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S&P500黄金時代は終わる?/ゴールドマン・サックス予測を読み解く
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2026年1月18日

S&P500黄金時代は終わるのか?ゴールドマン・サックスのレポートから、アメリカ経済の今後を読み解く。 <ゲスト> 村上尚己|アセットマネジメントOne シニアエコノミスト 東大卒。シンクタンク、外資証券や運用会社で国内外の経済分析に従事。2003年よりゴールドマン・サックス証券で日本経済予測担当...
2026年米国経済展望:長期投資の視点から紐解く株価とリスク
本稿では、アセットマネジメントOneのシニアエコノミスト村上尚己氏が解説する2026年の米国経済および為替市場の展望を基に、Q&A形式で主要な論点を深掘りする。米国経済の動向は日本経済や個人の投資ポートフォリオに大きな影響を与えるため、その最新の見解を正確に理解することは極めて重要だ。直近で注目されたゴールドマン・サックスのレポートの内容から始まり、アメリカ市場の強固な基盤と、時に見過ごされがちなリスク要因についても包括的に考察する。

Q. ゴールドマン・サックスの「米国株は今後10年間アンダーパフォームする」というレポートは何を意味するのか?
このレポートは、決して米国株市場の崩壊を示唆するものではない。むしろ、これまでの米国株の極端な好調さを分析し、今後10年間のリターンが「他地域と比較して相対的に劣後する」可能性を指摘するものだ。近年の株高は、主に生成AIブームを背景とする一部のメガキャップハイテク株への過度な集中によって牽引されてきた。これらの企業は非常に高いバリュエーション、例えばPERが20倍を超える水準に達している。このような状態は異常であり、今後10年という長期的なスパンでは持続しないと見られている。
市場が成熟し、これまで急激な上昇を牽引してきた要因が正常化に向かうことで、相対的にリターンの伸びが穏やかになるという意味合いだ。つまり、将来的に米国株が全く成長しないわけではなく、これまでの急騰ぶりには期待しない方がよい、というメッセージと捉えるべきだ。この正常化プロセスにおいて、高すぎる期待が一旦は織り込まれることで、今後株価の「上値が抑えられる」可能性を考慮する必要がある。
Q. アメリカ以外の市場が米国を上回るリターンを上げた背景と、長期投資における米国の重要性をどう評価するのか?
2025年には、アメリカ以外の市場、例えば日本、ドイツ、そして一部の新興国が米国株をアウトパフォームした事例がある。この背景には、各国の政治的な変化への期待や、極端に割安だった市場への資金流入がある。具体的には、日本では高市政権の誕生、ドイツでは経済政策の変化への期待、中国株においてはPERが10倍台前半といった低バリュエーションが、投資資金を引きつける要因となった。アメリカ株は、すでに非常に高いバリュエーションに達していたため、好材料が出ても値上がりしにくいという局面があったのである。相対的な割安感から資金が流れた結果だと分析できる。

しかし、村上氏の意見では、今後10年という長期的な視点で見ても、世界経済の成長を牽引する中心は依然としてアメリカだと考えるべきだ。一時的に他国がアウトパフォームする時期があったとしても、それが永続するとは考えにくい。特に中国など政治的な不確実性や経済活動を締め付ける政策リスクを持つ新興国に、長期投資の主軸を完全に移すのは賢明ではないと指摘する。長期的なポートフォリオの核は、引き続きアメリカ経済に置くことが、成長と安定を追求する上で重要との見解を示している。短期間のトレンドに過剰に反応せず、資本主義経済の中心としての米国の役割を見据えるべきだ。
Q. 2025年の米国経済の動きと、2026年の展望をどのように予測しているか?
2025年の米国経済は、トランプ政権による関税引き上げの影響で年前半には一時的な減速が見られた。株式市場の大きな下げや、失業率の上昇など、経済活動にブレーキがかかった時期が存在する。しかし、これは本格的な景気後退ではなく、「マイルドな減速」にとどまったと評価できる。年間を通して見れば、GDP成長率は全体で1.6%にとどまったが、年後半にはFRBの利下げ(昨年9月以降)と、政府による減税政策の効果が発現し始めた。
具体的には、金利引き下げが経済活動を刺激し、企業や家計への減税が支出を後押しした。その結果、2025年の終わりから2026年にかけて経済は持ち直しを見せている。2026年第1四半期(1〜3月)には、年率3%程度の成長を記録する可能性が高いと予測されており、アメリカ経済は予想以上に底堅い回復力を示していると言える。関税というマイナス要因は、金融政策と財政政策のプラス要因によって相殺され、経済全体はむしろ加速フェーズに入るとの見通しだ。特にアメリカ経済は通常、年2%以上の成長が見込めるため、現在の加速傾向は期待できるものとなるだろう。
Q. 大統領によるFRBへの政治的圧力は、本当に米国経済にとって重大なリスクとなるのだろうか?
大統領によるFRBへの政治介入については、多くのメディアでリスクとして指摘されているが、必ずしもそうではないという見方がある。中央銀行の独立性は重要であり、維持されるべきだという前提はありつつも、政治のトップが国家経済の健全な成長を促すために中央銀行に意見し、適切な圧力をかけることは「あり得る」し、むしろ「望ましい」とすら言える場合があると指摘する。

これは日本の経験と比較できる。アベノミクス以前の日本はデフレに苦しんでいたが、これは日銀が金融緩和に積極的でなかったことに起因する。安倍政権がデフレ脱却の強い目標を掲げ、日銀に金融緩和を促した結果、経済が持ち直した歴史がある。この例からわかるように、政治が経済目標達成のために中央銀行と議論することは、有効な政策連携となる場合がある。また、FRBは「雇用最大化」と「物価安定」という明確なミッションに基づきデータを見て判断する組織だ。経済データが利下げを正当化する状況であれば、政治的な発言がなくともFRBは動くだろう。経済が強く、失業率が上昇しない状況であれば、FRBは利下げをする必要がないため、政治介入の影響も限定的となる。つまり、政治的圧力はFRBの役割の一部と捉えるべきであり、過剰にリスクと見なす必要はない。
Q. 米国経済におけるインフレ、所得格差、財政赤字の拡大は懸念すべきリスクか?
現在の米国のインフレ率は一時的に前年比3%程度に上昇しているが、これは関税引き上げの影響と見られ、今後加速することはないと予測されている。昨年の経済減速によって需要が抑制された影響が遅れて波及し、年末にかけて1%台へ緩やかに低下していく可能性が高い。賃金上昇の鈍化と労働市場の緩和が進んでおり、インフレの再燃リスクは低いと評価している。
所得格差、いわゆる「K字経済」は社会的な問題であり、特に低所得者層が生活必需品価格の上昇に苦しむという現実がある。この点は政治の支持率にも影響を与える要因となるが、経済全体が年間2%以上の成長を維持している限り、企業業績は拡大し、株式市場にとっては良好な環境が続く。企業が利益を伸ばせる状況であれば、全体の経済としての健全性は保たれるという認識だ。

財政赤字についても、米国のGDP比5〜6%程度の赤字は、基軸通貨国であるアメリカにおいては決して問題視すべき水準ではない。財政収支の赤字は多くの先進国で常態化しており、市場で語られる「国債が買われなくなる」といった破綻リスクは極めて低いシナリオだ。アメリカ経済が成長を続ける限り、国債の信頼性が揺らぐことはなく、これらの財政リスク論は現実的ではない過剰な懸念であると切り捨てている。