PIVOT TALK ECONOMY
人口減少でタワマンは「廃墟化」するか
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2026年3月9日

迫り来る人口減少時代は、東京・大阪・名古屋も例外ではない。経済学者の森知也氏は、2030年から東京も人口減少に転じ、将来的に大都市のタワマンは「廃墟化」する可能性を指摘する。人口予測の観点から、迫りくる日本経済の将来を聞いた。 <ゲスト> 森知也|経済学者 ペンシルバニア大学大学院 地域科学研究科...
タワマンは「廃墟化」するか?人口減少時代の東京・大阪・名古屋の未来
人口減少と超高齢化の波が日本を襲う中、都市のあり方も大きく変容しようとしている。特に大都市圏、中でも東京、大阪、名古屋の未来は安泰とは限らない。果たして都市部のタワーマンションは本当に価値を保ち続けるのか、あるいは「廃墟」と化す運命にあるのか。都市経済の専門家・森知也氏の分析から、見過ごされがちな日本の都市と不動産市場が直面する現実を探る。

Q. 日本の人口減少と超高齢化は国家にどの程度の危機をもたらすのか?
日本の人口減少はすでに避けられない現実である。このまま推移すれば100年後には国として成り立っているかすら不透明な、極めて厳しい未来が予測される。人口は激減し、わずか数百万人の超高齢者たちが住む社会になる可能性があるのだ。現在のニュージーランドとほぼ同じ人口規模になるという見方があるが、その内情は全く異なる。若者が多いニュージーランドに対し、未来の日本は極端に高齢化し、社会の活力を失う危険をはらんでいる。
これは単なる人口数の問題ではなく、社会を支える「人」の質的な変化を意味し、日本の経済や社会システムの持続可能性に根本的な問いを投げかける。
Q. なぜ都心のタワーマンションは将来「廃墟」になると言えるのか?
人口減少が進む都市において、タワーマンションが将来「廃墟」になる可能性は高い。この予測の背景には、大きく分けて三つの要因が存在する。第一に、都市の内部における「分散化」の進行だ。

交通インフラの充実やリモートワークの普及により、都心部に密接して暮らす必要性が薄れ、人々は郊外へと住まいを求めるようになる。
結果として、東京のように都市全体の人口は増えても、中心部の人口密度はむしろ平坦化していく傾向にある。このような状況で、高層建築をさらに積み上げるメリットは乏しい。コミュニケーションの難しさなど、高層居住特有のデメリットも顕在化するだろう。
第二の要因は、主要な購買層の激減である。タワーマンションの主要な購入層である30歳から45歳までの人口は、東京圏でも2075年には現在の6割程度にまで減少すると予測される。今、建設されているタワーマンションが築50年を迎え大規模修繕が必要になる頃には、この市場自体が大幅に縮小している可能性が高い。その時期には資産価値も下落し、巨額の修繕費用を負担するインセンティブが失われることで、管理不全に陥りやすい。これが最終的に廃墟化へ繋がるのだ。
第三に、廃墟となった際の社会的影響だ。地方のリゾートマンションが廃墟となっても、人目に触れにくいことが多い。しかし、都市のど真ん中にそびえ立つタワーマンションが廃墟化すれば、その影響は甚大だ。それは単なる物理的な廃墟にとどまらず、都市の衰退を象徴する「存在感ある廃墟」として社会に大きな心理的、経済的インパクトを与えることになるだろう。このような未来を考えれば、ペアローンを組んでタワマンを購入することは、極めてリスクの高い選択と言える。
Q. 東京の不動産市場はいつまで活況が続くのか?
現在、都心部のマンション価格は高騰を続けているが、その活況には陰りが見え始めている。マンション市場には投機的な側面が強く、市場の実態を歪めがちだ。しかし、真の実需を反映するとされる「戸建て」の価格推移を見ると、東京23区を除けば2023年以降すでに頭打ち、あるいは下落に転じている地域も存在する。特に京都では戸建て価格が下落に転じ、マンション価格も横ばい状態だ。
これは、都市の周辺部から価格の下落が始まる「周辺からの崩壊」の兆候と見られる。今後、この波が中心部にも及ぶだろう。
東京の人口も永遠に増加するわけではない。予測では、東京の人口は2025年にピークを迎え、2030年までには減少に転じるとされている。地方からの人口流入により人口減少の影響を最後に受ける大都市であっても、この流れからは逃れられない。多くの都民は未だ人口増加局面の恩恵しか経験していないため危機感が薄いかもしれないが、一度人口減少が明確になれば、市場心理は一気に冷え込み、価格下落が加速的に進む可能性が高い。どんなに楽観的な仮定を置いても、東京が現在の人口規模を維持できるのは2050年が限界であると専門家は指摘する。今のうちに不動産を購入する際は、ローンを払い終える頃の市場状況を冷静に評価する必要がある。
Q. 人口減少時代に都市はどう変容すべきなのか?「正しい縮小」とは何か?
人口減少社会における都市開発において重要なのは、「高く積まない」という原則である。タワーマンションのように一度建てると改変が極めて難しい大規模で硬直的な建築物は、将来の都市の縮小や機能変更に柔軟に対応できないため、大きな負債となる恐れがある。これからの都市に必要なのは、後から形を変えやすい低層で柔軟な都市開発であり、これこそが「正しい縮小」への道だ。
良い手本として、景観保護のために高さ規制を設け、低層の街並みを維持しているヨーロッパの都市が挙げられる。これら都市は、必ずしも人口減少を直接経験してきたわけではないものの、柔軟な構造は人口変動に対応する余地を残している。都市にも「終活」のような視点が必要であり、改変に莫大なコストをかけない開発戦略こそが、持続可能な未来へと繋がるだろう。
Q. 大阪や名古屋はどのような未来を迎えるのか?
高層ビルによる再開発が盛んな大阪や名古屋は、東京よりも早く人口減少と高齢化の影響を受け、都市全体が「老化」していく未来が待つ。これは突然の崩壊ではなく、
じわじわと静かに進行するプロセスだ。気づいた時にはすでに手遅れで、インフラ維持コストが膨大になり、都市の活力が失われ、高齢者ばかりの街となる可能性が高い。このような未来は、やがて東京が迎える未来の「予行演習」とも言えるだろう。

