PIVOT TALK SPECIAL
【エミン・ユルマズ】日本経済は軍需で蘇る。米国との最強タッグ
(1948)
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2026年3月15日

イラン戦争はどんな結末を迎えるのか?アメリカの長期戦略とは何か?日本に80年ぶりの追い風が吹くのはなぜか?エコノミストのエミン・ユルマズ氏に、世界秩序の大転換をテーマに話を聞いた。 <ゲスト> エミン・ユルマズ|エコノミスト トルコ・イスタンブール出身。16歳で国際生物学オリンピックの世界チャンピ...
中東の「世俗化」から日本株「黄金期」へ:激動の世界経済で生き残る投資戦略
世界は今、地政学と経済の大きな転換期を迎えている。中東では宗教と政治の分離が進み、アメリカの外交戦略はインド太平洋地域へと重心を移す。この激動の時代において、日本経済は「80年ぶりの追い風」を受ける新たな黄金期を迎える可能性があるだろう。
現代のハイテク化する戦争の様相、エネルギー問題への対応、そして個人投資家がとるべき戦略まで、世界と日本の未来図を読み解いていく。

Q. 中東の地政学は今後どのように展開すると予測するのか?
アメリカは中東地域を「世俗主義化」させる方向に戦略を転換した。かつてはソ連に対抗するためCIAの「グリーンベルトプロジェクト」を通じてイスラム原理主義を支援し、結果として9.11テロや反米感情といった「ブーメラン」に直面した経緯がある。さらに、イスラエルによるガザ攻撃への支援がイスラム世界の信頼を完全に失わせ、中国のウイグル弾圧に対するプロパガンダも通用しなくなったという現状がある。
このような状況の中、アメリカは中東から宗教色を排除し、世俗化・民主化・資本主義化を推進することで地域の平和と経済発展をもたらすことを目指している。サウジアラビアでの女性の運転解禁やハロウィンの開催はその顕著な兆候だ。この戦略の真の目的は、中東の地政学的な重要性を低下させ、世界経済と紛争の中心へとシフトしたインド太平洋地域に資源と戦力を集中させることにあるだろう。
Q. アメリカの外交戦略はなぜ一貫性があるように見えるのか?
アメリカの外交政策は大統領の個人的な思想ではなく、50年スパンで計画された長期的な国家戦略に基づいている。大統領は、その戦略を着実に実行するための役割を演じる「グッドコップ・バッドコップ(良い警官・悪い警官)戦略」を国家ぐるみで採用していると言える。
ブッシュ元大統領は「悪い警官」としてイラク戦争やアフガン戦争を実施した。その後に就任したオバマ元大統領は「良い警官」として融和的な姿勢をとり、国際社会からのアメリカのイメージ回復を図ったものの、国家の根幹となる戦略は一貫して継続された。
現職の大統領、特にトランプ前大統領は「悪い警官」役を演じているに過ぎず、彼が退任したとしても、彼によって確立された政策の成果は、批判されつつも基本的に維持されるだろう。
対中強硬策や移民政策が良い例だ。トランプ政権で始まった対中関税や輸出規制はバイデン政権でも維持・強化されており、また、移民政策では、メディアで過激な印象があったトランプ政権よりも、オバマ政権下での不法移民国外退去数が多かったという事実は、これらの政策が大統領個人の意向ではなく、超党派的な国家戦略として進められている証拠である。
Q. 現在の日米関係において日本はどのような役割を求められているのか?
現代の戦争はドローンやロボットを多用するハイテク戦に移行した。ソフトウェア開発は得意だがハードウェアの精密製造が不得手なアメリカは、日本の精密機械(プレシジョンマシナリー)技術をこれまで以上に必要としている現状がある。これは日本経済にとって「朝鮮戦争特需」以来となる、軍需分野における巨大な追い風となり得るだろう。
日米、そして韓国を含めた同盟国間で、一つの大きな軍需産業体を形成するチャンスだ。日本はAIの基盤技術など、自国が不得手な分野で無理にアメリカと競争する必要はない。ハリウッド映画では勝てないが、アニメで世界一を誇るように、精密機械や半導体製造装置といった得意分野で圧倒的な優位性を確立すべきである。得意な分野に注力し、国際分業体制の中で日本の地位を確立することが、この激変する世界で生き残る日本の勝ち筋と言えるだろう。
Q. 日本のエネルギー安全保障における最大の課題と解決策は何か?
ホルムズ海峡の封鎖リスクが現実となった今、日本の中東へのエネルギー依存は国家安全保障上、致命的な弱点であることが改めて露呈した。エネルギーの海外依存度が高すぎる現状は、極めて危険な状態である。

国民からの反発は依然強いものの、国土が狭く日照条件も限定的な日本では、太陽光発電に大きな限界がある。短期的かつ合理的にエネルギー自給率を高める唯一の解決策は、原子力発電の再稼働と増設しかない。福島第一原発の悲劇を乗り越え、日本の技術力を結集して「世界で最も安全な原発」を開発すべき時だろう。特に、三菱重工などが開発するコンテナ型の「マイクロ原発」は、万一の事故時にもメルトダウンが起きない設計を目指し、安全性と分散型電源としての可能性を秘めている。これを実用化できれば、タワーマンションや団地の地下に設置する未来の電力網も夢ではない。
もし原発でクリーンかつ安価な電力を安定供給できるようになれば、現状の火力発電に依存する矛盾を解消し、真の意味でのEV(電気自動車)シフトや気候変動対策を強力に推進する大義名分が生まれるだろう。
Q. 日本経済の長期的な展望と円安の影響は?
原油価格の高騰や金融政策変更の可能性といった短期的逆風は存在するが、日本の「黄金期到来」という大きなシナリオは揺るがないだろう。むしろ、1970年代のオイルショックが日本に省エネ技術や「カイゼン」といった新たな価値を生み出したように、現在の危機は日本をさらに進化させるための「ショック療法」と捉えるべきだ。

現在の急速な円安は、日本の製造業を復活させるための日米間の「逆プラザ合意」とも呼べる共同作戦であると見ることができる。ドル建てで見た日本の生産コストは劇的に低下し、海外からの直接投資や工場誘致を強く促進している。これは中国に集中するサプライチェーンを日本や同盟国へと回帰させるための、アメリカからの明確なシグナルだ。アメリカは1ドル150円までの円安を容認しているが、今後はさらに円安を許容する可能性も示唆される。半導体サプライチェーンが集中する日本、台湾、韓国といった地域で、新たな「シリコンリージョン」が形成される可能性も秘めているのだ。
Q. 個人投資家は今後どのような戦略を取るべきか?
今後5年から10年間、日本株はアメリカ株をアウトパフォームすると予想する。世界の投資家は、アメリカの政治的・地政学的な不安定さをリスクとみなし、戦略的要衝である日本へと資金をシフトさせる動きを加速させているからだ。よって、個人の投資戦略としては、今後の成長が期待できる日本株をポートフォリオの中心に据えるのが最適解と言えるだろう。

一方、ゴールドは資産を積極的に増やすための「攻め」の投資対象ではない。ゴールドはインフレや通貨価値の毀損から資産を守るための「守り」の保険であり、過去数年の上昇局面があったとしても、毎年同じように高騰するわけではない。ゴールドの価格は、株価が大きく動いている間でも数年間、場合によっては10年間も停滞することがあるほど、値動きの特性が極端な性質を持つ。ポートフォリオの一部(例:資産全体の20%程度)に保険としてゴールドやシルバーを組み込み、資産の守りを固めるのが賢明な使い方だろう。主力はあくまで日本株を中心とした株式投資に置くべきである。