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先進施設はオアシス?「産業に競争を」
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2025年11月26日

介護人材の不足や介護離職が問題になる現代。 産業構造に介護の質が上がらない原因があった? EEFUL代表・森山穂貴氏に介護の今を直撃。 <ゲスト> 森山穂貴|EEFUL ホールディングス代表 東大社会心理学研に在籍。LINEでPM業務に従事。トークタブ企画や実装に携わる。2023年にemomeを創...
日本がリードする未来の介護とは?世界の最先端から見る変革への道筋
超高齢社会に突入した日本で、介護は社会全体の喫緊の課題だ。これは多くの課題を生み出す一方で、新たなビジネスチャンスと社会変革の可能性を秘める。世界の先進事例からヒントを得つつ、日本の介護の未来について考える。

本稿では、海外で注目を集める「CCRC」という概念から、日本の現状、そしてこれからの介護業界が目指すべき方向性を深掘りする。
Q. 海外で注目される「CCRC」とは一体何か?
CCRC(Continuing Care Retirement Community:継続介護付きリタイアメントコミュニティ)は、老後の生活から終末期まで一貫したサービスを提供する大規模複合施設である。郊外や砂漠地域に、数万人が居住可能な規模で建設され、病院、スーパーマーケット、レストランなどを併設する一つの「街」のような存在だ。利用者はそこでコミュニティを形成し、必要なサービスをすべて受けられる、いわば自己完結型のエコシステムを享受する。

そのモデルは国や地域によって多様である。例えばアメリカのアリゾナ州から広まったCCRCは、オーストラリアでも導入されている。ハワイではリゾート型の施設が見られ、中国では生命保険とセットになり、保険加入が入居権獲得の条件となるケースもある。各国が自国の文化や制度に合わせて柔軟な形態を取る点が、CCRCビジネスの幅広さを示している。
Q. なぜ海外のCCRCは元気な高齢者をターゲットにしているのか?
海外のCCRCが日本の介護サービスと大きく異なるのは、主要ターゲットを元気な高齢者に置く点である。日本では要介護認定を受けた高齢者がサービス対象全体の約10%を占める一方、海外のCCRCはその外側にいる元気な90%の高齢者をビジネスチャンスと捉える。
CCRCが提供するサービスは、身体介助のような狭義の介護にとどまらない。むしろ、エクササイズ、映画鑑賞、旅行といった娯楽や社会活動が中心だ。高齢者の生活の質(QOL)を高める「オアシス」として機能することで、彼らの多様なニーズに応えている。これにより、活動的な高齢者の生きがいを創出し、彼らがより長く自立した生活を送れるように支援するのだ。
Q. なぜ日本でCCRCの導入は進んでいないのか?
日本でCCRCの導入が難航している理由はいくつか存在する。まず、地理的な制約だ。アメリカの郊外や砂漠のような広大な土地と異なり、日本では大規模な施設を建設できるまとまった土地を確保するのが極めて難しい。
さらに、日本の高齢者は地元への愛着が非常に強く、住み慣れた地域を離れることに心理的な抵抗を感じやすい。過去には石破茂氏が地方創生の一環としてCCRCの導入を試みたが、たとえ魅力的な施設であっても、地方移住を促すことのハードルは高かったのが現状だ。「介護施設に入ったら出られない」といったネガティブなイメージも、この動きを阻害する一因となっている。
Q. 日本版CCRC(CCRCC)はどのようなコンセプトを持つのか?
日本版CCRCは、既存のインフラを最大限に活用し、足りない機能をソフトサービスで補う「都市改造型」の構想だ。これはCCRCに「City」のCを加え、「CCRCC」と称される。新たに大規模な施設を作るのではなく、すでに存在する街の中で、75歳から85歳までの比較的元気な高齢者層(アクティブシニア)に焦点を当て、民間が介入しながらコミュニティ形成をサービス化していくことを目指す。

例えば、美容サロンの事例を見ると、ネイルや手作り料理といったサービス自体よりも、利用者間の「コミュニケーション」に最も魅力を感じているという。美容に限らず、将棋や麻雀、あるいはアートや健康プログラムなど、何かの趣味をきっかけとして人が集まる場を創出することが、高齢者の社会参加を促す上で極めて有効となる。
こうした発想は、高額な新規投資なしでも実現可能だ。マンションの1階にキッズスペースがあるように、高齢者向けの交流スペースを併設することで、居住価値を高め、新しい需要を生み出すことができる。これにより高齢者のQOLが向上し、経済活動が活発化すれば、最終的には介護費抑制にも繋がる可能性を秘める。多世代交流や、マンションに住み続けるためのコミュニティサービスを提供する仕組みこそが、日本版CCRCの鍵と言えよう。
Q. 介護業界の賃上げの背景と、競争原理を巡る議論とは?
政府による介護業界の賃上げは、重要インフラである介護産業の持続性を確保し、労働力の供給を安定させる狙いがある。同時に、介護従事者が日本の総労働人口の数パーセントを占める巨大なセグメントであるため、彼らの賃金向上は消費活動を活性化させ、日本経済全体の賃上げへと波及効果をもたらすというマクロ経済的な視点も背景にある。

しかし、介護業界では競争原理が十分に働いていないという問題も存在する。特にコロナ禍における融資により、本来市場原理で淘汰されるべき事業者が延命してしまい、M&Aや事業承継の機会を奪う結果となった。これにより、コロナ禍で企業倒産件数が減少するという一時的な歪みが生まれたが、それは健全な新陳代謝を阻害し、非効率な経営体質の温存を許してしまう。
Q. 「人手不足」の真の課題は何か?解決策はあるのか?
介護業界で頻繁に指摘される「人手不足」の根本には、「経営者不足」というより深い課題がある。他の産業では当たり前である、魅力的な事業を創造し、産業のイメージを発信し、従業員のためのキャリアパス(キャリアラダー)を構築できる優秀な経営人材が不足しているのだ。これにより、人材の定着や確保が困難になり、「人手不足」として表面化しているにすぎない。
この課題を解決するためには、競争原理を促進しつつ、M&Aを通じて優秀な経営者が多様な事業所の運営に携わる環境を整備することが重要だ。M&Aを奨励し、事業承継の障壁を取り除くことで、経営ノウハウを持つプレイヤーが業界に参入しやすくなり、全体的なサービス品質の向上と、持続可能な介護インフラの実現へと繋がるだろう。
Q. 後悔しない介護施設の選び方には何が重要か?
介護施設は大きく「入居型(老人ホームなど)」と「在宅型(通所・訪問介護)」に分けられる。入居型は比較的競争原理が働きやすく、高級層から安価なものまで多様な選択肢があり、情報も多い。しかし、在宅型サービスは未だ競争が働きにくく、最適な選択が難しいのが実情だ。このような状況で後悔しない選択をするためには、家族が主体的な情報収集と検討を行うことが不可欠である。

サービスを選ぶ際には、ケアマネージャーの提案を鵜呑みにせず、自ら介護情報プラットフォームを活用したり、複数の施設を見学したりすることが大切だ。その上で、自分たちの希望や状況を具体的にケアマネージャーに伝えれば、彼らも要望に応じた情報提供や調整をしてくれる可能性が高い。受け身ではなく、積極的に対話する姿勢が、より良い介護サービスを見つける鍵となる。