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“総理の通訳”が語る できる人の英語
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2025年12月3日

外交の場でも重要な鍵を握る英語戦略。 元外交官でLearner's Learner代表・黒川公晴氏は価値ある英語力には三つの柱があるという。 ビジネスに生きる英語を身につける秘訣とは? <ゲスト> 黒川公晴|Learner's Learner代表・ミネルバ認定講師 ペンシルバニア大学組織開発学修士...
「総理の通訳」が語る、AI時代を勝ち抜く英語戦略:ビジネスパーソンが持つべき「本物の英語力」とは
グローバル化が加速し、AIによる翻訳技術が目覚ましい発展を遂げる現代において、私たちは英語とどのように向き合うべきであろうか。「英語学習の必要性は薄れるのではないか」との疑問も浮上する中、元外交官で数々の首相や大臣の通訳を務めてきた黒川公晴氏は、むしろ今こそ「本物の英語力」が求められると語る。

本稿では、彼の著書「総理の通訳が語る世界で戦うための英語戦略」を基に、単なる語学スキルを超えた、国際ビジネスの現場で真価を発揮するための英語戦略と心構えをQ&A形式で解説する。
Q. AI時代において「真の英語力」を身につける意義とは何か?
AIの進化により、単純な読み書きや直訳は容易に代替される。しかし、黒川氏は、国際舞台で人々の心を動かし、納得させ、感動させるコミュニケーションは、自らの言葉で発する英語の力でしか成し遂げられないと主張する。人対人の対話において、人間が発する英語の力は普遍的に重要であり、今後もその価値は第一であり続けると指摘した。
日本人は義務教育を通じて英語に多大な時間を投資しているため、話せないと意識していても潜在的な強みを数多く持っている。単に日常会話ができるレベルに留まらず、自分の強みと英語を掛け合わせ、全員が上級レベルの英語力習得を目指すべきである。
Q. 外交官としての通訳担当官は、どのような「一流の英語技術」を持つのか?
外交官が大使館や総領事館に勤務するのに対し、通訳担当官は外務省本省で働く職員が大臣や総理大臣など要人の通訳を本業と兼任する形である。
これは、情報の機密性と、外交の現場で交わされるやり取りの雰囲気や内容に対する深い理解が必須となるため、外部の通訳者に委託せず内製化されていることが理由である。

このキャリアパスは非常に厳しく、失敗が許されない状況で実績を積むことで、政務官から大臣、最終的には総理と、担当する要人の格が上がっていく。
一流の通訳技術は単なる言語の変換を超越し、相手の発言の文脈や背景を深く理解し、その意図や感情までも汲み取って最適な言葉を選ぶ。
例えば、日本語の「ようこそ」一つを取っても、相手が初来日なら "Welcome"、再訪者なら "Welcome back"、訪問団全員に向けてならば "Welcome to you all" と、状況に応じて訳し分ける。言葉の裏に隠されたニュアンスを読み解き、それを正確に伝える高度な思考が求められる。
Q. 総理の通訳も務めた外交官が語る「真の英語力」を構成する三つの要素とは何か?
私たちが一般的に「英語が上手い」と表現する状態は、話せる、聞き取れるといった語学スキルに焦点を当てがちだ。しかし、真に国際舞台で成果を生み出す「英語力」は、次の三つの柱が掛け合わさることで成り立つと黒川氏は指摘する。

