PIVOT TALK BUSINESS
転職先としての注目コンサルと“罠”
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2026年3月31日

AIの進化で「オワコン」化が囁かれるコンサル業界。転職先として盛り上がっている「日系グロースファーム」やFDEなど、キャリア動向を『コンサル業界大研究』著者の渡辺秀和氏に聞く。2026年のコンサル業界で注目のキャリアトレンドとは? <ゲスト> 渡辺秀和|コンコードエグゼクティブグループ 三菱UFJ...
AI時代のキャリア戦略: 2026年に向けたコンサル業界の変革と新たな選択肢
テクノロジーの急速な進化は、あらゆる業界のビジネスモデルや個人のキャリアパスに大きな影響を与えている。特にAIの台頭は、2026年以降のキャリア形成を考える上で避けて通れないテーマである。はたして、キャリアの潮流はどこへ向かうのか。本稿では、キャリアデザインの専門家である渡辺秀和氏の見解に基づき、AI時代におけるコンサルティング業界の現在地、そしてビジネスパーソンが掴むべきキャリアの羅針盤を深掘りする。

Q. 2026年に向けたキャリア形成において、特に注意すべきトレンドは何があるか?
2026年のキャリアを考える上で重要なトレンドは二つ存在する。一つは「AIの進化」、もう一つは転職市場における「スカウトメールの一般化」である。AIの進歩はビジネスモデルだけでなく、個々の職務内容にも変化をもたらし、多くの人が自身の仕事の未来に不安を感じている。また、スカウトメールは一見すると便利なツールだが、その特性を理解せずに利用すると、真の市場価値を見誤り、最適な機会を逸する可能性もある。これらのトレンドを見越した主体的なキャリア形成が不可欠だと言える。
Q. AI時代において「とりあえずコンサル」の動向は今後どうなるのか?
「とりあえずコンサル」という風潮は、AIへの懸念から以前のような盲目的なものではなくなってきたものの、依然としてコンサルティング業界の人気は高い。その背景には、AIが仕事に与える脅威がコンサルタント特有のものではなく、ほとんどのホワイトカラー職に共通するという認識が広がったことが挙げられる。学生たちは「他の業界に行けば安心」というわけではないと理解し、より成長機会を求める傾向がある。

むしろ、企業のAI活用や新規事業開発といった最先端のテーマに携われるコンサルティングファームは、多くのビジネスパーソンにとって魅力的な環境として映る。かつてSAPやSalesforceなどのシステム導入支援を通じてコンサル業界が大きく成長したように、今後は企業のAI導入支援という巨大な需要が生まれるだろう。実際に、OpenAIなどのAIプラットフォーム企業がマッキンゼーなどの大手コンサルティングファームとの協業を進めていることから、AIの普及はコンサル業界に新たな成長機会をもたらすと見られている。
Q. AI時代にコンサルタントが活躍し続けるために求められる能力とは何か?
AIの進化により、従来の「問題解決能力」の捉え方が変化している。AIはデータに基づいた解決策の提示に優れている。しかし、コンサルタントに本当に求められるのは、クライアントが直面している「何を問題とすべきか」という問いそのものを見つけ出し、時にはクライアントの提示した問いを立て直す「問題発見能力」や「アジェンダ設定能力」である。これがAIに代替されない、人間特有の価値だ。
例えば、ある小売店の社長が「挨拶をしない従業員を何とかしたい」と相談した場合を考える。表面的な問題は「挨拶」かもしれないが、優秀なコンサルタントであれば、その背景にある組織風土、人間関係、店長のリーダーシップ、ひいては業績との相関など、根源的な課題を見抜く。社長が真に解決したいのは、組織のあり方であるケースも多い。この「正しい問い」を立てるプロセスこそ、コンサルタントの核となる能力であり、AIには難しい領域だと言える。

