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【中国の再エネ 世界シェアの現状】AI開発競争と電力問題
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2026年2月26日

世界的に脱炭素技術の圧倒的なシェアを誇る中国。発電量はアメリカの2倍・発電容量は3倍。中国の再エネ拡大の理由とは。李雪連氏に中国の再エネ覇権について聞いた。 <ゲスト> 李雪連|丸紅経済研究所 上席主任研究員 IT企業を経て2005年に丸紅入社後 丸紅経済研究所にて主に中国・東アジア商品・エネルギ...
中国「電気国家」の実力と課題:AI時代を席巻する再エネ覇権
人工知能(AI)開発競争の激化に伴い、世界中でデータセンターの需要が急増している。この未曽有の成長は、膨大な計算資源とそれに伴う電力消費量の劇的な増加をもたらした。結果として、電力の安定供給は、AI時代の国家戦略において避けて通れない最重要課題として浮上している。
国際情勢が不確実性を増す中で、経済性や安全保障の観点から各国は岐路に立たされている。中でも「電気国家」として世界市場に多大な影響力を持つ中国は、独自の戦略でAI時代を席巻しようと画策している。本稿では、その中国の戦略と課題、そして日本を含む各国が直面する現実と、今後の取るべき方向性を深掘りする。

Q. AI開発競争の勝敗を分ける上で電力はどの程度重要なのか?
AI開発競争において、かつては計算資源そのものが重要であったが、現在ではそれを支える「潤沢な電力の確保」が勝敗を分ける決定的な要素に変化した。世界各地でデータセンターが急速に増加しており、その電力需要は過去の常識をはるかに超えている。
特に米国のような巨大なデータセンターが急増する地域では、これまでの電力供給余力では対応しきれない状況にある。今後、AIの進化が加速するにつれて、電源の確保は開発の進捗を左右する決定的な制約要因となり、もはやデータセンターの建設計画は、電源の確保と一体で考えなければならない時代に入っていると言える。
Q. 米中における電力事情とAI開発戦略にはどのような違いがあるのか?
米国は巨大データセンターを前提としたAI開発を進める一方、その膨大な電力消費が供給不安のボトルネックとなりつつある。電力供給に余裕がない中で、化石燃料や原子力発電所の建設には時間を要し、電力への懸念が急速に高まっている。さらに、老朽化した送電網の問題も指摘されている状況だ。

一方、中国は二つの異なる戦略でAI時代の電力問題に対処しようとしている。第一に、石炭火力発電所がまだ潤沢にあり、それに加えて世界最大の再生可能エネルギー(再エネ)設備を有するため、電力供給は米国ほど厳しくない。第二に、米国のように計算資源やエネルギーを大量消費する方式だけでなく、省電力・省エネルギー型のデータセンターやAIモデルの開発を模索するアプローチを取っている。中国のAI開発競争の現状は、米国の電力不足問題とは一線を画す展開となっているのだ。
送電網に関しては、先進国共通の課題が存在する。米国のような先進国が長年使用してきたインフラの「老朽化」に悩む一方で、中国の送電網は比較的あたらしいが、国営企業による運営のため接続の非オープン性や国の予算の制約といった「制度的な問題」を抱え、必要な増強が思い通りに進まないという課題に直面している。
Q. 中国は世界の再生可能エネルギー市場においてどの程度の支配力を持つのか?
中国は世界の再生可能エネルギー市場において圧倒的な支配力を確立している。太陽光パネルの主要原料であるポリシリコンから最終モジュールに至るまで、全製造工程の約7~8割のシェアを握る。さらに、蓄電池や電気自動車(EV)の製造でも約7割を占め、クリーンエネルギーの根幹を支える。
素材産業に目を向ければ、鉱物資源の精錬工程でも中国の存在感は際立つ。銅の精錬工程の約半分、そしてレアアースにおいては9割以上のシェアを誇るのだ。この「川上から川下まで」垂直統合されたサプライチェーンによって、中国は世界市場に「早くて安い」製品を供給することを可能にした。

