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湾岸タワマンに起きている異変【のらえもん】
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2026年5月2日

湾岸タワマン相場が静かに反転している―。2025年10月に施行された経営・管理ビザの厳格化。建設費爆騰で次々凍結する再開発。そして「値上がり前提で買った人たち」の一斉売却。3つの変数が同時に動き始めた湾岸タワマン市場の構造変化を、マンションアナリスト・のらえもん氏が読み解く。 <ゲスト> のらえも...
湾岸タワーマンション市場の異変と未来戦略:アナリストが語る真実
かつて高騰が止まらないと思われた東京湾岸タワーマンション市場で今、かつてない異変が起きている。ここ数年価格は右肩上がりであったが、突如として売りたい人が急増し、逆に買いたい人が減少するという「ダブルパンチ」に見舞われているのである。市場の最前線で何が起こっているのか、その背景に隠された複数の要因をマンションアナリストのらえもん氏の洞察から紐解く。
今後、湾岸エリアの不動産市場はどのような変貌を遂げるのか。そして、将来的な不動産戦略において、私たちが着目すべき本質的な指標は何なのかを解説する。

Q. 湾岸タワーマンション市場に起きている異変の具体的な内容とは何か?
現在、湾岸タワーマンション市場は「売りたい人が増え、買いたい人が減る」という異例の状況に見舞われている。特に深刻なのが、五輪選手村の跡地に開発された「晴海フラッグ」周辺だ。ここではタワー棟の入居開始時期が近づくにつれ、転売目的で購入した所有者が一斉に物件を売り出し始め、その在庫数は数百件にも達している。
これは「供給過多」を招き、需給バランスの悪化から価格の伸び悩みを引き起こす主要因の一つとなっている。加えて、市場の買い手であった中国系の「カジュアル移民」の急減がこの動きに拍車をかけ、まさにダブルパンチの状態と言える。
Q. 中国人買い手が急減した背景にはどのような事情があるのか?
中国人買い手が減少した最大の理由は、日本政府による「経営管理ビザ」の要件厳格化である。従来、資本金500万円という比較的緩やかな条件で取得できたビザが、2023年10月以降、「資本金3000万円以上」「常勤職員の雇用」「日本語能力または学歴・職務経験の必須化」と大幅に厳格化されたのだ。

これにより、ペーパーカンパニー設立などによる「カジュアル移民」が著しく減少し、結果としてビザ取得者数も半減している。中国系の購入者を主な出口としていた国内の不動産買い取り再販業者も、これを機に買い控えに転じた。日本人は相場を意識して物件を購入する傾向が強いため、強気な価格設定の物件は売れ残り、市場の勢いが失われているのが現状である。
Q. マンション価格が高騰している根本的な原因は何だと考えられるか?
マンション価格が高騰した根本的な原因は、コロナ禍以降の世界的な金融緩和と大量の通貨発行にある。各国が経済を停滞させないために「お札を刷りすぎた」結果、貨幣の価値が相対的に希薄化し、供給に限りのある不動産のような現物資産の価格が、円建てで見たときに高くなったに過ぎない。
この現象は、日本円で給与を得ている我々の「労働価値の毀損」と捉えることも可能だ。実際に、金(ゴールド)価格を絶対的な価値基準として比較すると、東京都心のマンション指数は相対的に下落していることがわかる。マンション価格が高くなったというよりも、お金の価値が下がったという見方が適切だろう。
Q. 建設費高騰と人手不足が今後の新築マンション供給に与える影響はどうか?
建設費の高騰に加え、建設業界の深刻な人手不足が今後の新築マンション供給を困難にしている。建設業の従事者は60代以上が圧倒的に多く、今後5年から10年で彼らの多くが労働市場から退出し、その穴を埋める若い労働力が不足している。

結果として、デベロッパーが資金を用意してもゼネコン側が工事を受けられない事態が多発しており、再開発プロジェクトの多くが中止、凍結、または延期に追い込まれている。エレベーターのような重要な設備についても「10年待ち」と言われるほどの供給不足が発生しており、建物が完成しても内装が追いつかず、竣工できないケースも報告されている。
これらの事情から、今後10年は「間に合った再開発」と「間に合わなかった再開発」の格差が鮮明になる可能性が高い。デベロッパーが建設費高騰を理由に物件価格に上乗せして利益を確保する傾向も見られ、開発戸数が減少する中でも最高益を更新する企業が散見されるのが実情だ。
Q. 今後、マンション市場におけるエリアごとの濃淡はどのように現れると予測されるか?
マンション市場は価格帯とエリアによって二極化が進行する。3億円以上の超高級物件は依然として活況を呈しているが、湾岸エリアが中心となる1億2000万円から1億8000万円程度の物件は、現在「踊り場」の状態にある。
一方、国道16号線沿いなどの郊外エリアで販売されている6000万円台の新築マンションは、価格が高すぎて地元の所得層が購入できず、苦戦を強いられているケースが多い。この価格帯では、大規模化や豊富な共用施設で広範囲から買い手を誘致する戦略が必要となっているが、50戸以下の小規模マンションは事業成立が難しくなりつつある。
湾岸エリア内でも濃淡があり、特に「晴海」は先に述べた通り供給過多で最も厳しい状況に直面している一方、ららぽーと豊洲の改修のようにインフラが強化される地域では安泰であるとの見方もある。
Q. 長期的な視点で見たとき、湾岸エリアの未来は明るいと捉えられるか?
短期的には調整局面にある湾岸エリアだが、長期的視点で見ればその未来は明るいと言えるだろう。東京は江戸時代、八重洲が海であった頃から、常に海の方向、すなわち湾岸エリアへと拡大を続けてきた歴史がある。この傾向は今後も続くと考えられる。

湾岸エリアの強みは、歴史的な地権者の「しがらみ」が少なく、行政が新しい都市計画や再開発を進めやすい点にある。人口減少時代にあって、未だに新たな鉄道計画が持ち上がるのは、このエリアが持つ潜在的なポテンシャルの証だ。
目先の価格変動にとらわれず、東京という都市の発展の軸として湾岸エリアの役割を理解すれば、短期的調整はあっても、長期的には安定した一定の需要が続くものと予想できる。
Q. これからの不動産購入において最も重要視すべき指標とは何か?
不動産を購入する際の最もシンプルかつ重要な指標は、「そのエリアの人口が2035年までに増えるか否か」である。人口増加が見込めないエリアの物件は、将来的な資産価値の維持が難しくなるため、避けるべきだとアナリストは指摘する。
東京都内でも区によって状況は大きく異なる。中央区、江東区、千代田区、港区などは人口増加が見込まれる一方で、隣接する江戸川区などは減少する予測が出ている。この「人口の濃淡」を正確に見極めることが、今後の不動産戦略における鍵となるだろう。安易な購入は避け、地域ごとの人口動態を深く分析することが賢明な判断に繋がる。