PIVOT TALK BUSINESS
年間1000本制作のプロが教える、面白いポッドキャストの作り方
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2025年11月14日

世界中で人気が向上しているポッドキャスト。面白いポッドキャストを作るためには、何が必要なのか?プロデューサーや聞き手に求められる能力は何か?年間1000本を制作する、ポッドキャストプロデューサーの野村高文氏に聞いた。 ▼プロフィール 野村高文|Podcastプロデューサー 東京大学文学部を卒業。P...
ポッドキャストプロデューサーが語る!AI時代に「あなただけの声」を届ける秘訣
近年、ポッドキャストがビジネス界で注目される。多忙な現代人が「ながら聴き」で可処分時間を効率よく使う手段となるからだ。高い視聴維持率と深い関係性構築能力は、他のメディアにない強みを持つ。
プロデューサー野村高文氏は年間1000本もの番組を手掛ける。AI時代、個人や企業がいかに声を発信し、聴衆を惹きつけるか。彼の知見から、ポッドキャスト制作と情報発信の真髄を探る。

Q. ポッドキャストは現代において、なぜこれほど注目されているのか?
ポッドキャストの最大の強みは、「ながら時間」にコンテンツを届けられる点にある。多忙な現代人がスマホ画面を見ずに耳だけでインプットできる手軽さは大きい。統計では、85%以上が何か別のことをしながら聴取するという。動画や記事と異なり、これはリスナーの「ながら時間」を獲得する独自の方法だ。
この特性は、高い視聴維持率とリピート率に直結する。30分のコンテンツでも7〜8割が最後まで聴き、他のエピソードを聴く確率も高い。情報密度の高い複雑な話、企業理念、創業者哲学といった深いメッセージを伝えるのに適する。短時間では伝えきれない本質的価値を醸成し、リスナーと継続的関係性を築く上で、最適なプラットフォームだ。
Q. 記事や動画と比較して、ポッドキャストならではの特性とは?
メディア選びでは、各媒体の特性理解が不可欠だ。記事は情報密度が高いが、読了にエネルギーを要し、読者は減少傾向。動画は発見されやすい一方、視聴維持が難しい。ポッドキャストは深い情報を届けられるが、発見されづらい弱点がある。
近年注目されるのが「ビデオポッドキャスト」だ。これは動画の発見されやすさと音声の高い視聴維持率を両立させる。動画として発見され、その後耳だけでも楽しめる形式は、双方メディアの長所を最大化する「最強のフォーマット」となり得る。

日本のポッドキャスト普及率は米国の約10年前の水準で、成長ポテンシャルは大きい。プラットフォーム拡大期に参入すれば先行者利益に繋がり得る。成長加速の鍵は、日本版ジョー・ローガン的カリスマ的存在や、ポッドキャスト発の一次情報がニュースとなるキラーコンテンツの出現にかかる。お笑い系が人気を牽引するが、ビジネスや政治領域でも同様の現象が起きれば、市場はさらに躍進するだろう。
Q. 優れたポッドキャスト番組を作るための鍵は何だろうか?
面白いポッドキャストは、「発見」「理解」「共感」の三つの価値と、音声特有の「空間設計」という四つの要素から構成される。
発見:知らなかった新しい情報を提供する価値だ。
理解:物事のメカニズムや背景を分かりやすく解説し、深く腑に落ちさせる体験。
共感:リスナーが「自分も同じだ」と感じる安心感を与える。
これら三つの価値に加え、ポッドキャスト特有の鍵は「空間設計」である。話し手同士の親密な雰囲気や、予定調和でない脱線が許容される空間の価値を指す。動画と異なり、音声だけの空間では話し手はリラックスし、自然な関係性が生まれやすい。これにより、リスナーは「秘密の会話」を覗き見ているような没入感を得る。「密室感」や「内輪感」が熱心なファンを生み出す強力な要因だ。

良い番組はこれらの要素をバランス良く含みつつも、特に「発見」「理解」「共感」のいずれかを主軸に据えるべきだ。「理解」を軸にしつつ、新しい知見の「発見」や、話者同士の自然な会話から「共感」を誘うと、より魅力的になる。攻撃的議論でなく、専門テーマでも楽しそうに語り合う雰囲気がリスナーには求められる。
Q. AI時代に「自分だけの語り」を見つけるには、何から着手すべきか?
AIの進化により、正確な情報提供や要約は得意領域となった。人間が提供すべき価値は、客観的事実でなく「偏り」、つまり個人の独自の視点や経験に根ざした意見である。正論だけでは聴衆を惹きつけがたい。「好き」という感情や経験に基づく「偏り」こそが、AIには模倣不可能なコンテンツの源泉となるのだ。
その「あなただけの語り」は、主に次の三つの源泉から見つかる。
職業:誰もが自身の職業では世間平均より詳しく、ニッチな分野でも専門性は独自性を持つ。外部が「面白い」と感じる専門知識を、自身の経験や知見と結びつけて発信する。
人生:自分の人生は唯一無二の物語だ。過去の選択の背景や教訓を深掘りすることで、普遍的なエピソードや共感が生まれる。特定の属性を持つ誰かの視点で語ると、よりパーソナルな体験となる。
好きなこと:求められず没頭できる「オタク的な好きなこと」がある。その熱量自体がコンテンツの魅力になり、無限の企画を生み出す源泉となる。
専門性を語る際も、ノウハウだけでなく、体得までの成功や失敗といった「身体知」を併せて語ることが重要だ。AIが客観的知識を簡単に生成できる現代だからこそ、あなたの「当事者性」を前面に出した語りが求められる。
Q. これからポッドキャストで発信する人が、企画を尽かさずにコンテンツを作り続けるための秘訣は?
企画が尽きずコンテンツを作り続けるには、自分の中に眠る「あなたにしか喋れないこと」を徹底的に探す必要がある。「何を話せば良いかわからない」という壁にぶつかることが多いが、「職業」「人生」「好きなこと」の三視点から、自身の体験や熱量を深く掘り下げるのが突破口だ。

日本の教育や企業文化では、個人の「カラー」や「偏り」を押し殺す傾向が強い。しかし、ポッドキャストで求められるのはまさにその個のカラーだ。企業勤めで実名での発信が難しい場合でも、匿名で属性を明確にし、ペンネームで自身の考えを発信することは可能。重要なのは、「誰かが決めた正解」でなく、「自分が何を考え、どう捉えるか」を掘り下げる習慣を持つことだ。
また、ポッドキャスト制作において、聞き手の役割も大きい。聞き手は質問だけでなく、会話の過不足やリスナーの求める情報を判断する能力、いわば「編集者」としてのスキルが求められる。この能力の高い聞き手は貴重で、コンテンツの質を大きく左右する。ポッドキャスト市場拡大は始まったばかり。内面に深く向き合い、「あなただけの声」を信じて発信を始めれば、豊かなコンテンツを生み、新しい発見へと繋がるだろう。