2026超予測
2026米経済予測:AI失業と国内回帰の真相
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2026年1月8日

「AIによる大量失業」は本当か?移民抑制による労働力不足の実態は?トランプ政権が推進する「リショアリング(国内生産回帰)」は計画倒れの様相に。注目キーワードで展望する。 <ゲスト> 今村 卓|丸紅経済研究所 代表 丸紅米国ワシントン事務所長を経て2017年より丸紅経済研究所を率いる。米国政治経済か...
AI投資、移民政策、アフォーダビリティ危機:2026年米国経済の行方と潜む課題
現在の米国経済はAI関連投資が成長を牽引する。その恩恵が一部の大企業に集中し、経済構造に歪みをもたらす一方で、電気料金の高騰や雇用不安といった副作用も顕在化している。また、トランプ政権の政策が中間層以下の生活を圧迫し、「アフォーダビリティ危機」として浮上する矛盾も指摘される。本記事では、AIブームが米国経済にもたらす光と影、トランプ政権下の国内政策が直面する現実、そして2026年以降を見据えた政治経済の動向について解説する。

Q. 米国経済を牽引するAI投資の実態と、その懸念点とは何か?
足元の米国経済を支える主要因はAI関連投資であり、2025年上半期には国内総生産(GDP)成長の約8割を占めるほどである。しかし、この投資はごく少数の大手ハイパースケーラー企業によるデータセンター建設や電力インフラへの集中投資が大半を占めている点が特徴的である。これは経済成長の構造的な歪みを示唆しており、少数の企業による成長が経済全体を持続的に牽引できるのか、疑問符が付く。

大手AI関連企業は潤沢な資金を持つにもかかわらず、熾烈な競争に打ち勝つため、積極的に借り入れを行い、さらなる投資を加速させている。この前のめりな姿勢は過剰投資につながり、一部では企業間での「循環投資」という指摘もある。こうした状況は、実態以上にAIブームを過大に見せかけ、潜在的なバブル崩壊のリスクを高めている可能性が高い。2026年にバブルが崩壊する懸念も囁かれており、すでに市場ではAI関連株の軟調化といった警戒の兆候もみられる。
Q. AIの普及は社会にどのような摩擦を生み出しているのか?
AIブームの影で、その基盤を支えるデータセンターの急増が地域社会との深刻な摩擦を生んでいる。例えば、ワシントン近郊のバージニア州ではデータセンターが乱立し、大量の電力を消費することで地域住民の電気料金が高騰する事態を招いた。住民からは、AIの恩恵を感じられないにもかかわらず電気代が上がることに不満の声が上がり、「反AI」感情が高まっているという。データセンターは低周波騒音、水資源の大量消費、景観悪化などの問題も引き起こす上、建設時を除けばほとんど雇用を生み出さないため、地域住民にとっては「迷惑施設」との認識が広まり、各地で建設反対運動へと発展している。
Q. AIによる雇用への影響は現実のものなのか?
AIによる雇用の代替は、特定の分野で現実のものとなりつつある。特に影響を受けているのは、法務事務所の若手弁護士が担っていた判例探しや、コンサルティングファーム、金融機関の若手など、知的労働ではあるが定型作業の多いホワイトカラー職だ。これらの仕事はAIに置き換えられることで、若年層の専門職におけるキャリアの入り口が狭まっている実態がある。高い学費ローンを抱える大卒者にとって、これらの職種は安定した高収入を得る道であったため、深刻な影響が懸念される。
しかし、アメリカ経済全体で見ると、AIによる雇用喪失はメディアで誇張されている側面も強い。AIの浸透はまだ局所的であり、介護職のように人手が不可欠な分野では、AIによる置き換えは全く進んでいない。むしろ、新型コロナウイルスのパンデミック中に過剰に抱え込んだ人員を、「AI化」を口実に企業が調整しているケースが多い。過去の産業革命が新たな仕事を生み出してきたように、AIも将来的には現在の想像を超える新たな雇用機会を創出する可能性を秘めていると指摘される。
Q. トランプ政権の移民政策と国内生産回帰は、経済にどのような効果をもたらしているか?
トランプ政権が推進する移民規制強化は、労働市場と物価に多大な影響を及ぼしている。移民政策はトランプ氏の支持層に非常に人気があり、政権が最も成果を上げた数少ない政策と評価されるため、経済的負の影響があったとしても緩和される可能性は低い。これにより、かつて移民労働力に依存していた農業やサービス業では深刻な人手不足が発生し、それがサービス価格の高騰につながり、物価上昇の一因となっている。

