教育新常識
WBC侍JAPAN・近藤健介の父が語るアスリート子育て論
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2026年3月11日

福岡ソフトバンクホークス・近藤健介選手が天性の努力家になった背景には、父の熱い子育て論があったー。 幼少期の習い事の考え方、親の関わり方など、子どもが目標に向かって努力していくために親ができることを考える。 <ゲスト> 近藤義男|福岡ソフトバンクホークス 近藤健介選手の父 中学校の教員・教頭、パ...
WBC選手を育てた父が語る「育ち方」の新常識: 子どもが自ら目標を見つける環境づくり
子どもが自ら目標に向かって走り出す環境をどう作るのか? これは多くの子育て世代が抱える悩みの一つだ。福岡ソフトバンクホークスの近藤健介選手をプロ野球界のトッププレイヤーに育て上げた父・近藤義男氏が、その秘訣を語る。
中学校の教員・校長として、また日本中学生野球連盟の専務理事として、長年教育現場に携わってきた近藤氏の言葉は、単なる成功談に留まらない。彼の経験と哲学は、現代の子育てに新たな視点を提供する。本記事では、近藤氏が提唱する「育ち方」という概念に基づき、子どもの好奇心と向上心を引き出すための「新常識」をQ&A形式で深掘りする。

Q. 子育てにおいて最も大切な考え方とは何か?
近藤義男氏は、子育てで最も重要なのは、親がどう「育てるか」ではなく、子どもが自ら「育つ」環境を整えることだと語る。
「世界一の侍選手の育て方」という著書を出版した際、出版社からは「育て方」というタイトルを提案されたが、近藤氏自身は「育ち方」を希望したという。同じ親に育てられても兄弟で全く異なる成長をするケースが典型的であるように、子どもを型にはめて画一的に「育てる」という考え方には限界がある。
親の役割は、子どもが目標を見つけ、自らその目標に向かって成長していくプロセスをサポートすることにある。それは、特定の技術や知識を教え込むことではなく、子どもが自由に探求し、挑戦できる土壌を育むことにほかならない。親は子どもを「どうしたい」という押し付けではなく、「どうなるだろう」という観察と受容の姿勢で向き合う必要がある。
Q. 子どもが「やめたい」と言い出した時、親はどう対応すべきか?
近藤氏の提案は、「やめ癖を恐れるな」である。近藤健介選手も幼少期には剣道、水泳、バドミントン、テニスなど多くの習い事を経験し、その多くを辞めている。
例えば剣道では、基礎の雑巾がけがつまらない、やりたいことと違うという理由で辞め、テニスでは上の級に上がれず、楽しさを感じられなくなったからという理由で辞めた。彼にとっての習い事は、あくまで「遊びの延長」であり、その根底には「楽しいかどうか」という基準があったのだ。

