさに「陶酔」の状態、すなわち「ユーフォリア」と形容されるような熱狂的な段階に達している。歴史的な視点に立つと、これは相場がピークアウトする前の最終段階を示す典型的な兆候と捉えることができるだろう。
Q. バブルの終焉はいつ、どのような形で訪れると予想されるか?
バブルの崩壊を招く最大のトリガーは、常に中央銀行による金融引き締め、特に金利の引き上げだ。しかし、広木氏は、利上げが始まったからといって市場がすぐに崩壊するわけではないと強調する。
過去のITバブルを振り返ると、FRBは1999年6月に最初の利上げを実施したが、株価はその後も約9ヶ月間、複数回の利上げに耐えながら上昇を続けた。ナスダック指数がピークアウトしたのは、合計5回の利上げを経てからの2000年3月のことだった。つまり、相場は金融政策の引き締めが始まっても、最後の「花火」を打ち上げる期間が存在するのだ。
この歴史的なパターンを踏まえると、もしFRBが2024年後半、例えば9月に利上げを開始したと仮定すると、株価のピークは翌年、具体的には2025年の夏頃(6月~9月)になる可能性が高い。CAPEレシオが危険水域に突入した後もITバブル期には1年間バリュエーションが切り上がり続けた事実も、この見方を裏付けるだろう。結論として、今のバブル相場は、懸念が指摘され始めてからもしばらくの間、約1年程度は続く公算が大きいと言える。
Q. このバブル相場において投資家はどのように行動すべきだろうか?
このような強烈なバブル相場においては、「音楽が鳴り止むまで踊り続ける」という格言に従うのが賢明だ。宴の終わりを過度に恐れて途中で市場から退場すると、最後の最も大きな上昇局面で利益を得る機会を失う。現在の相場がAI革命という「本物の革命」に裏打ちされている以上、バブルと認識しつつも、この大きな潮流に乗っていく選択肢しか存在しないだろう。
ただし、賢明な出口戦略の構築は必須だ。市場のピークを正確に捉え、最高のタイミングで売り抜けるのはプロでも至難の業である。過去の教訓から、FRBが3〜4回目の利上げを行うような時期から、市場の過熱感を警戒し、段階的に利益確定を進めるアプローチが推奨される。一度にすべてを売るのではなく、分散してリスクを管理する考え方が重要となる。
広木氏の見解によれば、相場がまだ1年近く続く可能性を考慮すると、今から余剰資金を市場に投じることは理にかなっている。短期的なボラティリティは高まるが、大局的な視点ではまだ上昇の余地があるからだ。投資家は過去の事例から学び、冷静に、かつ戦略的に市場の変動と向き合う必要がある。

Q. 米国株ではなく、日本の半導体関連株が特に有望視されるのはなぜだろうか?
AI関連銘柄への投資を考える上で、現状の米国AI株よりも日本の半導体関連株に目を向けるべきだ。米国の一部の銘柄はバリュエーションが過熱気味であるのに対し、日本の企業はAI需要に不可欠な半導体製造装置、材料、部品、あるいは高機能メモリといった「実需」で着実に利益を上げているため、より堅実な投資対象となると広木氏は強調する。
具体例として、AIデータセンターで必要とされる高性能メモリを製造するキオクシアや、光ケーブルで特需を捉えるフジクラなどが挙げられる。これらの企業は、AI革命の「主役」ではないかもしれないが、その恩恵を「リアルな商売」で享受している。結果として、株価に実態が伴っており、バリュエーションの過熱感が相対的に低いことから、仮に市場がクラッシュしても受けるダメージが米国株よりも限定的になる可能性が高いと言える。
また、現在の地政学リスク、特に米中対立や台湾有事のリスクは、世界的な半導体サプライチェーンの再編を加速させている。これにより、半導体工場や研究開発拠点が地政学的に安定した日本へと集中する流れが顕著だ。熊本のTSMC工場や北海道のラピダス工場を核として、「シリコンアイランド」や「日の丸半導体」の復活に向けた国を挙げた取り組みが進行中である。この流れは一時的なものではなく、日本半導体関連企業にとって長期的な成長の強力な追い風となる。
日本への投資は、実体経済の成長と利益に裏打ちされた「王道の投資」である。このため、仮に米国AI株主導のバブルが破裂し、市場全体に調整が訪れても、日本株はより強固な基盤を持っているため、深刻な打撃を受ける可能性は低いと予想される。現在の「陶酔の相場」を乗りこなし、次なる成長を狙う上で、日本の半導体関連銘柄は注目の存在となるだろう。