
宇宙関連予算、初の1兆円超え。注目企業に突撃【SPEXA】
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2026年6月19日
日本の宇宙関係予算は初めて1兆円を超え1兆446億円に達した。予算規模は、宇宙戦略基金の創設や防衛関連需要の拡大を背景に急増している。PIVOT取材班は日本最大級の宇宙ビジネス展示会「SPEXA」に潜入、注目企業を取材してきた。 <取材> 小手森千紗|PIVOT MC <目次> ダイ...
急成長を続ける日本の宇宙ビジネス:月面都市から小型衛星、そしてロケット開発の最前線
日本の宇宙ビジネスは今、歴史的な転換期を迎えている。国家予算が急増し、大手建設会社から先端ベンチャー企業まで、様々なプレーヤーが宇宙を新たな事業領域と捉え、果敢に挑戦している状況だ。
この市場の拡大は、月面開発、高性能衛星の活用、ロケット技術の革新といった多岐にわたる分野で進行しており、日本の産業構造に大きな変化をもたらしつつあると言えるだろう。
本稿では、宇宙ビジネス展「スペクサ」で明らかになった最新のトレンドと、日本企業が描く壮大な未来像を、Q&A形式で深掘りする。

Q. 日本の宇宙ビジネスは現在どのような状況にあり、なぜこれほどまでに注目が集まっているのか?
日本の宇宙関係予算は、まさに「急成長」という言葉がふさわしい状況だ。直近の額は1兆446億円に達し、過去10年間で約3倍、この5年間だけでも倍増するなど、劇的な伸びを示している。
この予算の急増は、宇宙が国家戦略における重要な領域として位置付けられている証拠であり、ビジネス機会が飛躍的に拡大している背景には、政府の手厚い支援がある。
また、宇宙ビジネス展「スペクサ」のようなイベントが熱気を帯びていることから見ても、官民双方で宇宙に対する期待値が非常に高いことがわかるだろう。
伝統的な宇宙関連企業に加え、建設、情報通信、製造など、多岐にわたる異業種からの新規参入が活発化しており、これまでの宇宙開発とは異なるアプローチや技術革新が生まれる土壌が育ちつつあるのだ。
Q. 建設大手・竹中工務店は、月にどのような「暮らし」を創ろうとしているのか?
異業種からの参入の最たる例が、大手建設会社である竹中工務店による月面都市構想だ。
彼らは、宇宙を「地球から月に敷地が増えただけ」と極めて建設業的な視点で捉え、事業拡大の一環として月面での居住空間開発に着手している。
彼らが目指すのは、特殊な訓練を受けた宇宙飛行士だけが短期滞在できるような基地ではない。一般の人々が健康を損なわずに長時間滞在できる「暮らし」を月に創造することである。
この構想は夢物語ではなく、2040年代には40人が月面に常時滞在するという具体的な目標を掲げている。
米国のアルテミス計画や日本政府のロードマップと連動し、2020年代には計画実証、30年代には実験、そして40年代には本格的な建設に着手するという、着実なタイムラインを設定している点が注目に値するだろう。
単なるインフラ整備に留まらず、民間企業の研究者や、一部の富裕層向けのホテル利用といった多様な用途を見据えた空間デザインが構想されており、月面での経済活動の活発化にも貢献することになる。

Q. 悪天候も夜間も関係なし、「小型SAR衛星」が世界で日本を際立たせる理由とは何か?
宇宙ビジネスにおける技術革新の中心の一つが、小型SAR(合成開口レーダー)衛星である。
光学衛星が「デジカメのように写真を撮る」のに対し、SAR衛星は電波を地表に照射し、その跳ね返りを分析することで画像を生成する。
この技術は、昼夜を問わず、また雲などの悪天候下でも地表を観測できるという圧倒的な強みを持つ。
主な用途は、安全保障(防衛分野における夜間の監視)、災害対応(台風時の浸水状況把握など)、インフラ管理(ミリ単位での地盤変動検知)など、緊急性や確実性が求められる分野で特に価値を発揮するだろう。
驚くべきことに、小型SAR衛星を開発・製造する民間企業は世界でわずか5社であり、そのうち2社が日本企業である。
この日本の優位性の背景には、JAXAが培ってきた大型SAR衛星技術の蓄積と、それを小型化する高い技術力がある。
さらに、内閣府のインパクトプログラムなど、国による手厚い開発支援が、日本のベンチャー企業の技術革新を強力に後押ししてきた経緯が存在する。
例えばシンスペクティブ社は、衛星のハードウェア開発からソリューション提供までを自社内で一貫して行うことで、顧客のフィードバックを直接開発に反映し、ニーズに迅速に対応する強みを持つ。
すでに9機の衛星を打ち上げ、2028年末までには30機体制を目指している。QPS研究所も、高画質を強みとしてSAR衛星市場で存在感を示している。