語学スキル:聞く、話すといった言語の技術的な側面。
実践スキル:事前の準備、相手の文化や背景、目標を理解する能力など、現場での適用力。
内面:自信や意欲、ポジティブなマインドセットといった、個人の精神的な要素。
これらの三要素を総合的に高めることで、たとえ流暢さに自信がなくても、十分現場で成果を出すことが可能である。特に、経営層として海外とやり取りする機会が増える50代以降において、英語力と年収の間には顕著な相関がみられ、約300万円もの差が生まれるという調査結果もある。国内では優秀なビジネスパーソンでも、海外に出ると萎縮してしまうケースは、これらの「実践スキル」や「内面」の不足に起因することが多い。
Q. 国際舞台で結果を出すために、学習者はどのような「心構え」を持つべきか?
国際社会で活躍するためには、以下の七つの心構えが重要となる。
全員が上級レベルを目指す。AIが代替できない、人との感情的な繋がりを生むコミュニケーションの頂点を目指す姿勢が不可欠だ。
憧れの力を駆動させる。心理学でいう代理体験のように、具体的なロールモデルを見つけ、「この人のようになりたい」という内発的な動機付けをすることが効果的だ。
単語よりまず中学文法。語彙力をいくら増やしても、英語の基本的な構造(SVOC)を理解していなければ効果的に使いこなせない。文法の土台を徹底的に固めることが先決である。
ポジティブな体験を作り出す。学習初期段階でワクワクするような成功体験(短期間の留学、好きな映画や音楽を通じた学習など)を意識的に持つことで、継続的なモチベーションに繋がる。
「試合中に訓練する」。実践の場に身を置き、自ら推察する生成効果を活用することが重要だ。例えば、知らなかった単語に出会ってもすぐに辞書を引かず、文脈から意味を類推する習慣をつける。
質より量を経験する。実際の英語の環境に多く身を置くことで、失敗を恐れず多くの機会から学びを得る。いかに実践を想定した学習を行うかがカギとなる。
失敗を恐れず、むしろ失敗を求める。日本人は失敗や「恥」を過度に恐れ、英語を話す機会を失いがちだ。しかし、恥をかく経験は上達への強い欲求の裏返しであり、「何くそ」という向上心へと転化させる原動力となる。

Q. 「勝負の8割は準備で決まる」と言われる「英語実践戦略」の具体策とは何か?
外交交渉やビジネスにおける重要なコミュニケーションの成否は、その8割が準備段階で決まると言われている。以下に具体的な実践戦略を述べる。

KFAでコミュニケーションのゴール設定をする。コミュニケーションの目的を、「相手に何を知ってほしいか (Knowledge)」、「どう感じてほしいか (Feeling)」、「どう行動してほしいか (Action)」の三つの観点から明確にする。これが戦略的な会話構成やトーンの決定に繋がる。
徹底した情報収集と聴衆理解。相手の目標、動機、文化背景、知識レベル、懸念事項などを事前にリサーチし、理解を深める。例えば、1時間の会談のために200ページもの資料を読み込むこともある。これは、相手がすでに知っていることを無駄に説明したり、逆に専門知識不足の相手に高度な話をしたりするミスマッチを防ぐために不可欠だ。
綿密な予行演習による自信の醸成。口を慣らす以上に、「ここまでやった」という絶対的な自信を築くことが、本番でのパフォーマンスと説得力に直結する。プレゼンや会談を何度もリハーサルすることで、現場での落ち着きと確信が生まれる。この「準備万端の感覚(Readiness)」が高まると、話し方や態度に自信が滲み出るものだ。
心身の準備を万全にする。緊張は身体を強張らせ、声や表情に悪影響を与えるため、話す直前の心身のリラックスは重要だ。口の運動、表情筋のほぐし、背中のマッサージなど、独自のルーティンで緊張を解き、最高のパフォーマンスを引き出す準備をする。
臨機応変な対応。例えば、相手が早口で質問し、内容が理解できなかった場合でも、「黙りこくらない、安易に謝らない」ことが肝要だ。沈黙や過剰な謝罪は自信の欠如と見なされかねない。状況を明確化する質問("Could you clarify that?")や、時間を稼ぐ言葉("That's an interesting point.")を使い、即座に返答できない時も堂々と場を繋ぐ技術が求められる。]
Q. 言葉がとっさに出てこない、沈黙してしまいがちな場面でも対応力を上げる秘訣は何か?
質問をされたが、とっさに答えが分からない場合、最も重要なことは「黙らないこと」と「謝らないこと」だ。
言葉が出てこなくても、会話を途切れさせない工夫をする。例えば、「それは興味深い質問だ」「少し考える時間をいただけますか」といったフレーズで時間を稼ぐ。
また、初対面の相手に話しかける際に話題が見つからない場合は、共に体験している事柄や身の回りのこと(例: "Beautiful day, isn't it?")から入ると良い。
共通の話題を見つけることで相手も会話に応じやすくなる。自分の専門性やネットワークを駆使し、あらゆる状況で臆せずコミュニケーションを続ける姿勢が、国際社会で価値を発揮する鍵となる。