PIVOT TALK BUSINESS
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2026年5月29日

800社のプレゼン資料5万ファイルを分析すると、仕事ができる人の資料は3色しか使っていない——。『世界の一流は「休日」に何をしているのか』著者の越川慎司氏が、今回は職場で”期待されている人”の特徴を語る。仕事ができる人の1週間の使い方、話の聞き方、AIの使い方などなど。全ビジネスパーソン必見、17万...
あなたは、今の働き方に満足しているだろうか。日々の努力が必ずしも報われていると感じない時、それは努力の量ではなく、その方向性が誤っているのかもしれない。
元マイクロソフト役員であり、クロスリバー代表の越川慎司氏は、815社17万人の行動データを9年間分析し、「会社から期待される人」、すなわちキャリアの選択肢を自ら増やせる人の共通の習慣を解き明かした。このデータドリブンな知見から導き出された、仕事術、資料作成術、AI活用術、そしてコミュニケーションの極意を探求する。

自身の過去の経験から「正しい努力」の重要性を痛感した氏が提唱する、期待される人が実践する具体的な行動様式についてQ&A形式で解説する。
「期待される人」とは、やみくもに努力量を増やすのではなく、「努力の仕方」を変え、結果として自身のキャリアの選択肢を広げることを可能とする人物である。出世は最終的なゴールではなく、あくまで働き方の選択肢を増やすための強力な手段と捉える。多様な選択肢を持つことで、主体的に仕事を選択できる状態が「働きがい」へと繋がるからである。

評価される側は営業成績や発表のうまさ、業務処理能力などのスキルが評価に繋がると考えがちだ。しかし、データを分析すると、評価する側が重視するのは「時間と約束を守る」や「大きな声で挨拶する」といった、小学校で習うような基本的なことであることが明らかになっている。
この評価される側と評価する側のギャップこそ、努力が報われないと感じる原因となる。期待される人はこのギャップを理解し、「期限」と「機嫌」という二つの戦略を意識的に採用する。「小さな約束」である期限を確実に守り、また日々の挨拶や振る舞いで「機嫌が良い」状態を見せることで、他者からの信頼を獲得し、大きな仕事を任される基盤を築いている。これが「この人と仕事がしたい」と思わせる「信頼ツムツムゲーム」の始まりだ。
生産性向上において、期待される人は自身の意思力に頼らず、仕組み化を徹底している。まず、「ビッグロック戦略」として、毎週の最も重要なタスクをたった2つだけ決める。これらは月曜の朝に設定し、最優先で片付ける。この「大きな岩」を先に配置することで、時間管理に余裕が生まれ、他の細かいタスクも効率的に消化できるのだ。

PCのデスクトップに関しても同様である。期待される人は、集中力を削ぐ視覚的なノイズを徹底的に排除するため、デスクトップのアイコンを最小限に抑えている。資料や情報は探しやすく、アクセスしやすい3階層のデータ管理を徹底。特にファイル名には作成日ではなく「使用日」を含めることで、過去のバージョン管理を容易にし、週平均41分に及ぶ探索時間を削減する。
重要な思考を要するタスクは、脳のパフォーマンスが最も高まる午前中、具体的には起床から2~3時間後が理想的で、9時から15時までの時間帯に集中して行う。午後は脳の疲労や血糖値の変動によりパフォーマンスが低下するため、軽易な作業に充てるのが鉄則である。また、集中したい時間帯にはSlackなどで自らの状況を「見える化」ならぬ「見せる化」し、周囲に通知することで不必要な割り込みを防ぎ、集中力を確保する。
ストレスへの対処法も重要である。職場で不平不満を述べても問題は解決せず、自身の「機嫌」を損なうだけだ。期待される人は、運動や趣味など仕事と切り離された健全な方法でストレスを発散し、常にポジティブな状態を維持する努力をしている。
資料作成の目的は、単なる情報共有ではない。相手を「思い通りに動かす」ための手段である。そのため、資料の冒頭には必ず、相手に求める具体的な行動を結論として明記することが重要だ。例えば、「金曜日の16時までに検討結果を連絡してほしい」といった具合に、明確な行動と期限を提示する。