一方、政権の看板政策の一つである国内生産回帰(リショアリング)は、掛け声倒れに終わっているのが現実だ。最新の雇用統計によると、製造業の雇用者数は前年比で減少しており、生産拠点の国外流出という大きな流れを食い止められていない。リショアリングが進まない背景には、人手不足と労働者意識のミスマッチがある。高収入のAI関連職への憧れが強く、肉体的に厳しいとされる製造業を敬遠する米国人が多いため、人材確保が難しくなっている。TSMCのアメリカ工場建設の遅れも、高度なスキルを持つ人材確保が困難な点が大きく影響しているという。
Q. FRBの金融政策は、大統領の圧力に屈することになるのか?
次期FRB議長の選出が控える中、トランプ大統領は「利下げすれば経済は良くなる」という持論を展開し、FRBに対し利下げを求める圧力を強める可能性がある。彼のこの見方は不動産業界での経験に基づくもので、もしFRBが政治的な圧力に従えば、トルコの中央銀行の例のように、金融市場からの信頼を失墜させるリスクがある。しかし、次期議長候補が誰になっても、FRBに課された物価の安定と雇用の最大化という二つの責務を真摯に果たせば、基本的な政策判断に大きな差異は生じないだろう。特にインフレが高止まりする現状では、大統領が望むような大幅な利下げは困難と予想される。
FRBの金融政策は議長一人の独断で決まるのではなく、投票権を持つ理事や地区連銀総裁による多数決で決定される合議制が基本である。そのため、大統領の意向を強く反映する理事一人の主張が、極端な政策変更につながる可能性は低い。実際にトランプ政権寄りとされるミラー理事もFOMC内では孤立しており、その主張に同調する者はほとんどいない。来年から投票権を持つタカ派メンバーの存在も考慮すると、FRBが組織として独立性を保ち、金融市場の安定を優先する可能性は極めて高い。
Q. アフォーダビリティ危機とは何か、なぜ問題は深刻化しているのか?
アフォーダビリティ危機とは、生活必需品やサービスが高騰し、一般家庭がそのコストを賄えなくなる事態を指す。現在の米国でこの問題が深刻化している背景には、トランプ政権の政策が関わっている。政権が計画する大型減税は富裕層に恩恵が集中する一方、その財源を社会保険の削減で補おうとしており、結果として最下層の人々の負担が増す。これは経済の「K字型回復」を助長し、経済格差をさらに広げる。
また、オバマケアの後続策が頓挫したことにより、低所得者向けの医療保険料が高騰する見込みであり、人々の生活を一層圧迫するだろう。輸入品への関税も中間層以下に転嫁され、負担がのしかかる。皮肉にも、これらの政策が最も打撃を与えるのは、トランプ氏自身の支持層である中間層以下の人々である。富裕層出身者が多い政権幹部の多くは、庶民の生活苦や経済的な痛みを理解できていないことが、政策が現実の問題に対応できていない最大の要因と指摘される。
Q. 2026年以降、米国経済・政治の主な焦点はどこにあるか?
トランプ大統領の年齢や健康問題に関する懸念から、「ポスト・トランプ」という概念が現実味を帯びてきた。これにより、彼の3期目の可能性といった話題は薄れ、政権内の若手有力者たちが次期大統領選を見据えた動きを活発化させている。ミラー補佐官の強硬な移民政策、ルビオ国務長官の米州重視戦略、バンス副大統領のテックやアフォーダビリティ問題に関する独自の主張は、トランプ氏の意向を超えて、彼らが次期リーダーとしての独自色を出す試みであると言える。

これらの共和党内の次世代リーダーたちは、互いにライバル関係にあり、それぞれが支持基盤を固めるために独自性を強調することで、党内の権力闘争が激化すると見られる。2026年の中間選挙を終えると、政権の残りの任期はわずか2年となり、政治の焦点は完全に次期大統領選へと移る。これにより、トランプ氏の党内における影響力は低下し、共和党は新たな時代へと移行する可能性がある。中間選挙ではアフォーダビリティ危機への対応が最大の争点となることが予想され、その結果がポスト・トランプ時代の動向を大きく左右するだろう。