特にこの「早くて安い」中国製再エネは、インフラ整備を急ぐ新興国や、電力需要が急増するデータセンターにとって大きな解決策となっている。従来の石炭火力や原子力発電所が建設に数年から10年単位の時間を要するのに対し、中国製のメガソーラーであればわずか1~2年で稼働可能であるため、安全保障上の懸念があったとしても、経済性を優先せざるを得ない国々にとって不可欠な選択肢となっていると言える。
Q. 各国は経済性と安全保障のバランスをどのように取るべきと考えているのか?
安価で魅力的な中国製製品の誘惑と、中国への過度な依存がもたらす安全保障上のリスク。この二つの間に挟まれ、世界各国は常に難しい舵取りを迫られている。「経済性」と「安全保障」という相反する国益を天秤にかけながら、揺れ動くのが現状だ。
例えば、欧州の動向はその複雑さを象徴している。米国が同盟国としての役割において不安定さを見せる中、欧州はデータ安全保障といった国家の根幹に関わる分野では譲歩しない構えだ。しかし、防衛産業との関連性が低い再生可能エネルギー分野では、中国との経済的結びつきを再強化する「寄り戻し」の動きが見られる可能性もある。これは米中対立という単純な二元論では語れない、多層的な国際関係が形成されつつあることを示している。
一方、新興国においては、中国製品の「安さ」と「速さ」という圧倒的な価格競争力が最大の魅力である。たとえ各国がアンチダンピング課税や関税などの対抗措置を講じたとしても、中国製品と他国製品との価格差は容易に埋まらないのが現実だ。このため、特にコストを重視する新興国市場において、中国製再エネからの「デカップリング(切り離し)」は非現実的であり、結果として中国の影響力は一層強固になり続ける見込みがある。各国は、経済的な効率と地政学的なリスクという複雑な板挟みの中で、国家の針路を模索していると言えよう。
Q. 中国経済が抱える光と影、特に新興産業の過剰供給問題への政府の対応は?
中国経済は、まさに「光と影」が混在する複雑な局面を迎えている。「影」の部分としては、人口減少、長引く不動産不況、そして若者の失業率の高さに起因する個人消費の低迷が挙げられる。これらが投資の伸び悩みと相まって、経済運営を困難にしているのは事実だ。
しかし、「光」の側面も強烈に輝いている。再生可能エネルギー、電気自動車(EV)、蓄電池という「新三種の神器」に加え、人型ロボットなどの最先端テック分野では、シリコンバレーを凌駕する可能性を秘めた新興産業が躍動している。これらの新産業が現在の中国経済の成長を牽引しているのは疑いようがない。
ところが、その「光」たる新興産業ですら課題を抱えている。地方政府が我先にと産業誘致競争を繰り広げた結果、低付加価値な製品における重複建設が多発し、深刻な「過剰供給」問題が顕在化した。この過剰供給は、世界市場での価格破壊を引き起こし、各国の貿易摩擦の要因となっているのだ。
この状況に対し、中国政府は対策に乗り出した。政府は、過剰供給是正のための「3点セット」政策を打ち出している。第一に、ポリシリコンなどの生産量に対する「生産調整」を実施する。第二に、地方政府による過剰な産業誘致策を抑制する。第三に、特定分野での「輸出許可制」を導入し、輸出をコントロールすることで需給バランスの改善を図る方針だ。これらの政策の効果が今後、世界市場の供給体制に大きな影響を与えることになるだろう。
Q. 日本のビジネスパーソンは中国の電力覇権とどう向き合うべきなのか?
日本のビジネスパーソンは、中国が構築した「電気国家」という現実を深く理解し、その上で戦略を構築する必要がある。「作る側」の日本企業は、価格競争で中国と戦うことは極めて難しい。そのため、中国とは異なる独自の強みを活かし、「棲み分け」戦略を進めるべきだ。例えば、従来のシリコン系太陽光パネルは中国の独壇場であるため、日本はペロブスカイト太陽電池のような次世代型技術や、フィルム型といった新たな用途を持つ技術開発に注力する必要があるだろう。風力発電分野でも、中国が得意とする小型・中型の陸上風力とは異なり、日本が優位性を持つ大型の洋上風力発電に注力するなど、技術的な得意分野を明確にすることが肝要だ。

「使う側」としては、中国式再エネエコシステムの利点を戦略的に活用する視点も持つべきだ。世界中でデータセンターが急増する中、中国が提供する「不安定な再エネ+それを安定化させる蓄電池」という安価で迅速に導入可能なエコシステムは、特に送電網が未整備な新興国や、電力インフラの課題を抱える地域での事業展開において有効な解決策となり得る。日本企業は、これを自社の海外事業や新技術導入のオプションとして検討すべきであろう。
今後の主戦場となるのは、欧州の環境規制に適合した「グリーン製品」の市場である。グリーン水素、グリーンアンモニア、グリーンスティールなどの市場では、中国企業と日本企業の間で激しい競争が予想される。中国は欧州市場を強く意識し、再エネを利用した製品作りを強化している。日本企業がこの新たな市場で優位に立つためには、製品の「グリーン度」を高め、環境性能を競争力に変える戦略が不可欠となる。脱炭素への取り組み自体が企業の国際競争力に直結する時代が到来しているのだ。