PIVOT TALK TECH
「ドラえもん」を本気でつくる研究者
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2025年12月20日

AIは便利な「道具」か、それともドラえもんのような「心のパートナー」か? 日本大学の大澤正彦准教授が挑むのは、2歳からの揺るぎない「ドラえもんをつくりたい」という夢だ。究極の目標は、機能だけではなく「みんなが認めてくれる」社会的承認を得ること。その先にAIと人間が共存する未来を大澤氏が語った。 <...
AIは道具か、心のパートナーか? 「みんなが認めるドラえもん」を創る研究者の挑戦
AI技術の発展は、単なる道具を超え、心を通わせるパートナーの可能性を示唆する。日本大学の大澤正彦准教授は、幼少期からの「ドラえもん開発」を夢に掲げ、AIと人間の関係性を探求する。彼が提唱する「人間とAIが一体となるシステム」や「社会的承認によるドラえもんの定義」から、未来のAI像が明確に見えてくる。

Q. 大澤先生の研究原点と動機は何なのか?
大澤正彦准教授のAI研究の根幹は、2歳からの揺るぎない「ドラえもんを創りたい」という夢にある。彼は研究を、この目標達成のための「手段」と明確に位置づける。幼少期のロボット製作、高校でのプログラミング没頭もその一環だ。AI認知科学を選んだのも、ドラえもん実現に向けた最適解と捉えたためだ。この揺るぎない目標が、彼の独創的なアプローチを支える。
Q. 大澤先生のドラえもん開発哲学はどのように変化したのか?
技術探求一辺倒だった高校時代から、大澤教授は大学で価値観の転機を迎えた。世間とのズレを痛感し、「独りよがりのドラえもんでは誰にも愛されない」と悟る。この経験が、「多様な価値観を学び、みんなで愛されるドラえもんを創る」共創的な哲学へと導いた。研究は手段であり、究極の目的は、社会全体から受け入れられる存在を生み出すことである。

Q. 人間とAIを一体システムと捉える「Human Agent Interaction」とは何か?
従来のAI研究がAI単体知能の向上を目指す中、大澤教授は「Human Agent Interaction(HAI)」を提唱する。これは人間とAIを、個別の存在ではなく、相互に作用し合う「一体のシステム」として捉えるアプローチだ。ドラえもんがのび太との関わりの中で真価を発揮するように、AIの知能も人とのインタラクションを通じて初めて輝く。全体システム設計により、知能の本質、そして人間自身の理解も深まる。
Q. 「弱いロボット」の概念は人間とAIの関係性にどのような影響を与えるか?
HAIを象徴するのが「弱いロボット」だ。ゴミを自力で拾えないロボットは、その不完全さゆえに人々の「助けてあげたい」感情を誘発し、自発的な協力を促す。AIが万能でなくとも、人間が歩み寄り、失敗を許し、共に行動できる可能性を示唆する。AIが単なる道具ではなく「相棒」となる未来である。車載AIプロジェクトも、AIを相棒と捉え、不手際を許容しドライバーとの新たな関係構築を目指す。
Q. 「ドラえもん」の真の定義とは何か?
長年の探求を経て、大澤教授はドラえもんを「機能の集合体」と定義しないと結論付けた。個々人で異なる理想像を持つため、機能基準では万人が納得するドラえもんは創れないからだ。彼が到達した定義は、「みんなが『こいつがドラえもんじゃん』と当たり前に認めてくれること」、すなわち「社会的承認」である。これは人間関係における友達の定義に似る。ドラえもんは、最初から完璧に設計されるのではなく、人々の間で「育てられ、認められる」ことで存在となる。

2014年開始の30年プロジェクトは現在1/3を終えた。定義の明確化やコア技術基盤の確立に強い手応えを感じており、着実に目標へ向かう。
Q. AIが「道具」ではなく「仲間」となるために何が必要か?
AIが「道具」か「仲間」かは人間の認識に依る。哲学者のダニエル・デネットは、対象を物理法則で捉える「物理スタンス」、使い方で捉える「設計スタンス」、心や意図を読み取ろうとする「意図スタンス」の3つを提唱する。AIを意図スタンスで認識させることで、人間はそれを仲間として扱う。

大澤研究室の「ドラドラ」としか話せないミニドラ型ロボットが良い例だ。このロボットは、曖昧な「準自然言語」で応答し、人間が「何を言いたいのだろう?」と意図を推測せざるを得ない状況を作り出す。これにより、機能を超えた深いコミュニケーションが生まれ、人間側がロボットを「察しようとする」関係性が構築される。人間側の「意図を読み取る心」を引き出すことが、AIを真の仲間とする鍵となる。
Q. 日本の文化がAI研究に与える影響は大きいのか?
他者の意図を察し、空気を読む日本のハイコンテクスト文化は、意図を読み合うHAI研究において世界的な強みである。国際学会での関連論文の40%を日本が占める事実が、その最先端のポジションを裏付ける。言葉を越え心を通わせ、不完全さを許容し支え合う日本の関係性が、次世代パートナーAI開発に直結する。日本は、技術に加え文化的側面を融合し、AIと人間が共存する未来を主導する可能性を秘める。