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【年収は顔で決まる?】ルッキズムの科学
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2026年5月21日

現代ではルッキズム的な観点から語られることが多い「顔」。私達は日々の生活でどのくらい顔の影響を受けているのか?顔を語るのは本当にタブーなのか?顔研究の第一人者である山口真美氏に聞いた。 <ゲスト> 山口真美|心理学者 中央大学文学部教授。博士(人文科学)。専門は実験心理学。文部科学省・学術変革領域...
「顔」で人生はどこまで決まる?心理学者が紐解く美貌格差の真実
現代社会において「顔」はどれほどの力を持つだろうか。就職活動での「顔採用」、選挙での当落、さらには収入に至るまで、美貌が人生を左右する現象を「美貌格差」と呼ぶ。ルッキズムと叫ばれる時代の中で、見た目は本当にそこまで重要なのか。
心理学者で顔研究の第一人者である山口真美氏は、この「顔」の持つ真の力と、その背景にある人間の深層心理を実験心理学の観点から明らかにする。

Q. 写真の見た目と対面の印象は、なぜ異なるのか?
静止画である写真の見た目と、対面で表情や頷きといったコミュニケーションを通じて生じる見た目とは、大きく異なる。日本では就職活動のエントリーシートに顔写真を貼る慣習があり、これが選考者の先入観を生むことがある。しかし、多民族国家である海外では、人種による先入観を避けるため写真を貼らない動きもある。どの国でも面接は対面で行われるため、やはり対面でのコミュニケーションを通じて形成される印象が重視される。
写真の印象が悪くても、コミュニケーション能力によって相手の評価は逆に高まる可能性がある。この「ギャップ効果」が対面の場では時に有利に働く。つまり、写真だけでは見た目の全てを測ることはできないのだ。
Q. 選挙結果まで左右する第一印象の力とは?
選挙において、第一印象が驚くほどの力を持ちうるという研究結果がある。アメリカのトドロフが行った研究では、学生に候補者の顔写真を一瞬見せ、「どちらが有能か」を瞬時に判断させた。その結果、有能だと判断された候補者の7割が実際の選挙で当選していた。

この現象はアメリカ以外の国でも確認され、人種が異なる場合でも同様の結果が得られたという。この研究は、熟考した場合ではなく、無意識的な直感による第一印象が、投票行動という重要な意思決定に大きく影響する可能性を示唆している。
Q. 美貌と収入には関係があるのか?
美貌と収入の関係について調査した経済学的な研究では、女性よりも男性の方が、見た目の評価と収入の相関が強いという結果がある。これは、男性の場合に見た目が収入に影響を与える可能性が高いことを示している。ただし、これも第一印象に関する研究であり、見た目が直接的に収入を決定するというよりは、初対面での評価に影響を及ぼす側面が大きいと考えるべきである。
Q. 人が「見た目」で人を判断するのはなぜなのか?
人間が他人を「見た目」で判断する習性は、生命の根源的な生存戦略に根ざしている。赤ちゃんが母親の顔を認識して身の安全を確保することから始まるように、私たちは生まれた時から人を区別する能力を持っている。これは、集団内で信頼できる仲間を見つけたり、危険を回避したりするために不可欠な本能である。

この生存のために備わった能力が、現代社会において就職や選挙といった選考の場に応用されていると言える。見た目だけで人の価値を測るのは偏見であるが、本能的に私たちはこの能力を使っているという事実から目を背けることはできない。
Q. 美しさの本質は顔の「造作」か「表情」か?ボトックスの影響は?
人の魅力を決定づける「見た目」の本質は、顔のパーツ(造作)そのものよりも、「表情」にあると心理学では考える。私たちは他人を記憶する際、無表情な顔ではなく、その人がよく見せる笑顔などの表情とセットで覚えていることが多い。
表情と感情は密接に結びついており、表情筋の動きが制限されると感情の起伏にも影響が出る可能性がある。ボトックス注入はシワ改善に有効だが、表情筋を麻痺させることで表情が乏しくなり、結果として感情表現が阻害されるだけでなく、感情自体も麻痺してしまう危険性があるという研究結果もある。自身が良かれと思っても、表情が乏しくなることで周囲からの魅力が低下する可能性も否定できない。
Q. SNSと写真加工が現代の「見た目」の認識をどう変えたか?
スマートフォンと写真加工アプリの普及により、現代では加工された写真が当たり前になった。今の若い世代は加工後の顔を通常の顔と捉える傾向があり、実物との差を予測する能力すら進化させている。SNSでは常に美しく加工された大量の顔に触れる機会があるため、人々の「美の基準」は爆発的に高まり、かつ均質化が進んだ。

特定のスタイル、例えば韓国風メイクが流行すると、多くの人がその美しさを目指す傾向がある。これにより、自分の容姿に対する評価が厳しくなり、ルッキズムによる苦しみを生む一因ともなっている。
Q. 日本人がマスクに抵抗がないのは、表情の読み方に関係があるのか?
日本と欧米では、他人の表情を読む際に注目するポイントが異なる。欧米人が感情を口元で表現し、口元に注目するのに対し、日本人は「目元」で感情を読み取る傾向が強い。これは、日本文化が感情を控えめに表現し、目元で繊細なニュアンスを伝えることを重視してきた歴史と関係がある。
そのため、日本人がマスクを着用して口元を隠しても、表情の読み取りに大きな支障をきたしにくい。この文化的背景が、海外に比べて日本でマスク着用に対する抵抗感が少ない一因となっていると考えられる。