2026超予測
【2026年超予測:雇用】ジョブ型が揺らぐ/女性部長元年/人的資本経営の退潮
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2025年12月26日

2026年のキャリアと雇用にはどんな変化が生まれるのか?オープンワークの大澤陽樹CEOと雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏に超予測してもらった。 ▼プロフィール 海老原嗣生|雇用ジャーナリスト 大手メーカーからリクルートエイブリックに入社し、新規事業の企画・推進、人事制度設計などに携わる。その後、リ...
2026年、雇用・キャリアに大変革が到来か?予測される未来と日本企業の課題
激動の時代において、日本企業の雇用・キャリア環境は絶えず変化を続けている。これまでも様々な改革が試みられてきたが、真の変革はまだ道半ばと捉える向きは多い。それでは2026年にはどのような雇用・キャリアの未来が待ち受けるのか。
今回は、ジョブ型雇用の実態、女性の活躍推進、労働市場の二極化、そして企業が直面する試練まで、専門家の知見を基にその予測と日本企業が乗り越えるべき本質的な課題について掘り下げて解説する。

Q. なぜ「ジョブ型」は日本で定着しないのか?
ジョブ型雇用が日本で注目を浴びて久しいが、本質的な定着には至っていない。欧米型の人事制度が職務を明確に限定し、等級を「ポスト」に紐付ける一方、日本は限定されない「無限定雇用」を基本とし、等級を「人」に紐付けてきた。
これにより、欧米ではポストが変われば給与も変わるのが一般的だが、日本では個人の能力や実績ではなく、年功によって等級が付与される傾向が根強い。たとえ役職のない社員でも「課長相当」といったグレードが付けられる現象も少なくなく、本来のジョブ型が目指す姿とは異なる「なんちゃってジョブ型」と揶揄される。

日本企業が人事権を手放さず、人への等級付与を続ける限り、一度上げた等級を下げるのは難しい。これが賃金の下方硬直性を生み、真の意味でのジョブ型への移行を妨げる要因となる。結果として、欠員は社内の玉突き人事で補われ、最終的に新卒採用に依存する構造から脱却できないのが現状である。過去30年、成果主義や役割給など様々な人事改革が繰り返されたが、根本構造が変わらぬまま6〜10年で形骸化してきた経緯がある。現在のジョブ型もこの流れに乗り、次の不況が来ればその終焉を迎える可能性は高いと言えよう。
Q. 2026年は「女性部長元年」となるのか?
2026年、日本は「女性部長元年」を迎える可能性が高い。この予測の背景には、過去からの女性の大学進学率や総合職採用の推移がある。
かつて女性の四大進学率は低かったが、2000年代以降に大きく上昇し、現在は男性とほぼ同水準になった。さらに、2005年頃から大手企業の総合職採用において女性が半数を占めるようになり、これらの女性たちがキャリアを継続してきた。

