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【徹底解説】ウクライナで見た、最新ドローン兵器
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2026年3月11日

イラン戦争で大量に飛び交うドローン兵器。なぜドローン兵器は戦場のゲームチェンジャーとなっているのか?日本にもその脅威は及ぶのか?ウクライナを訪れたテラドローンの徳重徹CEOに、ドローン兵器の最前線を解説してもらった。 <ゲスト> 徳重 徹|Terra Drone CEO 九州大学を卒業後、アリゾナ...
ドローンが戦争の常識を覆す:迫りくる日本の防衛危機
現代の戦争は劇的に変貌している。かつてのような大規模な地上戦や空対空の激しいドッグファイトだけが戦場を彩るわけではない。今や戦場の8割がドローンによって繰り広げられる「ドローン戦争」の時代に突入している。テラドローンの徳重徹氏が語る最前線の実情は、日本の防衛戦略にも深刻な警鐘を鳴らしている。
米国でのDJI製ドローンの使用禁止、ウクライナがわずか15万円のFPVドローンで15億円の戦車を破壊する圧倒的なコスト非対称性、そして航続距離2000kmに及ぶ安価な自爆ドローン「シャヘド」の脅威など、事態は従来の常識では測り知れない。本稿では、激動するドローン戦の現実と、日本が直面する防衛の課題について深掘りする。

Q. ドローン戦争の現状はどうなっているのか?
現代戦におけるドローンの影響力は計り知れない。ロシア・ウクライナ戦争では、戦場の約8割がドローンに関連するといわれ、「ドローン戦争」という言葉が現実を表す。ウクライナでは年間5000台だったドローン生産能力が、戦時下において年間400万台にまで跳ね上がったという事実は、ドローンの持つ戦術的・戦略的価値が極めて高いことを示している。
国際的な情勢もドローンの重要性を浮き彫りにする。米国では、安全保障上の懸念から中国製DJIドローンの使用を禁じる動きが加速しており、ドローン業界全体に大きなルールチェンジをもたらしている。日本でも同様に、経済産業省が国産ドローンの内製化を推進し、設備投資に対する補助金を支給するなど、自律的な防衛産業の育成を急ぐ動きがある。これらは、各国がドローン技術の主導権と自国製サプライチェーンの確保を目指す地政学的な動向の表れだと言える。

Q. 従来の戦争の常識がドローンによってどう変わったのか?
従来の戦争では「戦車には戦車、戦闘機には戦闘機」というように、同等のコストと技術を持つ兵器同士がぶつかり合うのが一般的だった。しかし、ドローンはこの常識を根本から覆している。
例えば、約15万円のFPVドローン数機で、5億円から15億円もする戦車を破壊できる現実がある。これは「コスト非対称性」と称され、戦争の費用対効果を大きく歪める。この非対称性は戦術を激変させ、高価な主力兵器の運用方法に再考を促しているのだ。
兵器開発のスピード感も、従来の防衛戦略を圧倒する。伝統的な防衛兵器の開発や配備には10年、20年という年月がかかるが、ウクライナの戦場ではドローンの技術が3ヶ月単位で急速に進化し、お互いに対応策を打ち出し合っている。この極めて速い技術革新のサイクルに追従できなければ、たちまち戦場では劣勢に立たされることになる。
Q. ウクライナの戦場ではどのような技術革新が起きているのか?
ウクライナの現場では「やっつけだが実戦的」な工夫が凝らされている。例えば、遠方までドローンを飛ばすために、1機のドローンを中継アンテナとして使用し、別の攻撃ドローンの通信距離を延長する。さらに、長距離を飛ぶ固定翼ドローンが、目標地点の近くまで小型の攻撃ドローンを運搬する「親子ドローン」といった運用も行われている。これらは限られた資源の中で、最大の効果を出すための現場の知恵と創意工夫の結果だと言える。
また、「ジャミング競争」と呼ばれる電波妨害と対策のイタチごっこも激化している。ジャミングでドローンは落ちるという通説に対し、ウクライナは周波数を瞬時に切り替える技術で対抗。さらには、究極の対策として、最長30~40kmにも及ぶ光ファイバーケーブルでドローンを有線操作し、電波妨害を完全に回避する兵器も実用化している。

