TIME IS
頭の中を瞬時に言葉にする言語化トレーニング/電通コピーライター考案/3つのプロセスに分解【荒木俊哉】
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2026年1月18日

多忙なビジネスパーソンへ、圧倒的な成果を上げている著名人が時間術のヒントを提供する「TIME IS」。今回は、電通のコピーライター・荒木俊哉氏に「瞬間言語化トレーニング」を聞いた。自分の考えを言葉にできない悩みを3つのプロセスに分解して鍛える。前編は①自分の言いたいことが「思いつかない」をなくすトレ...
「言葉にできない」を解消する鍵:誰もが言語化力を磨ける実践的トレーニングとは?
会議での発言、企画書の作成、顧客へのプレゼン…ビジネスのあらゆる場面で「言いたいことがうまく言葉にできない」という悩みを抱えている人は多い。これは才能やセンスの問題だと諦めてはいないだろうか。しかし、電通でコピーライターとして活躍し、言語化に関する著書を3冊上梓している荒木俊哉氏は、言語化力は訓練によって誰でも習得できるスキルだと断言する。言葉のプロフェッショナルが提唱する「言語化」の奥義、そして実践的なトレーニング法とはどのようなものなのか、Q&A形式で深掘りする。

Q. 言語化力は、生まれ持った才能やセンスに左右されるものでしょうか?
荒木氏は、言語化力は才能やセンスとは一切関係なく、適切なプロセスを踏み、鍛え続ければ誰でも身につけられる力だと語る。荒木氏自身、コピーライターとしてキャリアを始めた当初は、書いたコピーがなかなか採用されず、悔しい思いを経験してきたという。しかし、その後20年近くにわたり言葉を書き続けることで言語化力を向上させ、今では多くの企業や個人の言語化をサポートする立場にある。
彼の経験に基づき開発されたのが、ビジネスパーソンが習慣化しやすいよう、シンプルで取り組みやすい工夫が凝らされたトレーニングメソッドだ。広告やコピーライティングに携わる専門家だけでなく、あらゆるビジネスパーソンが自身の思考を言葉にする力を高めることを目的としている。
Q. 多くのビジネスパーソンが抱える「言葉にできない」という悩みは、どのような状態を指すのですか?
一般的に「思いが伝えられない」という認識が多いものの、言葉にできない悩みには、実は3つの段階のプロセスがあると荒木氏は指摘する。これは彼の著作執筆やコピーライターとしての経験から導き出されたものであり、それぞれの悩みに対して個別の対策を講じる必要があるという。

第一段階は、「言いたいことが思いつかない」という悩みだ。急な質問やディスカッションの場で言葉が出てこない、何を話して良いかわからない状態を指す。第二段階は、「言いたいことがまとまらない」という悩みである。頭の中には漠然とした複数の考えや感情があるが、簡潔に話したり書き出したりできない状態だ。最後の第三段階は、「言いたいことが相手に伝わらない」という悩み。自分では意見を話しているつもりでも、相手に理解されない状況を意味する。言語化の悩みは、これらのいずれか、または複数の段階で発生していると理解すべきだ。
Q. これらの言語化の悩みを解決するための鍵は何でしょうか?
言語化の悩みを解消する上で、荒木氏が着目したのは「具体と抽象を行き来する」という思考フレームである。これはコンサルタントなどがよく使うフレームワークとして知られているが、荒木氏はこの「具体と抽象」を言語化のプロセスに特化させて落とし込んだ。自分の頭の中を「具体化」「抽象化」し、そしてその両者をバランスよく使い分けるトレーニングを行うことで、言語化力が劇的に向上すると彼は主張する。
このフレームワークを前述の3つの悩みに合わせて活用することで、誰でも自身の思考を明確にし、効果的に表現する力が養われるというのが本書の核となるメッセージだ。次のセクションからは、具体的なトレーニング内容を見ていく。
Q. 自分の考えが「思いつかない」という悩みは、どうすれば解消できるのでしょうか?
「言いたいことが思いつかない」という悩みを解決するためのステップは、まず頭の中にある漠然としたモヤモヤを具体的に言葉にすることから始まる。本書ではこのステップのために、3種類の具体的なトレーニング方法が提供されている。これらは、思考に「深さ」「高さ」「広さ」という異なる側面をもたらす役割を持つ。

