教育新常識
親が知るべきいじめのサイン【いじめ被害を言えない理由】
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2026年4月25日

いじめ被害者の沈黙3つの理由とは?いじめ加害者の親に多い特徴とは?見逃してはならない親が知るべきいじめのサインとは? いじめ被害をなくす科学的解決法について和久田学氏に聞いた。 <ゲスト> 和久田学 1964年 静岡県生まれ 大阪大学大学院連合小児発達科学研究科 招へい教員 子どもの発達科学研究所...
いじめ問題に科学的アプローチを:傍観者・家庭・学校が変わる解決策とは
子どもたちの社会問題の中でも、特に深刻ないじめ問題。多くの議論がなされているが、個々のケースへの対処に終始しがちである。本稿では、最新のいじめ研究に基づいた科学的知見と実践的な解決策を探る。被害者、加害者、そして最も重要であるとされる傍観者の行動変容、親の役割、そして学校全体の環境改善に焦点を当て、いじめのない社会を目指す新たな視点を提供する。
Q. いじめ解決に最も効果的なアプローチとは何か?
いじめ問題を解決する上で、当事者である被害者や加害者へのアプローチだけでなく、周囲の「傍観者」に対する教育が世界的に最も効果が高いとされている。カナダの研究では、いじめエピソードの実に85%に傍観者が存在したと報告された。しかし、実際に何らかの介入行動を起こしたのはわずか13%であった。だが、この13%が行動すると、半数以上のいじめが数秒以内に止まるという驚くべきデータがある。

多くの傍観者は心の中でいじめを「やめるべきだ」と感じていても、「次の標的になるのが怖い」という理由で行動できないのが実態である。そのため、個人に責任を負わせるのではなく、傍観者全員が「いじめは間違っている」「行動すれば止められる」「ほとんどの人がいじめを良くないと思っている」という共通認識を持つための教育が重要となる。この教育により、「自分だけではない」という安心感が生まれ、行動へのハードルが劇的に下がると期待されるのだ。
Q. いじめられた子どもが自らを守るための具体的な行動はあるか?
いじめに遭遇した際、子ども自身が取るべき具体的な行動として「やはた行動」が挙げられる。これは、「や(やめてと言う)」「は(その場から離れる)」「た(複数の大人に助けを求める)」という3つのステップで構成される。「やめて」という最初の意思表示が、加害行動を止めるエビデンスもあるため、可能な限り伝えることが大切だ。

特に重要なのが「助けを求める」スキルである。これは子ども時代に習得すべき重要なライフスキルとされ、大人になっても問題を抱え込むことによる自殺や犯罪といった悲劇を防ぐ。助けを求めるときは、一人の大人に固執せず、複数の大人に相談するよう教えるべきだ。また、親は普段から「困ったら必ず助ける」という姿勢を子どもに示すことが、子どもが安心して助けを求められる安全基地を構築する上で不可欠だ。
Q. なぜいじめ被害の子どもは助けを求めない沈黙に陥るのか?
子どもがいじめのSOSを発信できない「被害者の沈黙」には、主に3つの理由がある。第一に、過去に助けを求めた際、「そのくらい自分でやりなさい」と突き放された経験があること。第二に、親とのコミュニケーションが不足し、相談できる孤立した関係にあること。第三に、「助けを求めるのは格好悪い」という価値観を教え込まれていること。これらの原因は全て大人側にあると言えよう。

