PIVOT TALK SPORTS
ホワイトソックスの逆襲
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2026年6月12日

3年連続100敗喫したホワイトソックスは、今季は日本人選手の活躍もあり健闘を見せている。しかし、村上選手は負傷離脱、西田選手はマイナー降格となった。今回は西田選手の特徴課題、今後の可能性を分析する。 <ゲスト> 真中満|元ヤクルトスワローズ監督 1992年 ドラフト3位でヤクルト入り。2007年 ...
データが明かす西田陸浮の打撃術:元ヤクルト監督たちが語るホワイトソックス躍進の秘訣と最先端野球論
元ヤクルト監督の真中満氏と高津臣吾氏が、「PIVOT BASEBALL」でMLBの最前線を語る回に臨んだ。選手時代は先輩後輩、監督・コーチ時代は上司と部下、そして今は「友達」という二人の深いつながりがある。さらに、世界のレジェンド松井秀喜氏もこの番組を視聴している事実が明らかになるなど、注目度は増している。
今回のテーマは、過去3年間100敗以上を喫しながら、今季劇的な躍進を遂げたシカゴ・ホワイトソックスだ。彼らのチーム文化、好調の秘密、そしてその躍進を支える異色の日本人プレーヤー、西田陸浮選手に迫る。最先端の練習法から、データが解き明かす驚異のミート術まで、現代野球の深層に切り込む記事を披露する。


Q. 新旧ヤクルト監督を繋ぐ絆、「PIVOT BASEBALL」が松井秀喜も唸らせる理由とは?
真中満は監督時代、投手コーチを務めた高津臣吾を「困ったら相談できる頼れる存在」と高く評価した。豊富な経験に裏打ちされたアドバイスが、チーム運営を円滑に進める上で不可欠だったと語っている。一方の高津も、監督時代の真中を「自分のことより選手ファーストで、環境を整えるのが非常にうまかった」と振り返った。締め付けではなく、選手が伸び伸びとプレーできる雰囲気を作る手腕に敬意を表す発言だ。互いを尊重し合う二人の関係性がうかがえる。

現役時代は高津が真中の2歳上の先輩だった。監督とコーチ時代は上司と部下という関係性に変わったが、今は「友達」と笑い合う。このユニークで風通しの良い関係性は、ヤクルトという球団が持つ、のびやかなチーム文化を象徴しているとも言えるだろう。
さらに驚くべきことに、MLB記者の山田結軌は、松井秀喜が自身が主催する野球教室で「PIVOTを見ていた」と声をかけられたエピソードを紹介した。海を越えて活躍したレジェンドまでもが注目するこの番組の持つ影響力は計り知れない。スポーツの深い議論や分析が、いかに多くのファンや関係者を魅了しているかを証明する一例だ。
Q. なぜホワイトソックスはかつての低迷から大躍進を遂げたのか? その成功要因とチーム文化はどのようなものか?
過去3年間で連続して100敗以上を喫していたシカゴ・ホワイトソックスが、今季はア・リーグ中地区2位という劇的な躍進を遂げた。この変貌には専門家たちも驚きを隠せないが、山田結軌は若手を中心にチームを作り替える再建期間の成果が一気に現れたものだと分析する。長打力のある若手打者、エース級の先発投手、そして勝利の方程式を担う中継ぎ陣が揃い、「勝てるチーム」の要素が整ったことが躍進の最大の要因だと言う。

