PIVOT REPORT
【北九州再興戦略】海老原嗣生が市長に渾身のプレゼン、地方改革のリアル
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2025年12月28日

激変する北九州市の現地レポ。地方創生のプロ、海老原嗣生が市長に再興戦略をプレゼン。さらに入場者数が過去最高を記録した小倉城を視察。"稼げるまち"の現場を見ました。 ▼出演者 武内和久|北九州市 市長 東京大学を卒業後、1994年に厚生労働省に入省。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーやアクセンチ...
北九州市が「日本一面白い街」に変貌する舞台裏:武内市長が語る型破りな戦略
地方都市が直面する課題は山積する。しかし、北九州市の武内市長はこれらの課題を逆手に取り、独自の「エンタメを軸にした街づくり」で全国から注目を集める。型破りなアイデアと実行力で街の潜在能力を最大限に引き出す市長のビジョンに迫る。

Q. 北九州市はどのように「エンタメを軸にした街づくり」を進めるのか?
北九州市は「エンタメを軸にした街づくり」を強力に推進している。その象徴が、歴史ある小倉城の多角的な活用だ。小倉城を単なる歴史的建造物としてだけでなく、プロレスやオペラなどのエンターテインメントイベントの会場とするほか、天守閣で寿司を提供するといった革新的な取り組みも見られる。これは、地域の伝統的な資産に現代的な「楽しさ」を掛け合わせ、新たな価値と集客力を生み出す戦略である。
市長は「越境せよ」という言葉を掲げ、職員には異なる分野の掛け算を奨励する。例えば「防災×エンタメ」といった意外な組み合わせも生まれる。これにより、行政の堅いイメージを打破し、職員のモチベーション向上と市民の主体的な参加を促すことが狙いだ。街の課題をハンデではなく「個性」と捉え、ポジティブな発想で次々と新しい価値を生み出す姿勢が、北九州市の原動力となっている。

Q. 市長のユニークなメディア戦略、「寸止めの美学」とは何か?
武内市長のメディア戦略は「寸止めの美学」と表現される。これは、情報全てを出し切らず、あえて含みを持たせることでメディアの興味を持続させ、継続的な取材と報道を促す高度なテクニックだ。市長は露出の最大化と対話機会の創出を重視し、首長自らが積極的にメディアと関わることで、市政への関心を高める。これにより、通常の首長よりも巧妙なPR戦略を展開しているのだ。
また、市長は記者会見やぶら下がり取材の場で、記者たちの質問力にも言及することがある。単に発表された内容を追うだけでなく、相手の本質を突き、深掘りした質問を投げかける「刀を抜く」気概を求める。この姿勢は、市長が単なる情報提供者ではなく、メディアをも巻き込みながら議論を深め、政策を形にしていくリーダーとしての自覚の表れと言えよう。
Q. 元エリート官僚としての挫折経験は、今の街づくりにどう影響しているのか?
武内市長は元エリート官僚として霞が関で活躍したが、外資系企業への転職で大きな挫折を経験している。そこでは「お金を配ることは知っているが、作ることは分かっていない」と評され、わずか1週間でクビを宣告された。20年近い官僚としてのプライドは打ち砕かれ、バイク便の荷出し係として働く屈辱も味わったという。
しかし、このどん底の経験が、今の武内市長を形作る重要な要素となっている。行政の「お金を配る」論理と、民間企業の「お金を作る」論理の根本的な違いを痛感したことで、行政と経済が両輪で機能する重要性を深く理解したのだ。挫折から這い上がった強靭な精神力は、困難な市政課題に立ち向かい、伝統的な手法に囚われない大胆な街づくりへと繋がっている。

Q. 伝統的な旦過市場の再開発ではどのような革新的な取り組みがされているのか?
100年の歴史を持つ「北九州の台所」こと旦過市場は、大規模な再開発により伝統と革新が融合する新たな拠点へと生まれ変わろうとしている。その核となるのが、市場の建物上層階への北九州市立大学イノベーション学部の誘致である。これは世界初ともいえる市場と大学のドッキングだ。デジタル技術を学ぶ学生が市場を行き交い、実証実験やアプリ開発を通して市場の活性化に貢献することが期待される。
この市場と大学の連携は、周辺地域にIT企業の集積をも促している。過去10年間で231社のIT企業が北九州市に進出したが、そのうち93社は直近2年間に集中した。これは新設されたインテリジェントビル「ビジア小倉」などによるもので、学生が実践的な学びを得る場を提供する。小倉の中心部は、この産学連携によって急速に「デジタル産業ゾーン」としての存在感を高め、新たな産業と雇用を生み出す好循環が生まれている。
Q. 北九州の地理的優位性を活かした市長の3つの秘策とは何か?
武内市長は北九州市の地理的な強みを最大限に活かし、日本を変える3つの大胆な構想を打ち出す。
食のブランド化「五灘二峡」構想
全メーカーが集結「車のテーマパーク」構想
24時間空港をLCCハブ化「休まず行ける2泊得する旅」構想
一つ目は、周辺地域の多様な高級魚を統合する「五灘二峡」構想である。北九州市が「五つの灘と二つの海峡」の中心に位置するという優位性を活かし、この地域で獲れるフグや関サバなどを全て「北九州のブランド」として位置づけ、水揚げから加工、輸送までを一貫して担う一大水産基地を築く計画だ。これにより、他地域にはない広域的な食の魅力を創造する。
二つ目は、自動車産業が集積する豊前地区に「車のテーマパーク」を建設する構想だ。これは、トヨタ、日産、ホンダ、スズキなど全てのメーカーのディーラーを集結させ、顧客が1日で全ての車を見て、試乗し、査定まで受けられる画期的な場所を創出する。メーカーの垣根を越え、消費者の不便を解消することで、地域の自動車産業と観光の両方を活性化させる。
三つ目は、24時間稼働が可能な北九州空港をLCCハブ空港と化す「休まず行ける2泊得する旅」構想だ。深夜・早朝便を充実させることで、会社を終えて出発し、有給を使わずに、さらには宿泊費を抑えて旅行できるという新しいスタイルを提案する。これにより、空港の潜在能力を引き出し、多忙な現代人のニーズに応える新しい旅行体験を提供する狙いがある。

Q. 地方創生に不可欠な「ネガポジ思考」とは具体的にどう実践するのか?
武内市長は、地方創生や街づくりを目指すすべての人にとって、最も重要なのは「ネガポジ思考」であると語る。これは、人口減少や産業衰退といった一見ネガティブに見える課題を、悲観的に捉えるのではなく「新しい時代へのチャンス」と積極的に捉え直すマインドセットだ。課題を乗り越えることが成長の糧となるという考え方は、市長の厚生労働省時代に培われた社会保障政策への理念にも通ずる。
市長が推進する街づくりにおいては、街の抱える多様な要素を「ハンデ」ではなく「個性」として受け入れ、それらをレゴブロックのように組み合わせることで新たな価値を生み出す「ピース論」が基盤にある。これは、多様な人々が支え合う社会のように、それぞれの特性を活かして街全体の魅力を高めるアプローチである。「課題はすべて希望に変わる」という強力なメッセージは、日本全国の地方都市に共通する新たな視点と挑戦を促している。