FOOTBALL LEGEND
川淵三郎:サッカー界の未来のために、これだけは言いたい
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2025年11月30日

サッカー界のレジェンドたちに“サッカーの真髄”を語ってもらい、その経験、知恵、未来へのビジョンを次世代へとつないでいく新番組「フットボールレジェンド」。初回はJリーグ初代チェアマンの川淵三郎氏に話を聞いた。 <ゲスト> 川淵三郎|Jリーグ初代チェアマン 第10代日本サッカー協会会長 早大、古河電工...
日本サッカー界の過去・現在・未来を語る川淵三郎氏の視点
日本サッカー界の発展に尽力し、「Jリーグ生みの親」として知られる川淵三郎氏が、日本代表の躍進、Jリーグが抱える課題、そして若手育成の重要性について率直な意見を述べた。
自身の経験に基づいた深い洞察と、未来を見据える独自の視点から、日本サッカー界の過去、現在、そして今後進むべき道をQ&A形式で考察する。
歴代監督の秘話から現代サッカーが抱える問題点まで、その核心に迫ろう。

Q. 森保ジャパンが今、目覚ましい進化を遂げているのはなぜか?
森保監督の最大の強みは精神的なタフネスにあると川淵氏は語る。
代表監督は批判の嵐に晒されるのが常だが、「広島で慣れている」「家族も平気」と意に介さない姿勢が長期政権を可能にする。一流クラブでプレーする欧州組選手の意見を取り入れつつ、自身の戦術へ誘導する手腕はまさに才能だ。

W杯予選の不振時に「優しすぎるのでは」と問われた際、「僕は冷酷です」と返答した言葉には、揺るぎない自信と決断力が宿っていた。ブラジル戦で敵陣深くでのハイプレスを敢行した采配は、見た目と異なる度胸と腹の座り方を示している。
Q. 日本サッカーが世界でさらに強くなるために、最も欠けているピースは何だと考えるか?
日本サッカーが世界で頂点を目指す上で最も不足しているのは「個人の技術力」だと川淵氏は指摘する。
組織力は世界レベルだが、1対1で相手を剥がす力や、囲まれてもボールを失わないといった個人の能力は依然として低い。これを克服するためには、幼少期からのフットサル教育が極めて重要になるだろう。
狭いコートでプレーすることで、ブラジル人選手のように足裏を使った巧みなボールコントロールや、自然と連携する「3人目の動き」が身につくと考えている。
Q. Jリーグの観客動員数が増えない根本的な原因は何だと考えるか?
川淵氏はJリーグの成功の指標を1試合平均2万5000人の観客動員数に置いているが、現状はまだ物足りないと感じている。
特に平日の集客が弱いのは大きな課題である。観客がスタジアムに「サッカーを観に行く」だけでなく、「行くこと自体が楽しい」と感じるような、エンターテイメント性の高いスタジアム体験の創出が不足している。

先日訪問したBリーグのアリーナを例に挙げ、単なるスポーツ観戦に留まらない、多角的な魅力を提供することの重要性を強調した。
Q. Jリーグのクラブ経営者がBリーグの成功から学ぶべき点とは何だろうか?
Bリーグの急成長は、かつての分裂時代に「明日払う給料もない」ような窮地を経験した経営者たちの「血の滲むような苦労」によって支えられていると川淵氏は分析する。
彼らはハングリー精神と起業家的な視点を持ち、地域に密着した活動やエンターテイメント性の追求に必死で取り組んだ。これに対し、Jリーグ創設当初は親会社からの出向役員が社長を務めるケースが多く、企業としての論理が優先されがちであった。
スポーツクラブの経営には専門性と覚悟が必要であり、トヨタが外部のプロ経営者を招聘した事例を挙げ、経営トップの意識改革がJリーグの発展に不可欠であると指摘した。
Q. ジーコ・ジャパンの明暗と、オシム監督就任時の川淵氏の決断には何があったのだろうか?
ジーコ・ジャパンの最大の結束は、中田英寿ら主力が不在だったアジアカップで見られたという。ブラジル人監督特有の、スタメンとしか会話しないマネジメントスタイルは、日本人には合わず、ドイツW杯でのチームの緩みに繋がったと推察する。
オシム監督就任の経緯は意外なものだった。
ドイツW杯敗退後の記者会見で、次期ユース監督の名前を度忘れした川淵氏が、うっかり「オシム」の名前を口走ってしまったのが真相である。
その後、オシム監督が病に倒れ、家族が息子の監督就任を強く要望した際も、「絶対にない」と明確に断言。トップリーダーとしての非情な決断が求められる場面もあったことを明かした。
Q. 岡田武史と西野朗の両監督について、その人物像と決断の背景には何があったのだろうか?
岡田武史氏を川淵氏は「サッカー界を代表するインテリ」と称している。高校時代からドイツでのプロ入りを志すなど、常にサッカーを突き詰め、深く学ぶ姿勢こそが彼を特別たらしめている。Jリーグでの優勝経験がないにもかかわらず代表監督に抜擢されたのは、その人間性と探究心が評価されたためだろう。
一方、西野朗監督のワールドカップでの采配は歴史的だった。ポーランド戦で1点リードされたまま試合を終えるという、日本人には考えられない決断は、失敗すれば大バッシング必至の状況だったが、それを「腹の据わり方」で見事にやり遂げた。この度胸こそが、彼を歴史に残る監督としたと評価している。
Q. 将来を見据えた選手育成のために、子供たちがスポーツをする環境をどのように改善すべきか?
現代の子どもたちの運動能力低下に危機感を抱く川淵氏は、「校庭の芝生化」こそがその根本的な解決策だと提言する。
芝生があれば、子どもたちは裸足で走り回り、相撲を取るなど、遊びの中で自然と体力と運動能力を養う。これは決してサッカーのためだけでなく、子どもの健全な発育、そして自ら考えて遊ぶ創造性を育むために不可欠だ。一部で「野球ができない」などの反対意見が出るが、それはナンセンスだと一蹴する。

水やりや芝刈りは地域のシニア世代に協力を仰ぐことで、高齢者の生きがい創出と世代間交流にも繋がる、と新たな社会モデル構築への展望も示した。
Q. 現代サッカーにおいて、審判の判断基準に関して改善すべき点があるか?
技術や戦術については語る立場ではないと前置きしつつも、川淵氏は現代サッカーにおける「審判の基準」に対し、怒り心頭であると述べる。
ユニフォームを掴む行為や、審判への過剰な抗議をもっと厳しく取り締まるべきだという。
かつては少しの接触でもファウルが取られた時代があったが、今はその基準が甘くなりすぎ、試合の面白さを損なっていると考えている。例えば、審判に文句を言う選手は即座に一発退場させるくらいの厳格な対応が、サッカーをよりクリーンで面白いものにすると強く訴えている。