健康新常識
「健康診断」結果の読み解き方/A判定でも突然死/3大原則を押さえよ/総合診療医が徹底解説
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2026年6月28日

年1回の健康診断、その「A判定」を信じて安心していないか。実は単体の数値だけでは病気のリスクは見抜けない。健康診断結果の正しい読み解き方と賢い活用法を総合診療医・伊藤大介氏が徹底解説する。 <出演> 伊藤大介 総合診療医/医学博士 三田友梨佳 MC/フリーアナウンサー 森本晋太郎 MC/お笑い芸人...
健診結果を最大限に活用する賢い読み解き方:プロの視点で深掘りする三大原則と組み合わせ術
あなたの健康診断結果は、本当にあなたの体の「全て」を語っているだろうか。多くの人が「A判定だから安心」と油断し、悪い結果が出れば「仕方がない」と諦めてしまう。しかし、その数値の裏には、あなたの生活習慣や将来のリスクを予見する貴重な情報が隠されているのだ。単なる数字の羅列として読み飛ばしているなら、あなたは宝の山を前にして見過ごしているかもしれない。このままではもったいない。
専門医は、その健診結果をまるで探偵のように読み解き、個々の体に最適なアドバイスを導き出す。この記事では、あなたの健診結果がただの紙切れではなく、自身の健康と真摯に向き合うための羅針盤となるよう、その「賢い活用術」を明らかにする。数字の奥に隠された真実を知り、主体的に健康をマネジメントする方法を解説する。

Q. 健康診断はなぜ自分の健康と向き合う「唯一のチャンス」と言えるのか?
風邪を引けば病院へ行くが、その際の検査は風邪の原因に特化された部分的なものに過ぎない。しかし、健康診断は自覚症状がない健康な時に、全身を網羅的にチェックできる唯一の機会である。身体の不調を感じてからでは遅すぎる病も少なくない。危険な病気ほど静かに進行し、症状が現れた時には手遅れというケースは珍しくないのだ。健康診断は、そうしたサイレントキラーを早期に発見する最も重要な手段となる。
伊東医師自身も、学生時代に餅ばかり食べる不健康な生活を送り、入学時には体重107kgに達していたという。医学部で過酷な手術を目の当たりにし、自身の体の状態を見つめ直したことが健康意識に目覚めるきっかけとなった。健診結果は、生活習慣の改善努力が数値として現れるため、強力なモチベーションにもなり得る。
また、痩せていて若く、元気に見える人でも、体内に深刻な異常が隠れていることもある。実際に、症状がなかった20代後半の男性が、白血球が高いという健診結果の指摘で病院を受診した結果、白血病だったケースもある。見た目や自覚症状だけで健康を判断するのは非常に危険だ。定期的な健康診断こそが、未来の健康を守るためのコンパスとなるのである。
Q. 健康診断の結果を読み解く「三大原則」とは何か?
健康診断の結果を漫然と見ていても意味がない。適切に活用するためには、伊東医師が提唱する「三大原則」を理解することが重要だ。この原則は、病気の進行や検査項目ごとの特性を踏まえ、より賢い健康管理を可能にする。

その第一の原則は、「病気はピラミッドのように進行する」と考えることだ。高血圧や脂質異常症といった生活習慣病は、心筋梗塞や脳卒中といった重大な病の土台であり、独立した疾患ではない。初期段階の小さな変化を見逃さずに対処することが、重篤な病を防ぐ鍵となる。第二に、「検査項目はレベルとスピードで分ける」という視点を持つことである。「レベル」とは現在の臓器機能を示し、一度悪化すると回復が難しい項目。一方、「スピード」とは生活習慣によって進行速度が変化し、改善が可能な項目を指す。そして第三の原則は、最も重要な点となる。「改善できるのはスピードだけ」という認識を持つことである。多くの臓器は一度ダメージを受けると元には戻らない。そのため、改善可能な「スピード」の項目に注力し、将来の悪化を防ぐことが健康維持には不可欠となる。
Q. 「レベル」と「スピード」で検査項目を分けるとは具体的にどういうことか?
「レベル」の項目は、現在の臓器機能を表し、例えば腎機能のクレアチニンが該当する。この数値は、一度低下すると元に戻すのが困難なことが多い。対して「スピード」の項目は、将来の進行速度を示す指標で、血糖値、コレステロール値、血圧などが含まれる。これらは日々の生活習慣によって変動し、改善努力で良い方向に変化させることが可能である。