この課題に対し、行政側からの規制も視野に入れるべきだ。神戸市はタワーマンションの建設に規制をかける動きを見せており、これは将来の負担を考えた賢明な判断と言える。一度、高層建築を増やしてしまうと、後戻りは非常に難しい。人口減少という不可逆な未来を見据え、現在の高層再開発のトレンドを転換し、
低層集積に戻すなど、より柔軟で人間中心の都市づくりへと舵を切る必要性に迫られている。
Q. 人口減少時代に個人や社会は何をすべきか?
個人レベルでは、将来を悲観して性急に居住地を移す必要はないが、大きな社会潮流として人口減少が不可避である事実を理解することが重要だ。この流れを踏まえ、国や自治体はより持続可能な都市を選び、そこにインフラやサービスを「選択と集中」していく戦略が求められる。全国すべての都市でコンパクトシティ化を目指すのは非現実的であり、生き残る可能性が高い都市を見極め、資源を集中させることで、社会全体のコストを抑制し、緩やかな縮小を目指すべきだ。

現在の日本に約200ある人口3万人以上の都市、すなわち生活インフラが最低限整うとされる都市は、2100年には半分に、2200年にはわずか54にまで激減すると予測される。この結果、国土はスカスカの「虫食い状態」となり、都市間の距離が大きく広がり、多くの地域で生活基盤へのアクセスが困難になるだろう。このような未来に対して、個人は「小さな変化の積み重ね」によるソフトランディングを心掛けるのが賢明と言える。
人口減少の根源には、現代社会における「個人主義の先鋭化」がある。個人の権利意識が高まるにつれ、結婚や子育てといった長期的なパートナーシップの維持や合意形成が難しくなり、現行の制度のままでは出生率の向上は困難だ。多くの人々は「子供を1人は持ちたい」と願う一方で、人口維持に必要な「2人以上」を望む動機に乏しい。この状況を乗り越えるためには、結婚に縛られない多様なパートナーシップや、選択的シングルペアレントへの公的支援など、社会全体で「家族の定義」を根本から見直す時期に来ている。人口減少を受け入れ「豊かな縮小」を目指すか、それとも社会構造自体を変革してでも人口維持を目指すか。この問いは、私たち一人ひとりの想像力と決断に委ねられている。