相手の認知負荷を最大限に減らすため、資料デザインにも工夫を凝らす。使う色は「3色以内」に限定し、特に彩度の低いグレーを多用することで、目が疲れにくい視認性の高い資料を作り出す。さらに、最も注目を集めやすい「白抜き文字」を効果的に用いる。これは映画の字幕などに多用される「ロウソク効果」により、遠くからでも見やすく、年齢を問わず情報が伝わりやすい利点がある。資料作成は自分本位ではなく、あくまで「他人軸」で行うべきだ。
会議での質疑応答に備えることも期待される人の習慣だ。事前に想定される質問(セルフツッコミ)をメモし、回答を準備する。もし質問に対し即座に答えられなくても、「分かりません」と正直に認め、次回の会議までに調べるという「行動」と「期限」を明確に約束することで、かえって信頼を勝ち取ることが可能となる。さらに、手戻りを74%削減する「フィードフォワード」を実践。資料完成前に、進捗20%程度の段階で上司に「この方向性で合っているか」と確認することで、手戻りや時間のロスを最小限に抑え、双方のハッピーに繋げる。
期待される人はAIを単なるツールとしてではなく、自身の生産性向上とノウハウ蓄積のためのパートナーとして活用する。思考のスピードがタイピングを上回ることを理解し、AIの「音声入力」機能を積極的に使う。話すことでアウトプットの効率が飛躍的に高まり、思考を中断することなくアイデアをテキスト化できる。著者は自身の著書を全て音声入力で執筆した。週に一度、自身の「逆境と挫折の乗り越え方」について10分間音声で記録するだけでも、年間数万字のコンテンツが蓄積され、自分だけの貴重な知識集が生まれる。

メール作成においてもAIは有効だ。AIにメールの文面調整を依頼する際は、ただ「調整して」と伝えるだけでなく、相手の役職や過去のやり取りといった「人格」に関する情報を与える。AIは事実の伝達は得意だが、感情を乗せた「伝わる」文章を作成するのは苦手なため、最終的には人間が感情や熱意を加えて修正することが不可欠となる。AIが生成した文章をそのまま送ると、相手に「手抜き」と感じさせるリスクがあるからだ。
会議前の想定質問洗い出しにもAIを活用する。過去の議事録や自分が答えられなかった質問の記録をAIに学習させることで、次の会議でどのような質問が来るか高精度で予測させる。これにより、たとえ自信がなくても的確な応答ができる状態を準備し、質疑応答で高い評価を得ることに繋げる。
信頼されるビジネスパーソンは、コミュニケーションの細部にも抜かりない。「ちょっといいですか?」と声をかけられた際、即座に「もちろんです」と返答することを習慣とする。すぐに手伝えない場合でも、「もちろんです、2時間後でもいいですか?」などと代替案を提示することで、相手との良好な関係性を維持する。この初期の「もちろんです」という言葉は、相手に「話しかけやすい人」という印象を与え、協力を得やすい土壌を築く重要なカギとなるのだ。
会議中は、たとえ自分に関係のない話題であっても、常に「機嫌が良い」状態を保つ努力をする。具体的には、大きく頷き、口角を上げて、熱心に話を聞いている「演技」をすることが有効である。これにより、仮に内職をしていたとしても周囲の信頼を損ねず、自身の印象を良く保つ。頷く際も、「深さ」と「ゆっくりさ」を意識する。データによると、期待される人はそうでない人よりも平均4.5〜6cm深く頷いている。速く浅い頷きは相手に「早く話を終わらせたい」「話を聞いていない」という印象を与える可能性があるため避けるべきだ。
さらに、メールの署名機能も戦略的に活用する。単なる連絡先情報に留めず、定型文をテンプレートとして複数(時には17種類も)登録し使い分ける。例えば、「お疲れ様です」といった挨拶文や、よく使う依頼文などを事前に登録しておくことで、入力を大幅に短縮し、相手への気配りと効率化を両立させる。これは、「同じ作業を同じ時間でやらない」という徹底した仕組み化の思考から生まれる習慣であり、小さな手間を省くことが、やがて大きな時間短縮と信頼の積み重ねに繋がる。