健診結果のA、B、C、Dといったランク付けだけでは、この「レベル」と「スピード」の区別が曖昧になることがある。同じ「B判定」でも、回復が難しい「レベル」の軽度な悪化なのか、それとも生活改善で大きく挽回できる「スピード」の項目なのかによって、対処の緊急度や方法が全く異なるのだ。たとえ現在の「レベル」が思わしくなくても、生活習慣を改善して「スピード」を緩やかにすれば、病気の悪化や発症を遅らせることができる。逆に「レベル」が良好でも、「スピード」の早い不健康な生活を続けていれば、数年後には一気に状態が悪化するリスクもある。自分の検査結果がどの「タイプ」に属するのかを理解することは、適切な行動変容と賢い医療選択の第一歩となるのである。
Q. 複数の検査項目を組み合わせると、どのようなことが分かるのか?
健康診断の結果は単一の数値として捉えるのではなく、複数の項目を組み合わせることで、まるで探偵が手がかりを辿るように、個人の具体的な生活習慣や隠れた体質、将来のリスクを鮮明に読み解ける。多くの人が軽視しがちな総合所見の自動記載では、単に「肝機能異常あり」といった情報しか得られない。しかし、医師は様々な数値の組み合わせから、驚くべき事実を導き出すのだ。
例えば肝機能の場合、ASTとALTの数値やその比率に着目する。ASTとALTのどちらが高いかで、急性か慢性かの区別、さらには肝臓特有の炎症なのか、他の筋肉などの影響もあるのかを推測できる。ALTが優位に高い場合は脂肪肝の可能性が高まる。そこで腹囲やBMIを併せて見ることで、飲酒ではなく夜遅くの食事といった食習慣が原因であることを特定できる場合もある。さらに尿比重を観察すれば、水分不足の可能性までわかる。肝硬変への進行度を表す「Fib-4インデックス」という、年齢、AST、ALT、血小板を組み合わせた指標を用いることで、肝臓の線維化レベル(レベル項目)まで簡易的に把握でき、重篤な状態への進行を未然に防ぐことができる。このFib-4インデックスはインターネットで簡単に計算でき、2.6を超えると肝硬変のリスクが高いため、早急な精密検査が推奨される数値だ。

また、高血圧の場合でも、脈拍や、上の血圧(収縮期)と下の血圧(拡張期)の「脈圧」を見ることで、血圧上昇の根本原因や動脈硬化の進行度が詳細にわかる。血圧が高く脈拍も速いのは、精神的な緊張やホルモンの影響の可能性もあるが、血圧は低いのに脈拍が速い場合は、体内の水分不足や貧血、心臓疾患の可能性など、体がSOSを出している危険なサインである場合が多い。動脈硬化が軽度なら末梢血管の影響で下の血圧が高くなりがちだが、進行すると太い血管まで硬くなり、上の血圧だけが非常に高くなる特徴も確認できる。さらに、家庭で日々の血圧を記録することで、朝だけ高い「モーニングサージ」や夜間に下がらない「夜間高血圧」といったパターンを特定でき、原因に応じたきめ細やかな対処が可能となるのだ。このような複数の情報から立体的に健康状態を把握することが、よりパーソナルなアドバイスにつながる。
糖尿病の評価では、採血時の短期的な血糖値だけでなく、過去1〜2ヶ月間の平均的な血糖コントロール状態を示す「ヘモグロビンA1c」と「尿糖」を組み合わせることが不可欠である。血糖値は健診前の節制で一時的に下げることが可能だが、ヘモグロビンA1cはごまかしが効かない「正直な」指標であり、医師はこれによって患者の本当の生活習慣を見抜く。このヘモグロビンA1cが6.5%以上であれば糖尿病が強く疑われるのだ。
Q. 健診結果の「A判定」だからといって本当に安心しても良いのか?
単に「A判定」だからといって完全に安心するのは時期尚早だ。基準値内に収まっている項目でも、他の数値との組み合わせによって、将来のリスクを示唆している場合がある。重要なのは、各項目の数値を個別の「点」として見るのではなく、相互に関連する「線」として捉え、全体像として健康状態を把握することだ。
例えば腎機能は「レベル」の代表的な項目であり、一度eGFR(推定糸球体ろ過量)が低下すると、それを自力で回復させるのは極めて難しい。eGFRは年齢や性別とクレアチニン値から簡単に計算でき、60未満で慢性腎臓病とされる100点満点の採点システムである。もし60点を下回っていても、絶望する必要はない。目標はスコアを上げることではなく、むしろ現在の「60点」をいかに維持するかである。そのために、腎臓の悪化速度(スピード)に影響を与える他の項目、例えば血圧、血糖、尿酸値を厳しくコントロールすることが極めて重要となる。これらの「スピード」の数値を改善することで、結果的に腎臓の「レベル」の悪化を遅らせ、現在の機能を最大限に守ることができるのだ。
このように、健診結果はただの評価表ではない。それは、自分の体と対話するための、パーソナルな情報源である。単に良し悪しで一喜一憂するのではなく、深く読み解く力を身につけることで、あなたの健康診断は、単なる通過儀礼から、未来の健康を導く確かな「羅針盤」へと進化するだろう。