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「人生を浪費」する思考・習慣
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2026年4月27日

人生はあっという間に終わる。どうすれば時間を浪費せず有意義に過ごせるのか?統計のプロである佐藤舞氏によれば、学歴や年収よりも「自己決定」の指標が、人の幸福度に影響を及ぼすのだという。幸せに生きるための「時間術」について聞いた。 <ゲスト> 佐藤舞(サトマイ)|データアナリスト データ分析、活用コン...
あっという間に人は死ぬ:「人生を浪費」しないための思考法
人生の時間を最大限に活用したいと考える人は多いだろう。タスク管理や生産性向上のためのノウハウが世にあふれている現状からもそれは明らかだ。しかし、目の前の効率化に終始するだけでは、結果的に人生全体を「浪費」することになりかねない。本来目指すべき「死ぬまでの有意義な時間の使い方」とは一体何なのか。データアナリストの佐藤舞(サトマイ)氏が、神戸大学の調査などから明らかになった幸福の鍵や、人間の本質的な葛藤を踏まえ、具体的な実践方法までを紐解いていく。

Q. 効率的に時間を使っても「人生の浪費」になるのはなぜか?
時間術に関する本がいつの時代も売れ続ける事実は、ダイエット本と同じく、本質的な問題が解決されていないことの裏返しである。巷にあふれる時間術は、大きく二つに分類できる。一つは、ToDoリストや手帳術など、日々の業務効率を上げる「生産性アップ系」だ。これらは短期的には有効であるものの、人生という長期的な視点で見れば、時間の使い方の根本的な解決には寄与しない。例えば、8時間かかっていた仕事を4時間で終えられるようになっても、余った4時間を単に次のタスクで埋めるだけでは、人生全体の幸福度が高まるわけではない。
もう一つは、『7つの習慣』のような「自己啓発系」だ。これらは「自分の本当にやりたいことを見つけ、それに時間を使いましょう」と主張するが、最も困難な「どうやってそれを見つけるか」という肝心な方法論が欠けている点が課題であった。従来のどの時間術も、人生という究極のタイムリミットを踏まえた有意義な時間の使い方という視点が欠けていたと言える。
Q. 人間が直視したがらない「人生の3つの真理」とは何か?
17世紀のフランスの思想家ラ・ロシュフコーは「人間は死と太陽は直視できない」という言葉を残した。この「死」は、文字通りの死だけを指すのではない。筆者によると、人が直視したがらない「真理」は三つ存在する。それは「死」「孤独」「責任」だ。

死: 人はいずれ必ず死を迎える。しかし、その事実を常に意識しながら生きることは、現在の生活を送る上で困難であるため、無意識のうちに直視を避けている。
孤独: 人は根本的に一人である。生まれも死ぬときも一人であり、他者との関係においても、完全に理解し合うことは不可能である。この孤独感を嫌がり、パートナーシップを過剰に求めたり、他者に過度に依存したりする行動につながる。
責任: 自分の行動には必ず結果が伴う。しかし、その結果に対する責任を負うことから逃れたいと考えるのが人間である。他人の評価や世間のレールに乗ることで、自ら意思決定をする責任を回避しようとすることが少なくない。
これら三つの真理から目を背け、逃避する目的で時間を使うことこそが、真の「人生の浪費」であると筆者は主張する。効率性追求のみでは決して解消されない根源的な問題が、ここにあると言えよう。
Q. 幸福度を最も高める「自己決定」とは、具体的にどういうことか?
では、人生を浪費せず、幸福度を高めるにはどうすればよいか。神戸大学が日本人2万人を対象に実施した大規模な調査によると、学歴や年収といった要因よりも、主観的幸福感に最も強く影響するのは「自己決定」という指標であった。

