マーケット超分析
イラン情勢の影響は一時的/日本株は遅くとも4月に復活/注目の防衛銘柄23選
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2026年3月19日

月イチで株式相場の解説を行う、「マーケット超分析」の3月回。前編では、今後の相場を展望する。 <出演者> 木野内栄治|大和証券 チーフテクニカルアナリスト 1988年に大和証券に入社。 以来一貫してテクニカル分析業務に従事。 日経ヴェリタス「人気アナリスト」テクニカル部門で1位に輝くこと21回。 ...
イラン情勢の影響は一時的/日本株は遅くとも4月に復活
足元の世界情勢と株式市場の動向は、多くの投資家にとって不安材料となる。中東情勢の緊迫化や株価の変動を受け、マーケットの先行きに迷いを抱く者もいるだろう。本稿では、こうした懸念に対し、過去の歴史的事象やテクニカル分析、そして新たな産業トレンドを基に、日本株市場の展望を考察する。
プロのアナリストが紐解く地政学リスクの性質から、株価下落が一時的な調整に過ぎない理由、さらには次の成長を牽引する注目セクターまで、客観的な視点で解説を進める。投資判断の一助として活用できる情報を以下に示す。

Q. イラン情勢など地政学リスクは、株式市場に長期的な影響を与えるものなのか?
イラン情勢に代表される地政学リスクは、株価変動の主要因となるが、その影響は常に長期化するとは限らない。国際紛争は三つのタイプに分けられる。第一は「超大国同士」の争いであり、直接的な全面衝突は避けられ、結果として代理戦争となり長期化する傾向にある。第二は「非超大国同士」の戦いで、互いに決定打を持たずダラダラと続く。そして第三が今回のイラン情勢に見られる「超大国vs非超大国」の構図だ。

専門家は、第三のケースを「大人と子供の喧嘩」に例え、大国の圧倒的な力により、短期で決着がつくことがほとんどだと指摘する。実際、過去に米国が武力行使したイラク戦争(8年続いたにもかかわらず)の際でも、市場の底入れは約1ヶ月で完了した。つまり、市場はこのタイプの地政学リスクを比較的早期に織り込む特性があるということだ。
ただし、一部の専門家からは、イランを「非超大国」と見なすのは楽観的すぎるとの声もある。イランは地政学的に重要で軍事力も有するため、安易な長期化否定はリスクを伴う可能性もあるだろう。
Q. 日本のエネルギー供給はホルムズ海峡封鎖のリスクにどれほど備えがあるか?
ホルムズ海峡の安全保障は日本にとって重要課題だが、そのリスクは限定的と見る。LNG(液化天然ガス)に関して、日本の中東依存度はわずか11%に過ぎない。主な供給元はオーストラリアやマレーシアであり、調達先が分散されているため、特定海域の閉鎖が即座に深刻な事態を招く可能性は低い。
一方、原油は中東からの輸入依存度が高いものの、日本には約8ヶ月分の国家備蓄がある。これは、有事の際も短期間であればエネルギー供給が維持できることを意味する。WTI原油先物市場も短期的な事態収束を織り込んでおり、市場全体も今回の地政学リスクがエネルギー供給に致命的な影響を与えるとは見ていないようだ。
実際、過去にホルムズ海峡を巡る緊張が高まった際でも、日本株は台湾や韓国と比べて底堅く推移した事実がある。これは、日本が多様な供給ルートと備蓄によりリスクに備えていることを市場が評価しているためであろう。
Q. 足元の日本株安は、全体の上昇トレンドの転換点と見るべきか?
現在の日本株安は、長期的な上昇トレンドの転換点ではなく、一時的な調整局面だと捉えるべきだ。まず、「恐怖指数」として知られる日経平均VIが急騰し、SQ(特別清算指数)算出週の月曜日に底入れするパターンが過去の経験則として確認されている。今回の下落もこのパターンを踏襲しており、むしろ強力な底を形成し、今後の反発が期待される。