Q. 放送事業だけではない、スカパーJSATが宇宙産業を牽引する「ハブ企業」となる戦略とは?
スカパーJSATは一般に放送サービスのイメージが強いが、実はアジア最大級の17機の静止衛星を保有し、その運用を通じて宇宙通信事業を長年展開してきた老舗企業である。
彼らは単に衛星を作るだけでなく、仕様決定から衛星メーカーへの発注、打ち上げ後の運用までを一手に担い、通信や地球観測サービスを提供するオペレーターの役割を果たす。
近年は、静止衛星に加えて低軌道での地球観測データビジネスを強化する戦略をとっており、来年から小型の光学衛星「ペリカン」を10機打ち上げ、コンステレーション(衛星群)を構築する計画だ。
これにより、従来の静止衛星の通信網に加えて、広範囲をより頻繁に観測できる能力を手に入れることを目指している。
スカパーJSATのもう一つの大きな特徴は、光学、SAR、熱赤外線といった多様な種類の衛星データを組み合わせ、顧客の課題に応じた最適なソリューションを提供できる点にある。

これにより、例えば災害時には土砂崩れの状況をカラーで詳細に把握したり、浸水範囲を悪天候でも検知したりするなど、複数の視点から総合的な情報を提供可能にしている。
さらに、同社は宇宙業界全体の成長を促す「ハブ企業」としての役割も果たしている。
2030年までに100億円のスタートアップ投資枠を設定し、QPS研究所やJAXA発ベンチャー「テラグルー」といった先端企業へ積極的に出資・協業を行うことで、自社の豊富な運用ノウハウや知見を共有している。
この戦略は、資金提供だけでなく事業面でもスタートアップの成長を後押しし、日本の宇宙エコシステム全体を牽引することにつながるだろう。
Q. 世界的な小型衛星コンステレーションのトレンドに対し、日本の基幹ロケット「H3」は何を計画しているのか?
三菱重工業が開発するH3ロケットは、日本にとって非常に重要な「基幹ロケット」だ。
これは、日本の衛星を自国の力で宇宙に打ち上げる、いわば「宇宙へのアクセス主権」を担保する存在であり、国家の安全保障と宇宙戦略の根幹を支えるインフラである。
しかし、イーロン・マスク率いるSpaceXなどの新興勢力が低コストのロケットを次々と開発し、世界的な競争が激化している。
これに対し三菱重工は、単なるコスト競争に終始するのではなく、日本の強みである「品質の高さ」と、顧客のニーズに細かく寄り添う「日本らしいおもてなし」で差別化を図る戦略をとっている。

高信頼性のロケットで、日本および世界の顧客の衛星を確実に打ち上げることを目指すものである。
近年、世界の宇宙利用の主流は、高性能な大型衛星を少数打ち上げることから、多数の小型衛星を連携させて運用する「コンステレーション」へと大きく変化している。
このトレンドはH3ロケットの開発初期段階では想定されていなかった大きな動きだったが、三菱重工はこの変化に対応するため、「ライドシェア」技術の開発に注力している。
「ライドシェア」とは、H3ロケットのフェアリング内に多数の小型衛星を搭載し、一度の打ち上げで複数の顧客の衛星を軌道へ投入する技術だ。
これにより、高頻度で小型衛星を打ち上げたいという増加する需要に応え、H3ロケットの市場競争力を高めると同時に、新たなビジネスモデルを構築していくこととなるだろう。