PIVOT TALK MONEY
人生の「お金の消費」戦略
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2026年5月18日

老後のための貯蓄や投資の必要性が叫ばれる中、経済コラムニストの高井宏章氏は、20代や30代での適切な自己投資や消費こそが人生を豊かさにすると指摘する。正しい「老後の備え」について聞いた。 <ゲスト> 高井宏章|経済コラムニスト 経済コラムニスト、千葉商科大学付属高校校長。1995年、日経新聞入社。...
人生を豊かにする《お金の消費》戦略
現代社会において、お金の話題は避けて通れない。私たちはどのようにして収入を増やすかを常に考えがちだが、人生を真に豊かにするのは、お金を「どのように使うか」であると経済コラムニストの高井宏章氏は語る。ただ稼ぐだけでなく、自らの人生観や価値観に照らし合わせ、戦略的にお金を使う思考が今求められているだろう。
本記事では、働き始めたばかりの若手から、老後を見据えるビジネスパーソンまで、全世代が「お金」とどう向き合うべきかについて、Q&A形式で深く掘り下げる。

Q. お金の使い方を考え始めるタイミングはいつが適切か?
自分が収入を得るようになった時点で、「どうやって使いたいか」を同時に考えるべきである。お金は人生の目的を達成するための"手段"であり、それ自体が目的ではないためだ。高額な商品やサービスが直接的な幸福に繋がるわけではないことを理解し、何に価値を見出すかを整理する必要があるだろう。
例えば、「毎年ヨーロッパを旅行しなければ生きている気がしない」という人であれば、その目標を全速力で達成するためにお金を貯め、投資をするのが合理的だ。人生で何をしたいのかをまず問い、そこからお金の使い方を逆算すると、具体的なマネープランが描きやすくなるだろう。
Q. 若いうちにするべき「最もリターンが高い投資」とは何か?
若い時期には、将来やりたいことが明確でなくても「自己投資」に重点を置くのが賢明である。自己投資は金銭的なリターンだけでなく、人生の満足度という側面でも最高の投資だ。その成長は"複利"で増え、非課税であり、生涯賃金の増加にも繋がるため、そのリターンは極めて高いと言える。

NISAなどで老後資金を積み立てることは素晴らしいが、「今しかできない経験」を犠牲にしてまで過度に節約する"NISA貧乏"に陥らないよう注意が必要である。若いうちの留学や旅行、新しい分野の学習など、自身の世界や可能性を広げる自己投資は、未来の選択肢を増やすことに直結する。特に20代はその優先度が高い期間だ。
Q. 将来を見据えたお金の計画、いつ・どのように立てるべきか?
30年後のような遠すぎる未来の計画は予測不能であるため、現実的な資金計画は「10年スパン」で考え、ライフイベントに応じて都度見直すのが適切である。例えば、子供が生まれた際は、その教育費など具体的な目標が生まれ、マネープランの優先順位が大きく変わるきっかけとなるだろう。
予測不能なリスク、特に長生きによるお金の不安に対しては、過度に心配しすぎず、日本の手厚い公的社会保障制度を信頼し、それをセーフティネットの土台として活用することが重要である。現役世代が受けられる遺族年金などの制度も理解し、国の仕組みを最大限活用することを考えるべきだ。
Q. 漠然とした将来への不安に対し、投資でどう備えるべきか?
資産形成の基本は、「長期・分散・積立」である。NISAなどの制度を利用し、世界経済の平均的な成長を享受するインデックス投資は、堅実な方法と言えるだろう。少額でも早期から投資経験を積むことで、市場の変動を体験し、金融リテラシーを高めることが可能となる。

しかし、それ以上に重要なのは「詐欺に引っかからない」ためのリテラシーだ。高齢者の資産損失は、詐欺被害によるものも多い。非現実的な高利回りを謳う「うまい話」は存在しない。例えば、上場企業の配当利回りが10%を超えることは稀であることを知っていれば、「20%確実に儲かる」といった誘い文句に騙されなくなる。投資は"平均点を取れば勝ち"のゲームであることを肝に銘じ、"うまいことやろう"という欲を捨てることが肝要だ。仕組みが理解できない金融商品には決して手を出してはいけない。お金の勉強は必要最低限にとどめ、人生の本筋にリソースを割くのが賢明だろう。
Q. 「DIE WITH ZERO」という考え方に対してどう思うか?
「DIE WITH ZERO(ゼロで死ぬ)」という思考は、お金を人生の手段と捉える上で非常に有効である。貯蓄を残すことに執着するよりも、人生で本当に価値のある経験や自己実現のためにお金を使い切ることを目指すべきだろう。「長生きリスク」という言葉は聞くものの、長生き自体は本来喜ばしいことだ。むしろ、「長生きできないリスク」も考慮し、元気で体力があるうちにやりたいことにお金を使う方が後悔が少ないという見方もできる。

この思考を実践する上での最大の防御策は、「生活レベルを上げないこと」である。幸福度が生活水準に大きく依存しないタイプであれば、お金への依存度が下がり、精神的な不安が軽減され、より自由に人生を計画できるはずだ。
Q. 老後の不安はお金より健康というが、どう備えるべきか?
老後の真の不安は、実はお金よりも「健康」である。どれだけ貯蓄があっても、健康でなければそのお金を使い、人生を楽しむことも、社会に関わることも難しい。元気なうちに旅行をしたり趣味に興じたりする"楽しみ"には、その時々の身体的能力が必要不可欠なため、若いうちに我慢しすぎて後から使えなくなる悲劇は避けたいところだ。
人生100年時代、70歳を過ぎても働くことを前提にすれば、老後の金銭的計画のハードルは格段に下がるだろう。働くことは経済的な安定だけでなく、社会との繋がりややりがい、幸福感にも寄与する。人口減少社会において高齢者の働き口は増えていく傾向にあるため、「楽しく働き続けられる自分」でいることを目指すべきだ。
そのため、日々の「健康維持」は最も重要な自己投資と言える。身体的な健康だけでなく、キャリアアップのための学習や社会性を保つ努力も含め、自身の可能性を広げ続けることが、豊かな人生への最良の備えとなるだろう。