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【国宝・鬼滅の刃が大ヒット】東宝の邦画、快進撃の理由
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2025年12月12日

22年ぶりに邦画実写作品の興行収入記録を塗り替えた『国宝』を始め、今年エンタメ業界を牽引した東宝。なぜ今邦画が好調なのか?今後のIP展開とグローバル戦略は?取締役社長の松岡宏泰氏に聞いた。 <ゲスト> 松岡宏泰|東宝 取締役社長 1994年 東宝東和入社 同社社長などを経て2022年から現職 曽祖...
『国宝』『鬼滅の刃』が大ヒット:東宝の邦画、快進撃の理由
22年ぶりに邦画実写作品の興行収入記録を塗り替えた『国宝』を始め、今年エンタメ業界を牽引した東宝。かつては興行・配給中心の堅実経営を特徴とした同社だが、近年、自社製作の強化やグローバル展開への積極投資など、大きな変革期を迎えている。長年の歴史の中で培われた東宝の揺るぎない「芯」とは何か?そして、変わりゆく市場の最前線で、東宝はいかにして次なる成長を描くのか。同社の松岡宏泰社長へのインタビューから、その戦略と展望を探る。

Q. 東宝映画の記録的ヒットの裏側には何があるか?
東宝の映画事業は中間決算で過去最高の数字を記録するなど絶好調であり、「国宝」や「鬼滅の刃」などの作品が大きく貢献した。コロナ禍を経て観客が映画館に戻った素地はあったものの、ここまでの特大ヒットは予測が難しかったと社長は語る。ヒットの要因は、現代の消費者が「見たい」と感じる強い作品に出会った際、SNSを通じて情報を爆発的に拡散し、何度も映画館に足を運ぶという行動パターンにあるようだ。この「弱肉強食」の市場において、東宝はたまたま強い作品に巡り合うことができたのが好調の大きな理由だとする。
Q. 『国宝』の大ヒットから東宝は何を学んだか?

高い製作費やターゲット層の狭さからビジネスリスクが高いと判断され、東宝が一度は制作から手を引いた映画『国宝』は、最終的に大ヒットを記録した。結果として、この判断には「後悔はある」と社長は率直に認める。しかし、当時の堅実な経営判断としては正しかったとの見方を示す。
東宝は歴史上、映画産業が斜陽化した際に制作部門から撤退し、興行と配給に強みを持つ堅実な会社としての地位を確立してきた。しかし、近年、外部パートナーからの配給作品だけではさらなる成長が難しい局面を迎えた。この変化の背景には、「ゴジラ-1.0」などの100%自社制作作品が大きな成功を収めた経験がある。これにより、自社でリスクを取って制作することの大きな可能性と「体力」を再認識した東宝は、堅実一辺倒の姿勢から脱却し、攻めの経営へとシフト。これは単なるギャンブルではなく、蓄積された体力と過去の成功体験が後押しする戦略的な意思決定だとする。
Q. 傑作を生み出すために、東宝はどのような戦略を描くか?

素晴らしい作品を倍増させるためには、企画の「数」を増やすことが不可欠だと東宝は考える。同社は日本における強固な興行網と配給網、そして近年拡大する海外展開力を活用することで、投資回収のリスクを低減しつつ、作品成功の可能性を高められると分析している。特に、将来自社のIPに繋がる可能性のあるオリジナル作品の創出に力を入れているようだ。このため、アニメ部門だけでなく、実写映画のオリジナル企画に特化した開発チームを新設し、多くのユニークなアイデアを募り、挑戦の機会を増やす方針である。これは数多くの打席に立つことでホームランを増やす発想だと言えるだろう。
Q. グローバル市場開拓に向けたパートナーシップやM&A戦略とは何か?
グローバル市場で事業を展開する際、東宝単独で全世界をカバーすることは困難である。そのため、Netflixやソニーなどの国内外の企業との多様なパートナーシップが不可欠だと考えている。自社に不足している機能や地域での展開力を補完するため、プロジェクトごとに最適な提携を模索する「全方位外交」を進めているようだ。M&Aについては、特に成長分野であるアニメやIP関連企業を主なターゲットとし、自前で育てるのに時間がかかる分野や、苦手分野を補強する目的で行われている。これは、明確な不足を特定し、補完していく戦略的なアプローチである。
Q. 東宝のビジネスモデルはなぜ世界的にユニークなのか?
東宝のビジネスモデルは、製作・配給・興行を垂直統合し、さらにアニメ、演劇、不動産まで手がける点において世界でも類を見ないユニークさを持つ。米国では法律で垂直統合が制限されるが、日本ではこれが許されている。東宝はこの特異な事業形態を活かし、一つのIPを映画、アニメ、舞台へと多角的に展開できる「総合力」を強みとしている。また、ヒットが予測困難なエンターテインメント事業において、安定的な収益源である不動産事業を持つことは、高リスクな映画制作への挑戦を可能にする重要な安全網となっている。この盤石な基盤が、東宝の攻めの経営を支えているのである。
Q. 創業時から変わらない東宝の理念とは何か?

東宝の創業者である小林一三が92年前に掲げた「娯楽(エンターテイメント)を世界中の大衆に提供し、その方たちが喜んでくださることこそが私たちの喜び」という理念は、今も変わらず同社の根幹にあると社長は語る。この普遍的な「芯」があるからこそ、東宝はテクノロジーや市場、文化の変化に柔軟に適応し、挑戦を続けることができる。また、「ゴジラ」が海外共同製作の頓挫から生まれた逸話に象徴されるように、東宝は創業期から世界展開への志を持っていた。過去には海外事業で大きな失敗を経験し、消極的になった時期もあったが、現在は「3度目の正直」としてグローバル市場へ再び挑んでいる。世界基準の制作費を投じ、場所を問わず面白いアイデアを形にする姿勢は、創業者からの連綿たる精神の継承だと言える。