2026超予測
半導体 注目企業の最新動向
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2026年2月3日

群雄割拠の半導体業界はまさに戦国時代。 業界歴40年の大山聡氏「NVIDIA・TSMCの2強は今年も続く」と見る。 今注目の業界地図を深掘り。 <収録日> 2026年1月30日 <ゲスト> 大山聡|グロスバーグ代表 慶應大院修了後、1985年東京エレクトロン入社。外資系証券のアナリストを経て富士...
2026年半導体市場の超予測:NVIDIA・TSMCの2強時代と日本の戦略的挑戦
2026年の半導体市場は、2025年に続きNVIDIAとTSMCという2つの巨大企業のタッグが中心を担う。業界歴40年の専門家であるグロスバーグ合同会社代表の大山悟氏によると、この強力な「2強」体制は当面揺るぎそうにない。

しかし、この市場では変化の兆しも見られる。NVIDIAの「フィジカルAI」戦略、インテルの苦悩、日本の半導体産業が直面する戦略的ジレンマ、そしてラピダスやTSMC熊本工場が描く日本の未来図まで、半導体市場の最新動向と今後の行方を業界歴40年の大山聡氏に聞いた。
Q. 2026年の半導体市場はどのような状況になるか?
2026年の半導体市場を一言で表現すると、NVIDIAとTSMCの2強タッグが引き続き市場を牽引する年となる。この独走状態は、半導体市場が新たな段階へと移行する中でさらに強化される見込みだ。
NVIDIAがAI向けGPUの設計をリードし、TSMCがその生産を圧倒的な技術力で担うことで、この2社は市場成長の恩恵を最大級に享受する。他のプレイヤーがこの牙城を崩すことは困難であり、現状ではこの構造が長く続くと予測される。
Q. NVIDIAが「フィジカルAI」に注力する背景は何であるか?
NVIDIAは、これまでChat GPTに代表されるようなデジタルデータ処理中心の「デジタルAI」から、自動運転やロボット制御、医療行為といった物理的に現実世界と関わる「フィジカルAI」へと戦略の軸足を移している。これは単なるAIブームではなく、AIの本格的な普及と持続的な市場拡大を見据えた動きである。

フィジカルAIは特定の用途向けにAIの能力を特化させることで、その利用範囲を大きく広げる。NVIDIAはCESなどの展示会で自動運転やロボット技術に焦点を当てることで、この新しいトレンドを主導しようとしていることが明らかだ。
NVIDIAの新製品「ルービン」が10万ドルを超えるとの予測があるように、同社製品は年々高額化している。しかし、需要は依然として堅固であり、主な顧客であるマイクロソフト、メタ、Google、Amazon、Oracleなどの巨大IT企業が、AI開発競争の優位性を保つために、高価なGPUをこぞって買い求めている状況だ。
NVIDIAの受注残が5000億ドル規模に達するとも言われ、需要が供給能力を大幅に上回っていることが、NVIDIAの収益を押し上げる最大の要因である。競合他社のTPUやカスタムチップも存在するが、それらは学習におけるNVIDIA GPUを補完する形で「推論」フェーズで使用されることが多く、NVIDIAの優位性を揺るがすには至っていない。
Q. TSMCはなぜ圧倒的な存在であり続けるのか?
TSMCが半導体受託製造(ファウンドリ)市場で70%を超えるシェアを維持しているのは、主に「自社ブランド製品を持たない純粋なファウンドリ」というビジネスモデルと、「最先端技術への継続的な追求」という二つの柱があるからだ。