高津臣吾も現役時代を振り返り、ホワイトソックスのチームカラーを「非常にやりやすい」と語った。シカゴには同じくMLBチームのカブスが存在するが、カブスが人気が高く規律を重んじる「巨人」のような存在であるのに対し、ホワイトソックスは「みんなでワイワイガヤガヤやる」自由な雰囲気の「ヤクルト」のような球団だと例えられる。この風通しの良さが、若い選手の能力を最大限に引き出す土壌になっている可能性を示唆する。
しかし、この明るく「ノリが良い」雰囲気は、ただのお祭り騒ぎではない。山田は、各選手がやるべき準備をしっかりとこなした上で成り立つプロフェッショナルな空気感がチームを覆っていると指摘する。例えば、現在はチームを離れている村上選手が以前から例に出されており、彼の準備の重要性への意識がチーム全体に浸透していたのだろう。こうしたプロ意識の上に成り立つ自由なチームカルチャーこそが、ホワイトソックス躍進の秘訣であるようだ。
Q. MLBで実践される「チャレンジメニュー」とは具体的にどのような練習方法だ? また、その利点と潜在的な課題は?
ホワイトソックスの強さを支える最先端の練習法が「チャレンジメニュー」だ。これはマシン打撃練習の一種だが、実戦よりも難易度の高い設定になっている。より伸びるストレート、より大きく曲がるスライダーなど、投手の最高のパフォーマンスを上回るボールが投球される。また、柔らかい特殊なボールを使用することで、選手は打ち損じてバットの芯を外しても怪我の心配が少なく、躊躇なく強くスイングできる設計だ。
この練習の狙いは、メジャーリーグの超一流投手の球にも対応できるスイングと判断力を養うことにある。実際の試合ではありえないような高難度ボールを打ち続けることで、通常のスイング速度では空振りしてしまう球にも、対応できるよう鍛え上げる。マイナーの西田選手をはじめ、メジャーの主力選手も日陰のない猛暑の中、この「チャレンジメニュー」を何セットも繰り返し行っていると山田は報告した。全体で取り組むことで、チーム全体のレベルアップに繋げていると言える。
高負荷の練習が有効なのは間違いないが、真中はこの近代的な練習法に潜在的な課題があるとも指摘する。実戦以上の難易度のボールを打ち続けることで、選手のタイミングや打撃フォームを逆に崩してしまうリスクもあるのではないかと言うのだ。単に難しいボールを打つだけでなく、練習の意図や目的を正確に理解した上で、自身のバランスを崩さないよう取り組む選手自身の意識が求められるだろう。最新のテクノロジーとデータの導入が不可欠な現代野球において、練習内容の最適解を模索し続けることは永遠のテーマだ。
Q. 野球選手でありながら起業家という異色の経歴を持つ西田陸浮選手は、どのような人物なのか?
ホワイトソックスの若手有望株、西田陸浮選手は非常にユニークな経歴を持つ。大阪府出身で東北高校を卒業後、アメリカの大学へ進学するのだが、その理由は「野球のため」だけではなかった。彼が掲げたのは「社長になるための勉強がしたい」という目標だ。そして在学中に、自身の経験を活かした「野球留学サポート事業」で会社を起業したのだ。
高校時代は宮城大会決勝で敗退し甲子園出場はならなかったものの、副主将を務めるなど野球に対する情熱は高かった。しかし、より広い視点で自身のキャリアを見つめ、野球を通して得た知識や経験をビジネスに活かすという行動力は、長年野球界に身を置く真中や高津をも「僕らの感覚じゃ考えられない」「行動力がすごい」と驚かせた。

ドラフト会議では全体329位、11巡目という下位指名だったが、チームメイトの怪我をきっかけにメジャー昇格を果たす。そしてデビュー戦では、本塁での補殺を記録し、さらにメジャー初安打を放つなど、限られたチャンスを確実にものにする勝負強さを見せつけた。「持っている」としか言いようがないそのキャリアは、まだまだ続く可能性を大いに秘めている。
同じホワイトソックスには、日本の至宝・村上選手も所属しており、歳も近く、西田にとって心強い存在であることは間違いない。日本語で気軽に会話できる存在がいることは、異国での生活やプレーにおいて大きな精神的支えになるだろうと高津も自身のMLB挑戦時の経験を語る。高津は35歳というベテランの域でMLB挑戦を決断し、保証されていたヤクルトでの安泰な道を捨てて渡米した経験から、西田のような挑戦を肯定的に捉えていた。
Q. スイング速度は控えめだが、なぜ西田選手はメジャーリーグで通用する打球が打てるのか? その打撃理論をデータが示す?
西田陸浮選手がメジャーリーグで注目される理由は、その打撃スタイルにあるとデータ分析担当の森本が解説する。三Aでの打率は3割4分を超え、ホームランこそ少ないものの高い出塁率と長打率を誇る。いわゆる「アベレージヒッター」の要素を持つが、さらに特筆すべき点がある。
メジャー昇格後の打席はまだ少ないものの、西田の打撃データはすでに片鱗を見せている。彼の平均スイング速度はメジャーの主要打者と比較してかなり低い位置にある一方で、打球速度は比較的高速であることがデータから判明したのだ。つまり、パワーに頼らず、技術で効率的に打球を飛ばしていると言えるだろう。
この謎を解明する鍵が、「スクエアアップ率」という指標にある。これは、スイングのエネルギーをいかにロスなくボールに伝え、打球速度に変換できているかを示す数値だ。プロの世界では「ミートがうまい」と表現される感覚を数値化したものであり、西田選手のスクエアアップ率はメジャー平均を大きく上回り、突出して高い位置にあることが判明した。スイング速度が速くなくとも、ボールをバットの芯で捉え、効率よく打球を飛ばす能力が極めて高いことをデータは物語っている。
これは、速いスイングと高い打球速度を両立する村上選手や、長打力に定評のある岡本選手、大谷選手とは対照的なスタイルと言える。例えば、村上選手はスイング速度が極めて速いが、スクエアアップ率は西田よりも低い。それでもその圧倒的なスイングスピードでホームランを量産している。一方、西田は「当てるのが上手い」タイプのコンタクトヒッターとして、メジャーの舞台で独自の価値を発揮しているのだ。長身の選手が多いメジャーにおいて、身長170cmに満たない体格で結果を出している西田選手のプレーは、現代野球における打撃技術の多様性を示唆する。