データを見ると、女性は結婚や出産後も退職せずにキャリアを続けるのが主流となっている。2022年時点では、30代前半で大卒総合職の約4割、課長適齢期の30代後半でも約3割が女性を占めた。これは、かつてのように50代以上の管理職層が男性ばかりだった時代からの大きな変化である。特に注目すべきは、2020年の新任課長の約3割が女性であったという事実である。課長に就任してから5〜9年が部長への昇進適齢期とされるため、2020年の「女性課長ラッシュ」が2026年には「女性部長ラッシュ」へと繋がる計算となる。
このように女性のキャリアが「再就職」から「継続」へとシフトしたことで、女性活躍は単なる人数増加といった「量」の段階から、管理職比率といった「質」の時代へと完全に移行し、その象徴が2026年の女性部長元年であると言える。
Q. 労働市場の二極化はどのように進行し、働き方をどう変えるのか?
日本の労働市場は、「人手不足」と一括りに語られることが多い。しかし、実態は大きく異なる。大卒のホワイトカラー市場は人余りの状態にあり、一方で高卒で就職するブルーカラー領域は、絶望的なまでの人手不足に陥っているのが現状だ。
少子化と言われる中でも、大学進学率は高まっており、むしろ大卒者の数は増え続けている。つまり、ホワイトカラー領域で「人手が足りない」と人事が言うならば、それは「人選ができていない」という意味であり、企業の怠慢と捉えることも可能である。
これに対し、高卒者の就職は過去30年で6分の1に激減しており、特に販売、サービス、製造、建設などのブルーカラー職種では、構造的な人手不足が深刻化している。有効求人倍率を見ても、ホワイトカラーは低い値で推移する一方で、ブルーカラーの求人倍率は圧倒的に高い。この明確な二極化を認識し、それぞれの市場特性に応じた対策を講じることが、これからの労働市場の課題を解決する鍵となるだろう。
Q. ブルーカラー市場における「縦の改革」とは何か?
人手不足が深刻なブルーカラー領域においては、「縦の改革」が進むと考えられる。これは、個々の労働者のパフォーマンスを最大限に引き出し、労働生産性を高めることを主眼とした施策である。
その具体的な動きの一つが、最低賃金の大幅な引き上げである。最低賃金が上昇すれば、労働者の賃金は上がるものの、それに追随できない生産性の低い企業は市場から淘汰されることになる。人が不足している中で企業が過剰であるならば、非効率な企業が淘汰されるのは健全な新陳代謝と言える。
実際、「人手不足倒産」という言葉が示すように、生産性の低い企業は従業員を確保できずに経営を維持することが困難になる。これは、短期的な困難を伴う可能性もあるが、社会全体としては労働者がより生産性の高い企業へと移動し、全体の生産性を向上させる合理的なプロセスである。すでに数年前からこの動きは加速しており、2026年には「縦の改革」が完全に定着するだろう。
Q. ホワイトカラー市場における「横の連携」とは何か?
一方で人余りが見られるホワイトカラー市場では、「横の連携」が求められるようになる。これは、より多くの人材が、多様な働き方を通じて組織と関わることを可能にするアプローチである。
具体的には、長時間労働の是正や柔軟な勤務形態の導入が考えられる。例えば、給与を一部減額する代わりに週休3日制を導入するといった試みだ。これは個人の時間的余裕を増やすことで、ワークライフバランスを重視する優秀な人材を惹きつける効果が期待される。
また、顧客からの過剰な要求、いわゆる「無理難題」への対応も「横の連携」の重要な側面となる。全ての従業員が無理難題に対応するのではなく、専門スタッフを置くことで通常業務担当者の負担を軽減し、効率を高める。さらに一歩進めて、こうした無理難題をオプション料金として有料化するモデルも考えられる。これにより、企業の提供価値とサービスコストを明確にし、従業員の働きがい向上にも繋がるだろう。
Q. 人的資本経営やウェルビーイングは一時的なブームに過ぎないのか?
近年注目を集める「人的資本経営」や「ウェルビーイング」といった概念は、長期的な好況による「金余り」が背景にあると考える専門家もいる。これは第一次世界大戦後に人手不足を背景に広まった「福祉資本主義」と共通する構図が見られる。

しかし、歴史を振り返ると、企業は不況が訪れると真っ先にこうした「従業員に優しい」制度から手を引き、コストカットへと舵を切る「手のひら返し」を繰り返してきた。過去10年間に導入された多くの人事制度の半数以上が、その実、短期間で姿を消している事実も、その脆さを示している。
このような背景を踏まえると、現在の人的資本経営のブームも、あくまで好況に限定された現象であり、不況が訪れれば容易に崩壊する可能性を秘めている。特に、AIバブルの崩壊、著作権問題の顕在化、シャドーAIの問題などが複合的に作用し、次の不況の引き金となるリスクも指摘されている。
もし不況が現実となれば、企業は再び短期的な利益追求へと転じ、従業員は「おためごかし」的な企業の美辞麗句に幻滅するだろう。ビジネスパーソンは、企業の言葉を鵜呑みにせず、常に冷静かつ客観的に状況を見極める必要があると言えよう。