今後のコンサルタントの役割は、大きく分けて二つの方向に進化する。一つは、真の課題を設定し戦略を描く「アジェンダ設定型」の戦略コンサルタント。もう一つは、AI導入やDX推進をクライアントと共に伴走し、現場に施策を定着させる「実行支援型」コンサルタントである。特に後者の領域は、企業のAI活用ニーズの高まりとともに産業規模として大きく拡大する可能性を秘めている。
Q. コンサル業界では今、どのような人材が求められ、採用動向は変化しているのか?
コンサル業界の採用は若手中心から大きな変化を遂げている。特に顕著なのは、30代後半から40代のビジネスパーソンの採用が活発化している点である。この背景には二つの要因がある。一つは、AI、M&A、地政学リスクといった多様で複雑な最新のテーマに対応できる「特定の専門性」を持つ人材への需要だ。高い知見と深い洞察を持つ専門家は年齢に関わらず重宝される。
もう一つは、施策の「実行支援」フェーズで必要とされる「事業会社での経験」である。AI導入をはじめとした多くのプロジェクトは、単に戦略を策定するだけでなく、クライアント企業の現場に深く入り込み、定着させることが求められる。この際、事業会社での実務経験や組織運営の苦労を理解している人材は、現場の納得感を醸成し、施策を成功に導く上で非常に高い価値を発揮する。このように、コンサル業界は多角的な経験と専門性を持つ幅広い年齢層の人材を求めているのが現状だ。
Q. ポストコンサルとして今注目すべき新しいキャリアパスとは何か?
ポストコンサルのキャリアにおいて、従来の「同業他社への移籍」「事業会社での経営幹部」といった選択肢に加え、新たな「第三の道」が注目されている。それが「日系グロースファーム」への参画と「日本版FDEモデル」の台頭だ。
日系グロースファームとは、大手ファーム出身の優秀な人材が独立・起業したコンサルティングファーム群を指す。これらのファームは、外資系大手と異なり本国へのロイヤリティ負担がなく、構造的に優位なビジネスモデルを持つ。クライアントには高い品質を維持しつつ比較的低いプロジェクト単価を提示でき、その一方で社員には外資系以上の高給与を還元できるという。円安も追い風となり、外資系ファームから顧客と優秀な人材を奪う形で急速な成長を遂げている。コンサルタント出身者にとって、スタートアップのようなやりがいと、従来のプロフェッショナルファームと同等かそれ以上の収入を両立できる魅力的なキャリアパスとなっている。

もう一つのトレンドは、「日本版FDEモデル」と称される動きである。これは、米国パランティア社のFDE(Forward Deployed Engineer)に代表される、コンサルティングとエンジニアリングの知見を統合し、技術面から戦略立案・実行・定着までを一貫して支援するモデルだ。フラックスなどの企業がこれに該当し、表面的なコンサルではなく、企業のAI活用やDXを根本から解決に導くため、クライアントからの需要が非常に高い。深い技術的専門性とビジネス改革の視点を両立できる人材は、今後日本においてもその活躍の場を大きく広げるだろう。
Q. 大量のスカウトメール時代に、主体的なキャリアを築くためにはどうすべきか?
AIが普及し情報過多の時代において、キャリア形成における個人の主体性は一層重要となる。月に何百件と届くスカウトメールに一喜一憂したり、それに満足したりすることは危険である。スカウトメールはAIによって自動化されている側面も強く、自身の真の市場価値を正確に反映しているとは限らないからだ。受け身の姿勢では、より良いポジションや高収入の機会を逃すだけでなく、選考対策の不十分さから本来であれば合格できたはずの企業に落ちる可能性も出てくる。
キャリアを築く上では、転職エージェントの質も大きく影響する。エージェントの力量によって紹介される案件の質や交渉の進め方が異なり、結果として年収や合否までもが変動するのが現実である。市場トレンドやAIが示す「確率論」に流されるだけでなく、信頼できるキャリアコンサルタントの支援を受けつつ、「自分の価値観や生き様と合致するか」を最終的な判断軸として能動的にキャリアを選択していくことが、AI時代の荒波を乗りこなす鍵となる。