次に、日経平均株価の独特な上昇サイクルが存在する。2014年以降、日経平均は高値を3割更新するたびに新たなレンジを形成する傾向にある。今回、市場は終値ベースで52,000円を維持しており、「52,000円から68,000円」という新ボックス相場への移行が確認されたと見る。このパターンに従えば、現在の調整局面を乗り越えれば、目標としていた68,000円へ向かうシナリオは十分にあり得る。
季節性のアノマリーも強気を示唆する。「セルインメイ(5月に株を売れ)」という格言がある一方で、実際には日米株価は例年5月頃まで堅調に推移することが多く、日本株に至っては7月頃まで強い傾向がある。さらに米国での巨額な税還付金が4~5月にかけて市場に流れ込むことも、株価を押し上げる要因となる。このような複合的な視点から、目先の下げはむしろ絶好の押し目買いの機会を提供していると言えよう。
Q. 日本株市場の今後の大きなリスクは為替介入に尽きるのか?
現状の日本株市場にとって、地政学リスク以上に警戒すべき国内要因は、日本政府による為替介入であると指摘される。円安が進行する中、大規模な円買い介入が実施されれば、一時的に円高・株安を招く可能性がある。これは短期間で株価を急落させる潜在的なリスクとして、投資家は常にそのタイミングと影響を注視する必要があるだろう。
しかし、為替介入が日本株の全体的な上昇トレンドを反転させる可能性は低いと多くの専門家は見ている。日本株は現在の円安と国内インフレによって、企業の名目業績や資産価値が底上げされ、全体として株価がサポートされている状況だ。過去の戦争時も株価は大きく下落しにくく、むしろ上昇傾向を示すことすらあった。したがって、介入による一時的な株価変動は、本質的には長期的な「押し目買い」の好機と解釈することもできる。
Q. 今後、注目すべき産業テーマやセクターはどこか?
中長期的に見て、日本の株式市場を牽引する産業テーマは、「経済安全保障」と「先端技術」である。経済安全保障の観点からは、「レアアース・レアメタル」の確保が極めて重要になる。
日本は世界で6番目に広い排他的経済水域を持ち、そこに豊富な海洋資源が眠っている。レアアース関連企業だけでなく、深海のレアメタル開発企業、そしてこれらの希少資源を活用する新越化学工業(高性能磁石などを製造)のような企業群に注目が集まる。日米首脳会談でレアアースの共同開発が議題に上る可能性もあり、その進展次第では関連銘柄が大きく評価されるだろう。

さらに、「防衛関連技術」も新たな成長テーマだ。米国のミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」において、日本の高い技術力が重要な役割を果たす可能性がある。具体的には、既存のミサイルでは迎撃困難な超高速滑空兵器に対抗するため、日本が得意とするレールガン(日本製鋼所などが関連)、ドローンを無力化する高出力マイクロ波技術(日清紡などが関連)、さらにはレーザー兵器など、最先端の防衛技術を持つ企業に期待が集まる。
半導体分野ではNVIDIAが牽引するAI相場が継続し、利益率ガイダンスの低下は会計上の一時的要因に過ぎないことが判明している。NVIDIAが次世代技術として採用する「光電融合」は、チップ内の電力消費を大幅に削減する革新的な技術だ。これは日本にも関連企業が多く、AI時代を支える新たな投資テーマとして浮上している。
Q. 防衛株の動向から、地政学リスクの行方をどのように読み解くことができるか?
防衛関連株は、地政学リスクの「予知能力」を持つとされるユニークな特徴がある。過去の事例として、1994年の北朝鮮空爆計画や2014年のクリミア併合、2018年の北朝鮮巡る緊張、ウクライナ侵攻の際など、紛争が公になる数ヶ月~1年前から、米国の防衛株は市場全体をアウトパフォームしてきた。これは、政府が水面下で防衛関連企業へ発注を増やすなど、来るべき事態に備える動きが、株価に先行して反映されるためと解釈できる。
興味深いことに、直近のイラン情勢に先立ち、米国の防衛株は再びアウトパフォームする動きを見せた。しかし、今年3月に入ってからはその勢いが鈍化し、アンダーパフォームする傾向が確認されている。この防衛株の動きは、市場が今回のイラン情勢を短期的なものとして織り込み、早期に決着すると見ている可能性を示唆する。ポートフォリオに防衛株を組み込むことは、不測の地政学リスクに対するヘッジ手段としても機能し得る。