
【後藤啓介 特別インタビュー】2034年W杯優勝の青写真
後藤啓介が明かす「2034年W杯優勝」の青写真。ブンデスのオファーを断った真意とは?
日本サッカー界に新たな風を吹き込む大型ストライカー、後藤啓介。彼は単なる点取り屋ではない。ストライカーながら「ボランチもやりたい」と語る異色のサッカーIQ、そして目の前のチャンスを確実に掴む類まれな能力は、若くして欧州で結果を残し続ける彼の大きな原動力となっている。なぜ彼は「2034年W杯優勝」という壮大な目標を掲げ、その実現に向けブンデスリーガからのオファーをも断ったのか。その深層にある哲学と、ピッチ内外で垣間見える「3つの顔」に迫る。

Q. ストライカーでありながらボランチもやりたいという意識は、プレースタイルにどのように影響しているか?
私は長身という点を含め、これまでの日本にはいなかったタイプのストライカーである。海外移籍を機にフォワードとしての道を歩むことを決めたが、いまだにチーム状況次第ではボランチもできると思っている。この視野の広さが自身のプレースタイルを豊かにしているのかもしれない。
特に成長を実感したのは、シント=トロイデン加入後初ゴールを決めた場面であった。以前は理想のタイミングでボールを求め、ニアに早く入りすぎる癖があった。しかしその時は、ボールホルダーの状況を冷静に判断し、一度入りすぎた位置から自分でスペースを作り直してゴールを決めることができたのだ。
理想のパスが来ない状況でも、周りのせいにするのではなく、自らの「動き直し」でチャンスを生み出す思考へと変わった。フィジカルが発展途上な中で、相手に触れられず簡単にゴールを奪うためのクレバーな戦略であり、これがストライカーとしての大きな成長だと感じている。
Q. アンデルレヒトでの苦難を乗り越え、シント=トロイデンへ移籍した理由と、Jリーグでの経験の価値をどう考えているか?
アンデルレヒト時代はフィジカルやベルギーサッカーのスピード感に慣れず、監督からの信頼も得られなかったため出場機会に恵まれなかった。当時は監督交代の多さも影響し、コミュニケーション不足も苦しかった要因の一つだ。
その後、W杯出場を見据え「結果」を出す環境を求めてシント=トロイデンへの移籍を決めた。日本人選手が多く、チーム全体がリスペクトを持って接してくれるシントでは、円滑なコミュニケーションでプレーに集中できた。特に伊藤涼太郎選手のようなパサーがいれば自身の得点能力を最大限に引き出せると確信し、より確実な成長を選んだ。
若い選手にとって海外挑戦の前にJリーグでプロの経験を積むことは極めて重要である。プロのリズム、強度、年上の選手や監督とのコミュニケーション方法を日本で学んでおくことで、海外での適応は格段にスムーズになる。高校時代とは異なり午前練習のみで午後は自由となる時間の使い方など、プロとしての自己管理能力もJリーグで養われると考えている。
Q. 日本代表に初めて招集された際の心境と、ライバルと見られがちな上田綺世選手との関係性についてどう思うか?
日本代表に初めて呼ばれた際は純粋に嬉しく、結果を残したいと強く思った。実際の練習では、堂安律選手や三笘薫選手から自分の欲しいワンタッチのタイミングで正確なパスが出てきた時、自分の動きが正しかったという確信と、トップレベルのプレー基準を得ることができた。非常に楽しく、このタイミングで動いていいのだと感じたのだ。

森保監督からはFWとしての守備の連動性を、名波コーチからはシャドーでのプレーも求められた。これはチームが得点を取りたい場面で「高さ」というオプションを増やすための要求だと捉え、自身の価値を高めるチャンスだと考えている。
ポジションを争う上田綺世選手は、自分にとって「雲の上の存在」であり、ライバルというよりも学ぶべき対象である。オランダリーグで得点王だった上田選手のプレーを日頃から研究し、フェイエノールト戦を見に行った際の面識をきっかけに、ポストプレーのコツを自ら聞きに行った。年上の選手から貪欲に学ぶ姿勢こそが、自身の成長を加速させる一番の近道だ。

Q. シント=トロイデンが今季好調を維持している要因と、自身の武器である90分間のハイプレスについてどのように考えているか?
シント=トロイデンの躍進は、戦術や個人の能力ももちろんあるが、何よりも「雰囲気の良さ」が一番大きい。失点しても誰も下を向かず、チームメイトに文句を言う選手もいない。全員が追いつくため、逆転するための目つきや表情をしており、このポジティブなメンタリティがチームを強くしていると見ている。
自身の最大の武器は「90分間通して落ちないプレッシング」である。スタメンに定着してからはこの持ち味が評価されるようになり、守備面での貢献がチームの安定に繋がっていると思う。前回のW杯で前田大然選手のハイプレッシングを見て、自身の強度と質をさらに高めなければならないと感じた。海外での経験と継続的な努力により、これを日本の武器にしたい。
レンタル移籍でやってきた身として、自分を受け入れてくれたクラブやファン・サポーターへ結果で恩返しをしたいという強い思いがある。かつて古巣アンデルレヒトとの対戦でPKを獲得した際、本来のキッカーがいたにも関わらず自ら志願して蹴ったのは、レンタル元のクラブとサポーターにアピールしたいというストライカーとしての強いエゴと執念だった。
Q. この冬、ブンデスリーガからのオファーを断った真意と、小学生からの夢である2034年W杯優勝への具体的な青写真を聞かせてもらえるか?
この冬、ドイツ・ブンデスリーガの複数クラブからオファーがあったが、全て断った。これは「シント=トロイデンでタイトルを獲ることが、W杯メンバー入りへの一番の近道」だと判断したためである。
単にビッグリーグに移籍するよりも、レンタルで自分を受け入れてくれたシント=トロイデンで歴史に残るタイトルを獲得することの方が、明確な結果としてワールドカップの強力なアピールに繋がると考えた。目先の利益ではなく、長期的な目標達成のための最善手を選択したのだ。

小学生の時に掲げた「2034年W杯優勝」という目標は、今も自身のキャリアの指針となっている。中学生の頃から2034年のW杯が自身のピークである29歳だと見据えていたため、この目標を具体的に設定したのだ。そのプロセスとして、まず目指すはロス五輪での優勝である。東京やパリ世代がメダルにあと一歩届かなかった日本の歴史を、自分たちが塗り替え、動かしたいという強い意志を持っている。
シント=トロイデンでの今季の目標は、タイトル獲得に全力を注ぐことだ。クラブ関係者が「100年に一度のチャンス」と評する状況であるため、ワールドカップ出場を一旦頭の片隅に置き、ここに集中する。理想の優勝シナリオは、レギュラーシーズンを2位か3位で終え、プレーオフでは挑戦者としてプレッシャーなく臨み、一気に逆転して優勝すること。これを置き土産として、次のステップに進みたいと考えている。