PIVOT TALK TECH
投資家が注目する最新技術
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2026年1月28日

恐るべきスピードで技術が進歩する現代。 2030年の社会はどうなっているのか? 日経BPクロスメディアで最新のテクノロジーを取材する尾崎憲和氏が、今知るべき技術10選を厳選。 <ゲスト> 尾崎憲和|日経BPクロスメディア編集部 日経BPで15年以上にわたり、IT・技術系メディアの編集と執筆に従事。...
今後5年間で社会を変える、ビジネスが注目すべき次世代テクノロジー
私たちの社会は急速なテクノロジーの進化により、大きな変革期を迎えている。デジタルツインから光電融合、核融合といった新たな技術が、産業構造や人々の生活を根底から変えようとしているのだ。

これらの最先端技術は、どのようなメカニズムで機能し、そして私たちの未来に何をもたらすのか。主要な次世代テクノロジーについて、日経BPクロスメディアで最新のテクノロジーを取材する尾崎憲和氏に聞いた。
Q. デジタルツインとは一体どのような技術なのか?
デジタルツインとは、現実世界に存在する物理的なモノや空間を、そっくりそのままデジタルの世界に複製する技術である。まるでサイバー空間に自身のコピーが存在し、そこでさまざまな活動を行っているかのようなイメージを持つと理解しやすいだろう。

その本質は、物理的な制約を超えたシミュレーションや分析を可能にすることにあり、例えばGoogleマップのストリートビューなどもこの技術の一端だと言える。
Q. 現実をデジタルにコピーするこの技術はどのように活用されているのか?
文化財保護の分野では、デジタルツインがその価値を発揮している。例えば、2019年に焼失したパリのノートルダム大聖堂は、火災前のデータを基にデジタルツインが構築され、これが再建時の詳細な設計図として活用された。これにより、本来困難であった復旧作業が、わずか5年強で成し遂げられたのだ。
産業分野では、BMWが100万平方メートルを超える巨大工場をデジタルツイン化し、生産性の向上に役立てている。仮想空間上で機器の配置変更や生産ラインのシミュレーションを行うことで、実際の工場での試行錯誤にかかる時間やコスト、そしてリスクを大幅に削減しているのだ。AIと組み合わせれば、最適化や改善点の自動発見も可能となる。
Q. AIの進化がもたらす電力問題を解決する「光電融合」とは何か?
AIの爆発的な普及に伴い、データセンターや半導体工場の電力消費量は飛躍的に増加しており、今後10年で全体の電力需要は5〜6%増加すると予測されている。
この深刻な電力問題を解決する切り札が「光電融合」である。光電融合とは、半導体チップ内部のデータ伝送を、従来の電気信号から消費電力の少ない光信号に置き換える超省電力技術である。
データ伝送に光を用いることで、処理能力が高まるにつれて増大する電力消費を抑え、同時に高速化も実現できるため、AI時代の持続可能な成長には不可欠な技術だとされる。現在、この分野はNVIDIAやTSMCといった海外の半導体メーカーがリードしているが、日本ではNTTが独自の対抗技術の開発を推進しており、日本の国際競争力を左右する重要な技術分野だと言えるだろう。
Q. 夢のエネルギーと呼ばれる核融合は実現可能な段階に近づいているのか?
核融合は「夢のエネルギー」と称され、従来の原子力発電(核分裂)に比べて、「エネルギー効率が圧倒的に高い」「CO2を排出しない」「放射線リスクが極めて少ない」という三つの大きなメリットを持つ。その効率は原子炉の4倍、火力発電に至っては400万倍に達するとされる。

しかし、太陽内部で起こる核融合を地上で再現するには、1億度を超える超高温状態を生成・維持するという技術的障壁があり、長年「実現不可能」だと考えられていた。だが近年、この「1億度の壁」を超える可能性が見えてきたのだ。
現在、フランスでは日本を含む30カ国以上が参加する国際プロジェクト「ITER(イーター)」が進行しており、2039年には、投入エネルギーを上回るエネルギーを生み出す「核融合点火」の達成を目指している。
世界では100件以上の民間プロジェクトも立ち上がり、2050年頃の実用化が目標とされており、夢物語ではない現実的な目標となっている。
Q. 豚の腎臓を人間に移植する「異種移植」は医療にどのような未来をもたらすか?
2024年3月、アメリカで日本人医師の執刀により、豚の腎臓が人間に移植される手術が成功した。これは臓器提供者不足という長年の課題に苦しむ、腎臓病患者に大きな希望をもたらすものである。
実は、動物の組織を人間に移植する異種移植は、心臓の弁膜症手術における豚や牛由来の「生体弁」など、すでに身近な医療で行われている。今回の事例は、その応用範囲を臓器全体へと大きく広げる画期的な挑戦であったと言える。
日本でも数年内の臨床応用が期待されており、iPS細胞による再生医療と並行し、早期に患者の命を救う現実的な医療選択肢として注目されている。この技術がさらに確立されれば、人工透析を必要とする多くの人々の生活を劇的に改善する可能性を秘めている。
Q. 電気刺激で味覚を変える「電気味覚」は食の未来をどう変えるのか?
電気味覚とは、口の中に微弱な電流を流すことで味覚を人工的に変化させる技術である。2023年のイグノーベル栄養学賞を受賞し、一見ユーモラスにも見えるが、その実用性は極めて高い。
最も注目される応用分野は、塩分の摂取量を減らす減塩食である。電気刺激により、実際の塩分濃度よりも濃く塩味を感じさせることができるため、塩分を大幅にカットした料理でも、美味しく食べることが可能になるのだ。これは高血圧などの生活習慣病対策に大きな貢献をすると期待されている。

すでに電気を流すスプーンやカップといったデバイスが登場しており、減塩食でも満足感のある食体験を提供する。将来的には、甲殻類アレルギーを持つ人がカニの「味」だけを楽しんだり、健康を気にせずニンニクの風味を味わったりするなど、食の制約から人々を解放する可能性を秘めているだろう。
Q. 地球温暖化対策の切り札となる「岩石風化促進」とはどんな技術か?
岩石風化促進は、投資家からAIや半導体を凌ぐほどの注目を集める、画期的なCO2削減技術である。これは、地球が過去46億年間行ってきたCO2吸収サイクルを人為的に加速させようとする試みだ。

仕組みは、火山岩を細かく粉砕して表面積を増やし、畑などに散布するというシンプルなものである。散布された岩石は空気中のCO2と化学反応を起こし、炭酸塩としてCO2を固定・吸収する。CO2濃度が下がれば、地球の温度上昇を抑える効果も期待できる。
この技術の最大の特長は、CO2吸収と同時に「一石二鳥」のメリットを生み出すことである。岩石に含まれるマグネシウムなどのミネラルが土壌に溶け出し、作物の成長を促進する肥料としての効果も期待できるのだ。
GoogleやMicrosoftが出資する企業がすでに事業を開始しており、技術的ハードルが比較的低いことから、今後数年での大規模な実用化が視野に入っている。
Q. これらの技術は私たちの社会を今後どのように変えていくと予想されるか?
AIはもちろんのこと、デジタルツイン、光電融合、核融合、異種移植、電気味覚、岩石風化促進など、今日紹介した多様な技術が複合的に社会に実装されるだろう。これにより、インターネットの登場時のような非連続的な社会変革が、今後5年から10年で起こることは間違いない。
これらの変化は、時に人々の生活の「裏側」で静かに進行しながら、社会の基盤を根本から作り替えていく。技術の進化を正しく理解し、その影響を予測しながら対応していくことが、未来のビジネスや社会を生き抜く上で不可欠な要素となるだろう。