親が「些細なこと」と考え、子どもを突き放す態度は、子どもが「些細なこと」と「重大なこと」の区別を学べなくなる原因となる。一度でも助けを拒絶されると、子どもは本当に困った時でさえ相談を諦めてしまう。親はどんなに小さなSOSであっても、決して「自分でやりなさい」と否定せず、耳を傾ける安全基地としての役割を果たす必要がある。子どもが本音を言える信頼関係の構築が、沈黙の壁を破る第一歩となるだろう。
Q. 親がわが子をいじめの加害者や被害者にしないために、日頃から心がけるべきことは何か?
親の行動は子どものロールモデルとなる。子どもを力で支配する「パワーコントロール」型の親のもとで育つ子どもは、いじめの加害者になるリスクが高い。親は、怒りの感情を言葉で解決する姿を示すなど、良い手本を提示することが重要だ。また、子どもが思春期を迎え、口数が減ったとしても、学校での様子や人間関係について質問し続けることは親の「義務」である。これは、食事や住居を提供するのと同様、子どもを守るために不可欠な努力であると言える。
いじめの早期発見・対応のためには、子どもの「変化」に気づくことが鍵となる。食欲不振、不眠、自室に引きこもりがち、特定の友人の話をしない、といった小さな異変を見逃さない鋭い観察力が必要だ。子どもの心身の変化に常にアンテナを張り、関心を持ち続けることが、問題の芽を摘み、適切なサポートへ繋ぐ上で最も重要だ。
Q. わが子がいじめの加害者になった場合、親はどのように対応すべきか?
もし我が子がいじめの加害者だと判明した場合、最初に「どうしてそんなことしたの?」と理由を尋ねてはならない。これは「正当な理由があればいじめてもよい」という「シンキングエラー(思考の誤り)」を子どもに植え付ける可能性があるためだ。まず「いかなる理由があっても人を傷つける行為は許されない」という社会のルールを毅然と伝えるべきである。事実確認を優先し、「〇〇くんを傷つけたかもしれない。それはしてはいけないことだね」と伝え、その後で行動の背景を尋ね、分離して指導することが重要だ。
子どもが嘘をついた際も、頭ごなしに叱るのではなく「なぜ嘘をつく必要があったのか」とその背景に興味を持つことが大切である。子どもは本来、親に「良い子」だと思われたい気持ちが強い。嘘をつく状況に追い込んだのは大人側の環境設定や関わり方に原因がある可能性も考慮し、子どもの思考プロセスに寄り添い、真の問題解決に導くことが親の役割である。
Q. いじめゼロ社会を実現するために「学校風土」の改善はなぜ不可欠なのか?
いじめをなくすには、個々の子どもへのアプローチだけでなく、集団である「学校風土」を変えることが最も効果的だ。良い学校風土は、いじめや不登校、子どものメンタルヘルス悪化、さらには自殺の予防だけでなく、学力向上や教員の離職率低下にも寄与するという研究結果がある。これは、職場環境の良し悪しが大人に影響するのと同じく、子どもにとって学校の雰囲気が極めて重要であることを示している。

「学校風土」という曖昧な概念を、子どもへのアンケート調査などを通じて数値化し「見える化」することが、科学的アプローチの第一歩だ。これにより、漠然とした「雰囲気が悪い」という印象論ではなく、客観的なデータに基づいて「どこをどう改善すべきか」という具体的な対策を講じることが可能になる。先生への褒め方・叱り方に関する指導、感情コントロールの教育(ワークブックやゲームを通じて)、など実践的な取り組みが、実際にいじめの減少に繋がり、学校環境の全体的な質を向上させるのだ。
Q. 子どものいじめ問題解決は日本の未来にどう繋がるか?
大人社会で顕在化する依存症、メンタルヘルスの悪化、自殺、引きこもり、ニートといった深刻な問題の多くは、子ども時代の失敗体験に根ざしている可能性がある。そのため、子どものいじめ問題を科学的に解決し、健全な発達を支援することは、単なる個人的な問題解決にとどまらない。これは、日本の未来を担う次世代への最も確実な投資であり、社会全体の持続可能性を高める根幹をなすものと言えよう。
いじめゼロという理想は達成困難に思えるかもしれないが、目指すことこそが大人の責任である。科学的エビデンスに基づいた教育の推進、家庭での適切な関わり方、そして学校風土の継続的な改善を通して、子どもたちが安心して成長できる環境を社会全体で創り出す必要がある。親は学校を信頼し、教育環境の向上へ積極的に関わることが、巡り巡って我が子、そして日本の未来を守る最善の道となるのだ。