
変動金利3%で家計は崩壊?【塩澤崇】
住宅ローン金利急変時代を乗り切る戦略:変動・固定選択から資産運用まで
日本の金融政策転換に伴い、日銀のマイナス金利解除と利上げが住宅ローン市場に波紋を広げている。低金利時代は終焉を迎え、変動金利利用者も金利動向に不安を感じ始めた。本稿では、金利変動の背景、将来予測、そして取るべき対策をQ&A形式で解説する。
Q. 変動金利から固定金利への選択は今後増えるか?
変動金利が主流の住宅ローン市場だが、今後固定金利選択者が増加すると予測される。モゲチェックのデータは固定利用者が1割から1.5~2割へ増える可能性を示唆する。しかし、低金利時に変動を選んだ利用者には「金利の貯金」が存在。ローン初期の低金利メリットは大きく、総支払額で見れば変動が未だ有利なケースが多い。安易に「固定が唯一の正解」とするのは時期尚早だ。

Q. 今後の政策金利はどこまで上昇するのか?
メインシナリオでは2027年度までに政策金利1.5%上昇を見込む。背景は「賃金上昇伴う良い経済サイクル」と「円安危機感」だ。2026年には実質賃金がプラス転化し、日銀は追加利上げしやすくなる。具体的には2026年に2回、2027年に1回の利上げで1.5%到達を予測。ただし、米国経済好調維持が前提であり、不測の事態には利下げリスクも考慮が必要だ。
Q. 利上げと円安にはどのような関係があるのか?
急激な円安は利上げの大きな要因。ドル円155円が防衛ラインと見られ、これを超えると国民不安が高まり、日銀は「円安ストッパー」として利上げする可能性が高い。リスクシナリオでは、海外インフレ再燃で欧米が再利上げすれば、日米金利差拡大で円安加速し、政策金利2.5%に達する可能性もある。

Q. 住宅ローン利用者はどこまで金利上昇に耐えられるのか?
金利上昇の限界点として「変動金利3%」を意識すべきだ。これは金融機関がローン審査時に用いる「審査金利」が目安。銀行は、借り手が将来的な3%程度の金利上昇に耐えられるかを試算し融資する。実質金利がこれを超えると、多くの借り手が返済困難に陥るリスクが高まる。例えば5000万円、35年返済、当初1%金利の場合、政策金利1.5%なら月約2万円増の16万円、3%なら当初から約5万円増の19.2万円となる。変動金利利用者は、収入と資産の強化が不可欠である。
Q. 変動金利に付帯する「5年ルール」と「125%ルール」とは?
変動金利には金利急上昇時の負担を緩和する「5年ルール」と「125%ルール」がある(採用銀行は限定)。5年ルールは5年間返済額を据え置き、125%ルールは5年後の返済額見直し時に前回の125%を超えないよう制限する。

これらは家計管理の緩和措置だが、金利が上がると利息割合が増え元本減が遅れるため、総支払額は増加する。「未払利息」発生リスクも存在する。
特に注意すべきはルール適用中の「繰り上げ返済」だ。これを行うとシステムが最新金利と残高で再計算し、金利上昇局面では月々の返済額が増加する場合がある。返済額固定を望む場合、5年間は繰り上げ返済を避けるという逆説的判断が必要となる。
Q. 金利上昇時代を乗り切るための効果的な対策は?
物価高騰と金利上昇の時代、個人は柔軟な対応が求められる。「現金(年収)だけに頼らず、資産で対応する」発想が重要だ。「資産価格>物価>年収」という上昇率から、現金を保有するだけでは不利になるためである。
資産運用の活用: 住宅ローンを年収を不動産や株式に転換するツールと捉え、残りの現金は積立投資へ積極活用する。変動金利リスクをカバーするため資産運用は必須だ。
安易な繰り上げ返済は避ける: 利回り運用の機会喪失、団信保障減少、流動性低下を招くため推奨できない。慎重な判断が求められる。
借り換えの検討: 現金利1%以上の人は借り換えの価値が高い。諸費用を考慮しても総支払額を大幅削減できる可能性があるため、金利が本格的に上がる前に低い金利へ乗り換えを検討すべきだ。
借りすぎに注意: 将来金利上昇を見据え、無理のない借入額を設定する。自身の収入と資産に見合った適切な借り入れを心がけよう。
Q. 新規で住宅ローンを借りる場合、変動と固定どちらが合理的か?

新規借り入れでも、現在の金利差を考慮すれば変動金利には未だ合理性があると判断できる。変動と固定の約1.1~1.2%の金利差は、日銀による数回の追加利上げで埋める必要があり、高金利状態が35年続くとは考えにくい。ただし、変動金利選択の絶対条件は「金利上昇への備え」だ。無理のない借入額と並行した資産運用が必須となる。これらのリスク管理に自信がない場合は、固定金利を選ぶか、借入額そのものを見直す方が賢明だ。住宅ローン選びは個人のリスク許容度と資産形成戦略が問われる時代に入った。「悩まずに組めた時代」は終わり、各個人が情報に基づいた戦略を構築する「分水嶺」に立っている。
