2026超予測
中国の台湾侵攻 5つのシナリオ
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2026年1月1日

▼収録日:2025年12月22日 高市総理の安保論議が白熱する中、中国軍が台湾包囲演習を開始。「2026年侵攻」の可能性はあるのか?トランプ政権の動向から日本の「現状維持コスト」まで。東大・松田康博教授が、実弾演習の真意と、中国が狙う「強制的平和統一」のシナリオを徹底解説。 <ゲスト> 松田康博|...
「台湾有事」の実像と日本の役割:冷静な現状認識と効果的な抑止力
現代国際政治の焦点の一つである「台湾有事」は、漠然とした危機感をもって語られがちである。
この複雑な状況を冷静に分析し、その実像と日本が取るべき行動を明確にすることは、私たち自身の安全保障を考える上で不可欠となる。
本稿は、専門家の見解を基に、中国の戦略、各国の対応、そして効果的な抑止力の本質に迫り、台湾有事への多角的かつ実践的な視点を提供する。
Q. 台湾有事とは具体的にどのような状況を指し、その可能性は現在どのように評価されるのか?
「台湾有事」とは、中国が台湾に対し武力を行使する事態全般を指す。
専門家は、現状において全面的な武力衝突としての台湾有事は、日本・米国・台湾三者の強固な抑止力によって阻止されている状態にあると評価する。この「抑止された状態」をいかに維持し続けるかが、国際社会の最大の課題であると認識される。
中国の最終的な戦争目標は台湾の完全な占領であり、もし台湾を支配できなければ、その軍事作戦は失敗と見なされる。
この点を踏まえると、日米台が中国の上陸部隊を効果的に無力化する能力を明確に有していることを示せば、中国は攻撃の第一歩を踏み出せなくなるのだ。
このような相互抑止の関係性が、武力侵攻を抑制する重要な要因として機能している。

しかし、この抑止力が常に盤石なわけではない。中国の急速な軍拡に対応し、地域のパワーバランスを維持するためには、日本もまた防衛力の抜本的な増強を継続する必要がある。
日本の防衛力強化は、自国の安全保障だけでなく、アジア太平洋地域の平和と安定に対する国際的な責任を果たす意味を持つ。
Q. 中国による台湾侵攻の主要シナリオにはどのようなものがあり、それぞれの現実性はどう評価されるのか?
中国による武力行使は単一のシナリオではなく、その目的と手法によって複数に分類される。主に「強制的平和(ハイブリッド戦)」「軍事挑発的武力行使」「大規模軍事演習」の三つが考えられる。
「強制的平和」とは、台湾内部の協力者を利用して指導者を排除し、抵抗を無力化してから占領を図るハイブリッド戦術である。
しかし、これには海上・航空封鎖を含む広範囲な軍事力が要求され、ウクライナ侵攻の例が示す通り、「戦場の霧」による計画の狂いや長期化のリスクが高いため、中国にとって統一実現に向けた選択としては現時点でのハードルは極めて高い。
次に、台湾の独立を阻止することを目的とした「軍事挑発的武力行使」は、短期的な海上封鎖、無人島への上陸、あるいはミサイルの威嚇発射などだ。これらは中国にとって能力的に実行可能であるが、国際的な批判や経済的制裁といった高い政治的・経済的コストを伴うため、安易に踏み切れるものではない。
そして、最も低コストかつ低リスクで繰り返し実行可能なのが「大規模軍事演習」である。
これは実戦形式を取りながらも、実際の武力衝突を回避することで人命の損失やインフラへの被害を防ぐ。2022年のペロシ米下院議長訪台後の演習は、その後継議長の訪台を阻止するなど、中国の軍事的威嚇が実際に国際社会の行動に影響を与えた実例として記憶に新しい。
大規模演習は効果的な政治的メッセージとなるが、ロシアがウクライナ侵攻前に演習を偽装したように、これが本格的な侵攻への前段階である可能性も常に警戒すべきだ。

