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世界の古代遺跡、次の大発見はどこだ?
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2026年5月30日

約4000年前、メソポタミア文明とインダス文明の狭間で栄えた謎の古代文明「ディルムン」。今年日本の発掘チームが最古の王墓を発見し、世界を驚かせた。謎に包まれたディルムンの秘密とは?期待される「次の大発見」の候補地とは?東京文化財研究所の安倍雅史氏に聞いた。 <ゲスト> 安倍雅史|東京文化財研究所 ...
ディルムン「最古の王墓」の謎と、アッカド帝国「幻の都」
日本の調査団はバーレーンでディルムン文明最古の王墓を発見した。紀元前2000年頃に遡るこの発見は、人類史の空白を埋める大きな成果だ。中東の厳しい情勢下で行われるこの研究が、いかに進められ、何をもたらすか。その全貌に迫る。

Q. 今回の発掘調査で具体的に何が明らかになったのか?
バーレーンのアアリ古墳群西で、ディルムン文明最古とされる王墓が発見された。これは既知の王墓より50〜100年古い、紀元前2050年から2000年頃の遺構である。

特徴は直径50mの「周壁」、王墓への「羨道」、そしてH型の埋葬施設だ。これらは王墓を示す普遍的特徴とされている。主体部からは人骨、土器片、青銅器片が見つかり、王墓である確たる証拠となった。特に保存状態の良い人骨の出土は、古代王の生活解明に極めて重要な成果をもたらすだろう。
Q. 発見された王の骨から、どのような情報が得られるのか?

ディルムン最古の王と推定される人骨は、その良好な保存状態から多岐にわたる情報を提供する。形質人類学分析で性別、死亡時年齢、病歴、怪我の有無、出産経験といった生物学的特徴が明らかになる。科学分析を適用すれば、生まれ育った場所や食生活などの生活様式も特定可能だ。DNA抽出に成功すれば、肌、目、髪の色に加え、遺伝的特性まで判明する可能性がある。この人骨分析は、ディルムン文明黎明期の王の姿を具体的に描き出す貴重な資料となる。
Q. 考古学調査において、どのような分析技術が用いられているのか?
調査には考古学者だけでなく、複数の分野にわたる専門家が参画する。特に人骨分析を行う形質人類学者と、土器に残された油の「残滓分析」を行う専門家が注目される。残滓分析は、古代の土器に染み込んだ微量の油成分を科学的に解析し、土器の調理用途や目的を解明する技術である。この最先端技術を駆使することで、当時の人々の食生活や文化、経済活動の実態を具体的に復元可能となる。古代の生活を多角的かつ詳細に理解する手がかりを得られるのだ。
Q. 発掘によってディルムン文明の歴史認識はどのように変化したのか?
ディルムン最古の王墓発見は、従来のディルムン文明の歴史認識を大きく変える可能性がある。これまで最重要とされたアアリ王墓群は、後期文明の王墓であったことが示唆された。対照的に、今回発見された墓群は規模が小さいが、文明初期の王たちの埋葬地と判明した。これにより、王墓が時代と共に規模や構造を巨大化・複雑化させていく進化の過程を追う研究が可能となる。王墓の変遷を辿ることで、ディルムン文明における王権の成り立ちや権力構造の強化が、いかに進んだかを詳細に解き明かす鍵となるだろう。
Q. 現代の中東における考古学調査の厳しい現実とはどのようなものか?

中東での考古学調査は、常に不安定な政治情勢という困難に直面する。調査団帰国直後のバーレーンの米軍基地へのドローン攻撃のように、情勢不安は研究継続を脅かすのだ。研究者たちは過去にシリア内戦やイランでの活動禁止により、調査地変更を余儀なくされた経験がある。このため、特定の地域に依存せず、複数の地域で並行調査を進める「リスク分散」を強いられている。こうした厳しい現実の中、バーレーンは観光開発に力を入れ多様な歴史的価値を訴えるが、「中東=危険」という国際社会のイメージ払拭には依然として大きな障壁がある。
Q. 今後の考古学研究で特に注目すべきプロジェクトは何か?
現在、ディルムン研究に加え、特に注目すべきプロジェクトが二つ進行している。
ディルムン交易船の水中考古学調査: バーレーン沖で青銅器時代のディルムン交易船が探索されている。トルコ沖での発見例を鑑み、交易の中心地であったディルムン沖にも当時の沈没船が存在する可能性は高い。銅やインダス文明の産物を積んだ交易船が発見されれば、古代の交易ネットワークと文化交流の実態解明に画期的な手がかりとなる。
幻の都アガデの探索: メソポタミア文明最大の謎の一つ、アッカド帝国の幻の都「アガデ」の探索が進む。日本の川上直彦研究者が長年の文献学的研究に基づき、イラクのテル・シンカー遺跡をアガデの有力候補地と見定め、発掘調査を開始した。テル・シンカーからは既にアッカド時代の土器が出土し、時代の一致は確認済みだ。王宮の遺構や行政文書の粘土板が発見されれば、テル・シンカーがアガデであったことが証明され、古代史に新たなページが加わるだろう。
Q. 結論
バーレーンで発見されたディルムン文明最古の王墓と、進行中の交易船や幻の都市アガデの探索は、人類の古代史に光を当てる極めて重要な研究だ。不安定な国際情勢下で多大な困難を伴うものの、最新の科学技術と地道な学術研究が融合し、これまでベールに包まれてきた古代文明の謎が次々と解き明かされつつある。これらの壮大なプロジェクトの進展が、歴史の空白を埋め、新たな知見をもたらすことに大きな期待が寄せられる。