自分で人生の進路やキャリアを選択すること
例えば、進学先や就職先を周りの評価や世間の一般的な価値観に流されて決めるのではなく、「自分が本当にそこで学びたい、働きたい」という意思を持って決めることが「自己決定」である。世間のレールに乗ったとしても、それが自身の主体的な選択であれば、幸福度を高めるのである。
ただし、自己決定には覚悟が必要だ。選択に伴う様々なリスクや不安を想定し、それらを「引き受ける」という心理的態度、すなわち「ウィリングネス」が不可欠なのである。うまくいくかわからないという不確実性や、周りからの反対、金銭的な損失、批判される可能性など、あらゆるネガティブな要素を織り込んだ上で、それでも「この方向に進みたい」と意思を固める姿勢が幸福度を高める。目的のためにリスクを受け入れるからこそ、たとえ結果が思わしくなくても後悔や不満を感じにくいという側面があるのだ。
この覚悟を支えるのが、「自分は何を大切にして生きるのか」という明確な「価値観」である。価値観が明確であれば、困難な道であっても、その目的のために必要なリスクを引き受けることができるようになるのだ。
Q. 自分にとっての「価値観」や「本当にやりたいこと」を見つけるにはどうすればよいか?
「やりたいことがわからない」「自分の価値観が明確でない」という悩みを持つ人は多い。その答えを見つけるヒントは、「好きなこと」や「楽しいこと」を振り返るのではなく、むしろ「嫌だったこと」や「耐えられなかったこと」の中にある。
人が現状維持を破って行動を起こす動機は、時にポジティブな欲求よりも、強いネガティブな感情であることが少なくない。転職、環境変化、あるいは人間関係の断絶など、人生の中で「自らの意思で今の環境から抜け出した経験」を思い出してみよう。その時、「何が嫌で、なぜそこから離れたかったのか」「その現状をどう変えたかったのか」という強い感情にこそ、あなたの揺るぎない価値観が隠れている。筆者自身の経験では、「自分の人生の舵を他人に握られたくない」という、母がパートを掛け持ちして苦労する姿を見て抱いた原体験が、自らの核となる価値観になったと述べている。
また、脳の仕組み上、35歳以降は「結晶性知性」が高まる時期と言われる。これは、過去の様々な経験を統合し、言語化して整理する能力を指す。この時期こそ、これまで無意識だった経験や感情を振り返り、自分の人生の核となる価値観を明確にする絶好の機会なのだ。やみくもに行動を増やすよりも、人生を俯瞰し、本当に大切にすべきものを見つけることに時間を割くべきと言えよう。
Q. 忙しい現代において、つい時間が溶けてしまうデジタルデバイスへの向き合い方は?
SNSや動画コンテンツの無限ループにはまり、気づけば何時間も時間を浪費してしまった経験は誰にでもあるだろう。スマホ依存の根本的な原因は、デバイスが提供する「快楽」だけにあるのではない。むしろ「現実のストレス」から逃れ、それを和らげるために依存行動に走っていることが多いのだ。自分が何に対して不安を感じ、そこから目を背けたいがためにスマホに逃げているのか。このストレスの根源を特定し、言語化するだけでも、不安が軽減され、依存行動が減る効果がある。

自分が何に不安を感じ、スマホで何から逃げているのかを言語化する。
スマホ画面を「白黒表示」にする。
また、スマホ依存には「対症療法」も有効だ。人間は新奇探索性を持つため、通知や新しい情報、人からのリアクションなどが気になる。これを逆手にとり、スマホの「情報量」を意図的に減らす方法がある。例えば、スマートフォンの画面設定を「白黒表示」に変えてみることだ。カラーであることによって脳に与えられる情報量を減らすことで、スマホ画面が刺激的でなくなり、魅力度が大きく低下する。これにより、スマホを触る時間が自然と減少し、意識を現実世界に戻しやすくなるのだ。
Q. 「死ぬまでの有意義な時間の使い方」を見つけるための最後の心得は?
本稿で紹介した内容を含め、統計データや専門家の意見はあくまで一般的な傾向を示す「仮説」に過ぎない。重要なのは、これらの情報が万人にそのまま当てはまるわけではないと理解することだ。
統計的なエビデンスを盲信するのではなく、自分自身の人生で実際に「実験」してみること。その仮説を実践してみて、何を感じ、どのような変化があるかを体感することである。試行錯誤を通じて、あなた自身の「人生の価値観」と「有意義な時間の使い方」を見つけ出すプロセスこそが、何よりも重要となる。誰かの正解を追い求めるのではなく、自分にとって最適な答えを探し続ける探究心こそが、後悔のない豊かな人生へとつながる最後の鍵となるだろう。