子どもが「やめたい」と口にする時、それは必ずしもネガティブな「投げ出し」ではない場合が多い。大人が使う「やめる」とは意味が異なり、親の反応を試していたり、飽きたから別のことを探したいという好奇心の発露であることもある。
親は子どもの言葉の表面だけを捉えるのではなく、その背景にある真意を理解しようと努めるべきだ。無理強いしても本人の意欲は育たず、最終的な成長には繋がらない可能性がある。むしろ、新たな興味の対象を見つける機会を尊重し、様々な経験をさせることこそが、子ども自身の成長の機会を奪わないことに繋がる。
やめる理由が「つまらない」「楽しくない」場合は尊重する。
子どもにとっての「やめる」は大人と意味が違う可能性を考慮する。
無理に続けさせるより、次の興味を探す機会を与える。
多くの経験が後の能力に繋がるという長期的な視点を持つ。
Q. 子どもの運動能力を伸ばすために、幼少期に意識すべきことは何か?
近藤氏は、子どもの運動能力の基礎を築く上で「ゴールデンエイジ」と呼ばれる期間の重要性を指摘する。
具体的には、5〜8歳の「プレゴールデンエイジ」と9〜12歳の「ゴールデンエイジ」では、心肺能力よりも神経系が大きく伸びる時期である。この時期に特定のスポーツに特化させるよりも、多種多様な身体活動を経験させることが、将来的に高い運動能力を獲得するための土台となると教育学的な知見からも語っている。
近藤健介選手が本格的に野球を始めたのは小学校4年生と比較的遅かったが、それまでに様々な習い事や外遊びを通して、多角的な神経系の発達を促す経験をしていた。この時期の「遊び」を通して得られる身体感覚こそが、その後の専門的なスポーツパフォーマンス向上に大きく寄与する。一つの競技に縛りつけず、子どもが楽しめる様々な活動をさせることで、柔軟性と応用力のある運動能力が育まれるのだ。
Q. 親は子どもの夢をどのようにサポートすべきか?
近藤氏自身も、息子の健介選手を野球選手にしたいという思いを抱いていたが、直接的に野球を強制することはしなかった。
健介選手が野球を始めたのは小学4年生であり、それまではバッティングセンターに連れて行ったり、野球に近い遊びをしたりすることで、彼自身の興味をじっくりと醸成していった。これは、子どもが「心からやりたい」と思う瞬間まで待ち、その情熱を最大限に引き出す「戦略的アプローチ」といえる。自らの意思で始めた活動こそが、真の情熱と持続力に繋がることを、近藤氏は教育者の視点からも理解していたのだ。

近藤健介選手と大谷翔平選手は、日本ハム時代からの旧知の仲で、大谷選手が近藤家に二度宿泊するほどの親交があったというエピソードも語られた。世界的なアスリートである大谷選手もまた、非常に礼儀正しい人物であったと近藤氏は述べている。これは、卓越した能力だけでなく、人間性が成功に不可欠であることを示唆している。親として子どもがその道を極めるための「環境」を提供する姿勢こそが、彼らが自主的に高みを目指す力を育む。
Q. 「勉強」ではなく「学び」とは具体的にどういう意味か?
近藤氏は、多くの子どもが「勉強」を辛いことと捉えがちである現状に対し、「学び」という言葉を使うことを推奨する。かつて日本では「勉強」が「勘弁してください」という意味で使われた歴史があるほど、苦しい労働や困難な経験を意味することもあった。このような言葉の持つ負のイメージから離れ、子どもたちに知的好奇心を満たす「学び」の楽しさを伝えるべきだと近藤氏は訴える。
学校の宿題などの「しなければならないこと」はきっちりこなしていた健介選手も、自ら積極的にガリガリと自主学習するタイプではなかったという。
「学ぶこと」は、人が生涯を通じて自己成長を続ける上で不可欠な営みである。しかし、テストの点数を取るための知識の詰め込みでは、子どもたちの本質的な好奇心や向上心の芽を摘んでしまう可能性がある。親は、子どもが「なぜ?」と問い、新たな発見に目を輝かせる瞬間を大切にし、その知的な探求をサポートすることで、彼らが自ら進んで「学び」を深める意欲を引き出せるのだ。
Q. 子どもの好奇心や向上心を育む上で、親の役割は何か?
近藤氏は「子どもの『好き』にとことん付き合う」ことの重要性を説く。子どもの向上心や成功体験は、何かに熱中し、それがうまくいったり、周りから認められたりする中で育まれる。遊びや学びの中で、そうした「成功体験」の機会がいつどこに転がっているか、親には分からないものである。

保育園や学校への道のりでも、子どもにとっては立ち止まって発見することばかりだ。親が効率を重視して「早くしなさい」と急かすことは、子どもの発見や好奇心の芽を摘んでしまう可能性がある。時間は有限ではあるものの、可能な限り子どものペースに寄り添い、彼らが熱中していることに一緒に付き合う姿勢が求められる。
親は子どもの行動を「良いか悪いか」「危ないか危なくないか」と評価する視点だけでなく、その純粋な好奇心を「楽しむ」視点を持つべきだ。そうすることで、子どもは自己肯定感を高め、次の挑戦へと意欲を燃やす。子どもの成長を信じ、時に我慢し、常に子どもの好奇心に寄り添うことこそが、親に求められる最も大切な役割である。