ドローンの概念は空中にとどまらない。地上ではUGV(無人地上車両)が弾薬や食料の運搬、負傷兵の搬送に用いられ、海上ではUSV(無人水上艇)がロシア艦隊に壊滅的な打撃を与えている。特に安価なUSVが高価な軍艦を攻撃できるという事実は、海洋国家である日本の防衛にとっても極めて重要な示唆を与える。
Q. 自爆ドローン「シャヘド」がもたらす新たな脅威とは?
イラン製の自爆ドローン「シャヘド136」は、時速185kmと比較的低速でローテクだが、その真の脅威は別にある。まず、約500万円という驚くほど安価な価格で大量生産できること。次に、最大2000kmにも及ぶ長大な航続距離だ。
シャヘドは安価であるため、これを迎撃するために1発1億円から2億円もする高価なミサイルを使用すると、防御側が経済的に疲弊する「経済的な消耗戦」が始まる。高価な兵器が尽き果てるか、国民が疲弊するか、あるいは財政破綻を招くかといった深刻な問題を引き起こす。
ロシアはイランからシャヘドの技術供与を受け、国内工場で量産する「内製化」を成功させている。その結果、ウクライナの主要都市に対し、毎月5000機ものシャヘドによる飽和攻撃を実行しているのが現実だ。これは、有事の際に自国で兵器を製造・量産できる体制が、いかに国の防衛にとって不可欠であるかを示している。

Q. 高価なミサイルに代わる新たな迎撃手段はあるのか?
高価なミサイルによる迎撃が持続不可能な問題に対し、ウクライナは新たなイノベーションを生み出した。それが、シャヘド迎撃に特化した「迎撃ドローン」である。
わずか30万円(約2000ドル)で製造されるこの迎撃ドローンは、最高時速300kmの高速飛行が可能だ。時速185kmのシャヘドを上回る速度で追尾し、撃墜できる性能を持つ。つまり、500万円のシャヘドに対し、30万円のドローンで迎撃するという、防御側が圧倒的に有利なコスト構造を確立したのである。
この迎撃ドローンは2023年10月頃から実戦に投入されており、限定的ではあるものの既に効果を上げている。この成功は、さらなる技術革新とドローン対ドローンの技術競争を加速させている。今後は、ロシアがより高速なシャヘドを開発する可能性があるなど、イタチごっこは続いていくものと思われる。
Q. ドローン戦争時代、日本の防衛にはどのような課題があるのか?
日本は「海に囲まれているから安全だ」という神話に囚われてはならない。シャヘドのような長距離ドローンは、2000kmもの距離を飛行できる。これは周辺国から日本の主要都市を容易に攻撃しうる能力があることを意味する。ウクライナや中東での事例は、決して対岸の火事ではないのだ。
現代戦を生き抜く鍵は、「大量・安価・アジャイル」な防衛戦略にある。高価な最新鋭兵器も重要だが、それだけでは足りない。安価な兵器を大量に、そして3ヶ月といった短期間で開発・改良できるアジャイルな体制を構築しなければならない。この分野においては、スタートアップが持つ技術力とスピード感が、大企業よりもはるかに重要な役割を果たすだろう。

ドローンの量産体制は、有事が起こってから急に準備できるものではない。平時から国内のサプライチェーンを整備し、自国で必要なドローンや迎撃手段を「内製化」できる体制を確立しておくことが不可欠だ。この備えがなければ、有事の際に高価なミサイルなどの防衛資産はたちまち枯渇し、国防は立ち行かなくなるだろう。ドローン戦争の現実に即した迅速な行動と意識変革が、今、日本には求められている。