PIVOT TALK BUSINESS
世界の超富裕層は、何を買っているのか?
(1186)
1.7万回視聴
2026年5月28日

イラン戦争、インフレ、AI勃興など、大きな変化が続く中で、世界の超富裕層はどう資産運用しているのか?どうリスクをヘッジしているのか?超富裕層の資産運用に詳しいムーギー・キム氏に聞いた。 <ゲスト> ムーギー・キム|グローバル富裕層研究家 慶應義塾大学卒業。UBS、アーサー・ディ・リトル、フィデリテ...
「兆円超えの富」を築く超富裕層の戦略:リスク、オルタナティブ投資、そして信頼
世界経済が不安定な時代にあっても、一部の超富裕層は着実に資産を拡大し続ける。
その投資戦略は、一般投資家や通常の富裕層とは一線を画す。本記事は、グローバル富裕層の専門家の見解に基づき、超富裕層がいかに富を築き、維持するかの本質を探る。彼らが注視するリスク、投資の実態、そして信頼できるネットワークの重要性について解説する。

Q. 富裕層と超富裕層では、資産規模と思考にどのような違いがあるのか?
日本では純資産1億円以上を「富裕層」、そのうち5億円以上を「超富裕層」と定義する場合が多いが、グローバルレベルの「超富裕層」は桁違いの資産を持つ。麦景図氏は、関わる富裕層が「兆円」単位の資産を保有することも稀ではないと述べる。この圧倒的な資産規模が投資に対するメンタリティを根本から変えるのだ。
彼らの資産は子々孫々まで安心して暮らせるレベルに達しており、短期的な利益追求の必要がないため、来年のリターンではなく、10年先といった超長期的な視点で資産を考えるようになる。この「フィナンシャル・インセキュリティ」(経済的な不安)からの解放こそが、リスクの捉え方や投資判断に多大な影響を与える要因である。
Q. 超富裕層が現在特に注目している主なリスクには何があるのか?
現在、超富裕層が注視する3大リスクは、「地政学リスク(イラン・コンフリクトなど)」「プライベートクレジットの動向」「AIによる産業構造変化」だ。しかし、彼らはこれらのリスクを単なる脅威とは捉えない。むしろ、独自のネットワークを駆使して深層情報を得、リスクを「構造的に儲かる」機会へと変換している。例えば、地政学的な緊張の高まりを背景に軍需産業の構造的な成長を見込み、信頼できる筋からの情報に基づいて投資を決定する。
実際、一流の資産運用会社の専門家が各国の情報機関からの情報を参考に戦争の持続可能性を分析し、それに連動して高額な報酬を得ている。超富裕層は情報の「アクセス」を強みに、リスクの裏側に隠された機会を見出すのである。

Q. 超富裕層がオルタナティブ投資に集中する理由は何だろうか?
超富裕層がオルタナティブ投資(未公開株、不動産、ヘッジファンドなど)に集中する最大の理由は、「情報へのアクセス」が富を生むからだ。上場株式(パブリック・エクイティ)の場合、情報の非対称性は低く、プロでも運の要素が大きい。誰もが瞬時に同じ情報を得られるため、プロの情報優位性は希薄だ。
一方、オルタナティブ投資は多額の投資が必要なため、適格機関投資家や超富裕層のみがアクセスできる排他的な市場だ。この限定されたアクセスが有利な投資機会を提供する。オルタナティブ投資は、企業再建、ベンチャー支援、インフラ開発など、実物経済に直接資金を投入し、新たな価値を生み出す「生きたお金」となる点が重要である。
Q. 報道されている「プライベートクレジットの問題」について、一流の超富裕層はどのように見極めているのか?
一流の超富裕層は、市場全体のパニックやメディア報道に惑わされず、「群衆心理の逆」を行く。プライベートクレジットが危険視され皆が売っている状況を、「誤解されて不当に売られている」優良資産を安く買う絶好の機会と捉える。その見極めには以下の3つのポイントが鍵を握る。
1.価格の透明性: 市場取引がないため、ファンド運営者の自己申告に価値評価が依存し、実態が不透明になる場合が多い。
2.流動性: 非上場資産は流動性が低く、換金できないリスクがある。
3.資金構造: 短期間で解約可能なプライベートデッド商品に対し、裏付け資産は売却困難な場合があり、解約殺到時に資産の叩き売りに繋がりかねない「デュレーション・ミスマッチ」が発生する。

これに対し「CLO(Collateralized Loan Obligation)」は、原資産が日々市場で取引され価格透明性が高く、組成時に12年間のロックアップ期間が設定され強制売却を防ぐ。また、シニア債で構成されるため安全性も高い。超富裕層はこうした詳細を見極め、市場の熱狂や不安に左右されないのだ。
Q. インフレ局面において、超富裕層が最も有効と考える投資戦略は何か?
インフレ局面で超富裕層が最も注目するのは「実物資産」、特に「インフラ資産」だ。空港や高速道路は、物理的に「隣にもう一つ建設する」ことが困難なため、強い独占的ポジションを持つ。需要がある限り価格転嫁が可能であり、インフレが発生しても実質的な資産価値が減りにくい強みがある。
民間の資金が公共インフラの効率化と再生に貢献する事例も多い。老朽化した米国の空港が、プライベートエクイティ(PE)ファンドの参入により、運営の効率化やサービス向上、集客戦略が施され劇的に改善された例はその典型である。この投資は、公共施設の利便性向上という社会貢献にも繋がる。
インフラ投資には多様性がある。計画段階から関わるハイリスク・ハイリターンの「デベロップメント型」から、完成後に安定的なキャッシュフローを得る低リスクの「コア型」まで幅広い。超富裕層は、自身のリスク許容度に応じて最適なプロダクトを選択できる。

Q. 投資の世界で勝ち続ける一流の超富裕層は、どのように情報収集し、判断を下しているのか?
一流の超富裕層の成功は、単に個人の才覚や資金力によるものではない。市場のトレンドや感情に左右されない冷静な判断力を保つことが重要だ。AI時代の今でも投資の本質は変わらず、特定のセクターや企業に過度に「惚れ込まず」、情報の本質を見抜く視点が必要とされる。
彼らが最も重視するのは「情報ネットワーク」である。信頼できる複数のファミリーや専門家が集まるコミュニティを形成し、互いに情報を共有し、投資案件を吟味する。
これにより、アドバイザーや投資ファンドに対する「ガバナンス」が強化され、安易な提案や詐欺的な案件から資産を守る強力な保険となる。長期的な信頼関係に基づき、資産家を食い物にせず本質的な価値を見出してくれる「一流のアドバイザー」と繋がることが、富を増殖させる好循環を生み出す鍵である。