一つ目は、思考を深掘りする「Why-so(なぜ)トレーニング」だ。二つ目は、物事の本質を捉える「So-What(つまりどういうこと)トレーニング」。そして三つ目は、多角的な視点から思考を広げる「5W1Hトレーニング」である。これらを実践することで、これまで言語化されていなかった自身の思いや意見が明確になり、意見が思いつかないという課題を克服する土台が築かれるだろう。
Q. 「Why-soトレーニング」とはどのようなもので、具体的にどのように行うのですか?
Why-soトレーニングは、ある問いに対し「それはなぜ?」と繰り返し(目安は5回)自問自答することで、思考を深く掘り下げ、本質的な理由を明らかにするトレーニングである。制限時間は1分。例えば、「仕事にやりがいを求めてしまうのはなぜ?」という問いに対し、以下の思考を繰り返すと、新たな気づきが生まれる可能性がある。
「なぜ?」→「せっかく自分の時間を使うならやりがいを感じたいから」
「なぜ?」→「仕事は自分の人生において大きな割合を占めているから」
「なぜ?」→「仕事にやりがいを感じられると、人生が満たされた気がするから」
「なぜ?」→「仕事で嬉しいことがあった日は、一日中幸せになれるから」
「なぜ?」→「仕事を通じて、自分が誰かの役に立っていると実感できるから」
このように思考を深掘りすることで、表層的な理由だけでなく、自分自身の根源的な価値観や願望に気づくことができる。言葉に深みと説得力をもたらすための有効な手段である。
Q. 「So-Whatトレーニング」とはどのようなもので、どのような効果が期待できますか?
So-Whatトレーニングは、与えられた問いに対し「それってどういうこと?」と繰り返し(目安は5回)問いかけることで、物事の意義や価値、つまり本質を捉える力を養うトレーニングである。こちらも制限時間は1分で取り組む。例えば、「好きなことを仕事にするってどういうこと?」という問いに対しては、次のように思考を掘り下げていく。

「どういうこと?」→「やっていても苦じゃないことを仕事にすること」
「どういうこと?」→「人から見れば辛そうでも、自分では苦に感じないことを仕事にすること」
「どういうこと?」→「人から何を言われても、続けられることを仕事にすること」
「どういうこと?」→「自分が納得いくまでやり続けてしまうことを仕事にすること」
「どういうこと?」→「自分のこだわりが発揮できることを仕事にすること」
このトレーニングによって、言葉の背景にある本質的な意味や価値を具体化し、より普遍的で影響力のあるメッセージを生み出すことが可能になる。言葉に「高さ」を与えるための練習と言えるだろう。
Q. 「5W1Hトレーニング」は、思考をどのように具体化していくのですか?
5W1Hトレーニングは、自分が抱える課題や問いに対し、「When(いつ)、Where(どこで)、What(何を)、Who(誰が)、Why(なぜ)」の5Wで問いかけ、状況を多角的に分析し具体化するトレーニングである。制限時間は3分。最後に「How(どのように)」で解決策を言語化することが特徴だ。例えば、「あなたにとって仕事の優先順位とは?」という問いに対し、次のように思考を展開する。
When:どんな時に優先順位を意識する? → 複数のプロジェクトが同時進行している時。
Where:どんな場面で優先順位が求められる? → プロジェクトの課題が山積している場面。
What:何を軸に優先順位を決めている? → 自分が力を入れたい仕事かどうか。
Who:どういう人が優先順位をつけるのが上手だと思う? → プロジェクトの進み具合を俯瞰できる人。
Why:なぜ優先順位が大切だと思う? → 仕事をする相手に迷惑をかけてしまうから。
5Wに沿って思考することで、これまで漠然としていた課題の側面が具体化される。そして最後に「How:どうすればもっと上手く優先順位をつけられそうか?」と問う。例えば、「抱えている仕事を一度俯瞰して優先順位をつける時間を持つ」という具体的な行動指針が導き出される。このトレーニングは言葉に「広さ」をもたらし、状況整理と解決策の具体化に役立つ。