Q. 台湾有事を防ぎ、地域の安定を維持する上で、日本にはどのような役割が求められるのか?
「台湾有事はすぐに起きない」という分析を「何もしなくても大丈夫」と楽観視することは危険である。
古代ローマの格言「平和を欲さば戦への備えをせよ」が示唆するように、「危機は起こるかもしれない」と信じて準備することで、結果的にそれを抑止できる。
この哲学こそ、日本が地域の平和維持において強く持つべきものだ。
中国が武力による現状変更の意思を示し、着実に軍拡を進めている状況において、日本は単なる対話だけに頼ることなく、それを許さない「実力としての抑止力」を保持する必要がある。
現在の防衛費倍増は、過去20年間の中国や韓国の急激な軍拡に対し、立ち後れていた日本の防衛力を補強し、現状の抑止バランスを「維持するための投資」と捉えるべきである。
さらに、台湾海峡における季節的な制約も無視できない要素だ。冬の強風や夏の台風など、大規模な上陸作戦が可能な期間は、春から秋の間のわずか2〜3ヶ月に限定される。
この情報は、日本や他国が抑止活動や警戒を集中すべき時期を明確にする上で重要だ。具体的な備えとして「反撃能力」の保有や、ミサイル攻撃に耐えうる自衛隊基地の「強靭化」といったインフラ整備を着実に進めることが、日本の未来の安全保障に直結する。
Q. 米国の次期政権が発足し、トランプ氏が当選した場合、台湾を巡る問題にどのような影響があるのか?
トランプ氏が次期米国大統領に当選した場合、米中間の「ディール」の一環として台湾を中国に「譲渡する」のではないかとの懸念があるが、この可能性は極めて低い。
その最大の理由は、台湾が世界の半導体サプライチェーンにおいて決定的な地位を占める「シリコンシールド」、すなわち最先端半導体メーカーTSMCの存在である。
戦略的に重要なこの産業を競争相手である中国に渡すことは、米国の国益に著しく反するため、考えられない選択である。
むしろ、トランプ氏の狙いは、中国と台湾の双方から最大限の利益を引き出す「貪欲さ」にあると分析される。
米国は、台湾の安全保障上の脆弱性を利用し、TSMCなどの工場を自国内に移転させるよう圧力をかけるなど、台湾が持つ経済的・技術的価値を米国に取り込もうとしているのが実情だ。
仮にトランプ氏が中国に譲歩するとしても、それは「台湾独立に反対する」といった口約束程度に留まる可能性が高い。
米国の軍産複合体や議会の強い反発を考慮すれば、台湾への武器売却を停止するなど、本質的な支援を打ち切ることは困難だ。トランプ氏の外交は予測不能な面を持つが、彼の言動が一時的であっても、結果として台湾を見捨てる構造的変化には繋がらないと専門家は見ている。
Q. 「台湾有事」という言葉に対し、私たちはどのような意識を持つべきなのか?
「台湾有事」という言葉が内包する多層的な意味合いを理解し、その発生確率や性質を冷静に判断する力が現代社会に求められる。
感情的な危機感に流されず、提供される情報を精査し、それぞれのシナリオが日本、ひいては世界の安全保障にどのような影響を与えるのかを分析することが重要だ。
そして最も肝要なのは、「台湾有事を起こさせないための努力」である。
そのためには、日本は防衛力の抜本的な増強を通じて、地域全体の抑止力を強化しなければならない。

特に、反撃能力の整備や、ミサイル攻撃に耐えうる自衛隊基地の強靭化といった地道な取り組みが不可欠だ。
これらの備えは、決して武力衝突を誘発するためのものではない。むしろ、中国に対して「台湾への武力侵攻は高い代償を伴い、成功する可能性は低い」と認識させることで、その意思を挫き、平和を維持するための手段となる。
今日の主体的な努力が、5年後、10年後の安全な未来を築くことに繋がる。私たちはこの歴史的な責務を果たすべきである。