これにより、顧客はTSMCを競合として見ることなく、安心して最先端技術の製造を委託できる。また、他社に追随を許さない生産の歩留まりの高さは、TSMCの圧倒的な競争力を象徴している。
例えば、最先端トランジスタ構造であるGAA(Gate-All-Around)をサムスンがTSMCに先行して導入したが、その歩留まりは30%程度に留まっていると言われる。一方でTSMCは、先行導入を避け、既存技術を磨き上げることで、70~90%という驚異的な歩留まりを達成した。この「慎重かつ確実な技術開発」が、TSMCの強さの根源にあると言える。
競合であるサムスンやインテルは自社ブランド製品を持つため、ファウンドリ顧客は自社の情報が漏洩するリスクを懸念することがある。純粋なファウンドリとして最先端を追い続けるTSMCの戦略が、NVIDIAとの連携を含め、他社との差をさらに広げる結果となっている。
Q. インテルの現在の課題と、その再建の道のりとは?
インテルは「データセンター向けビジネスの不振」と「製造部門の継続的な赤字」という二重苦に直面している。特にデータセンター市場では、AMDにシェアを奪われているが、これはAMDが特別に優れているからではなく、インテル自身の戦略製品を納期通りに供給できていない「オウンゴール」による側面が大きい。
かつては製造がボトルネックとされていた時期もあったが、最近ではTSMCに委託製造してもAMDに先行されるケースがあり、問題の根源が製造ではなく、設計部門の遅延にある可能性が指摘されている。設計畑出身の現CEO体制でも、その改善効果はまだ顕著には見られない状況だ。
インテルの立て直しにとって鍵となるのは、採算の取れない製造部門の切り離しであるが、2024年8月の発表以来、具体的な進展がほとんどない。製造部門は規模が大きすぎるため、米国内で買い手が見つからず、唯一の有力候補であるTSMCへの売却も、米政府が安全保障上の観点から許可する可能性は低いとされている。
バンク・オブ・アメリカのアナリストは、今後5年間は製造部門の売却も分社化も不可能であると予測しており、インテルは設計の遅延と製造部門の重荷という「八方塞がり」の状況に置かれている。このままでは、かつての半導体王者の地盤沈下が進む危険性がある。
Q. 日本の半導体産業はどのような「戦略的ジレンマ」を抱えているか?
日本政府は「2030年に半導体生産額15兆円」という目標を掲げているが、世界市場の成長スピードが想定をはるかに上回っており、戦略的ジレンマに陥っている。

元々100兆円と予測されていた2030年の世界市場は、AI需要の急拡大により2025年には既に115兆円に達する見込みだ。このペースでは、仮に日本が目標の15兆円を達成しても、世界シェアは当初目指した15%には届かず、5%以下にまで低下する恐れがある。
市場を牽引するAIには最先端のロジックとDRAMが不可欠だが、日本にはこれらを生産する企業や拠点がない。現在日本が強みを持つのは、マイコン、アナログ、パワー半導体といった制御系半導体だ。これらの分野も重要ではあるが、AI市場の爆発的な成長とは直結しにくい。「フィジカルAI」の普及が日本半導体産業にとって希望となる可能性はあるものの、最先端ロジック・DRAMの欠如は依然として大きな課題として残る。
Q. ラピダスとTSMC熊本工場の動向は、日本にどのような影響をもたらすか?
日本の次世代半導体製造を目指すラピダスは、計画を着実に実行している。次の重要なマイルストーンは、今年3月までの開発「バージョン0.5」達成だ。これは、半導体設計ツール(EDA)ベンダーとの連携を開始するために不可欠であり、実現すれば年末までには顧客候補への試作打診を開始する段階へと進むだろう。
TSMCのトップ顧客でもあるBroadcomのような企業がラピダスの顧客となれば、日本の半導体産業にとって非常に大きな意味を持つ。
一方で、TSMC熊本の第1工場は、国内向けのレガシープロセス製造が中心であり、稼働率が50%程度と低迷している。この状況を受けて、第2工場の建設計画は一旦見直しの対象となったが、これを逆手に取り、世界的に不足している2ナノといった最先端プロセスの生産拠点へと転換する可能性が出てきている。
これは日本にとって非常にプラスの動きである。最先端プロセス工場が国内に建設されれば、日本の製造装置や材料メーカーに大きな需要が生まれ、関連産業全体の活性化、ひいては高度人材の育成と確保にも繋がるため、単なる海外企業の工場誘致に留まらない戦略的な意義がある。
Q. 日本の半導体産業が未来に向けて取り組むべきことは何か?
日本の半導体産業が持続的な成長を遂げるには、製造能力の強化(ラピダスやTSMC熊本工場)だけでなく、半導体の「設計」能力の抜本的な見直しと強化が不可欠である。いずれか一方に偏ることなく、両輪で発展を推進する戦略が必要となる。

このためには、教育システム全体を見直す必要がある。国内には最先端プロセスを経験した技術者が極めて不足しており、ラピダスは積極的に海外人材を誘致している。九州地方などで大学の専門課程が増設されている動きは歓迎すべきものだが、この取り組みを全国規模で加速させ、半導体産業が若者にとって魅力的なキャリアパスとなるように導く必要があるだろう。
政府と民間が一体となって、人材の育成・確保、設計と製造の高度化に継続的に投資し、単なる自給自足にとどまらない、世界の半導体サプライチェーンに貢献できる独自の強みを確立していくことが、日本の半導体産業の未来を切り拓く鍵となる。