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速報解説:17の重点投資分野
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2025年11月11日

高市政権が決定した17の重点投資分野を徹底解説。全体像の紹介に加え、エコノミストが注目する5分野に絞って、現状を整理するとともに、日本の立ち位置や課題について聞いた。新たな成長戦略を先取りし、日本経済の未来図を読み解く。 ▼プロフィール 服部直樹|みずほリサーチ&テクノロジーズ シニア日本経済エコ...
高市政権が掲げる「17の戦略分野」:日本の未来を創る重点投資の真意とは?
先日、高市政権は日本成長戦略本部にて、AIや造船など17分野を重点投資対象に決定した。これは「失われた30年」を経て低成長にあえぐ日本経済を再生させるための国家戦略として位置づけられる。経済の停滞を招いた根源的な課題、そして未来を拓く成長分野として政府が注目する五つの領域について、その戦略と可能性を詳細に掘り下げる。

Q. 高市政権はなぜ特定の分野に重点的に投資するのか?
日本経済は長期にわたり低成長に苦しんでいる。その背景には、少子高齢化に伴う「労働投入」の低下に加え、ICT(情報通信技術)やソフトウェア、人的資本といった無形資産への「資本投入」が、欧米諸国と比べて著しく不足している現状がある。企業が国内市場の成長を見込めず、設備投資を控えてきた結果、経済の空洞化が進み、さらなる成長鈍化を招く悪循環に陥っている。

この停滞を打破し、再び成長軌道に乗せるため、高市政権は明確なビジョンの下、AIやエネルギー、防衛など17の戦略分野に重点的に投資すると決定した。これは民間企業の投資意欲を喚起し、日本経済の新たなフロンティアを切り拓くことを目的とした国家的な成長戦略である。
Q. 「産業のコメ」であるAI・半導体分野における政府の戦略は何か?
半導体はかつて「産業のコメ」と称されたが、日本の世界市場でのシェアは低下を続けている。世界の売上高が拡大する一方で日本企業の売上は横ばいに留まり、半導体供給不足が発生した場合、国内製造業が停止するリスクを抱える。
これに加え、AIは「新たな産業のコメ」として経済活動のあらゆる面に浸透しつつある。しかし、日本は海外のAIサービスへの依存度が高く、これが「デジタル赤字」として国の富が海外に流出する要因となっている。デジタル赤字の拡大は円安にもつながりかねず、経済安全保障上の課題として国産AIの開発が不可欠である。政府は半導体生産基盤の強化、次世代技術の確立、そして将来技術の実現を三段階戦略として推進。2030年までに国内企業の半導体関連売上高を現在の3倍である15兆円にする目標を掲げ、国産AIの開発と一体的に推進することでデジタル赤字の解消を目指している。
海外勢との資金力に差はあるものの、政府と民間が一体となって資金を投じ、スケールアップしていくことが求められる。
Q. 国家的課題であるエネルギー問題の解決策と、核融合発電への期待とは?
日本の交易条件は、エネルギー輸入コストの高騰によって悪化している。これは国内生産の採算性を圧迫し、工場新設など国内投資を抑制する大きな要因となっている。全産業の成長基盤として、安価で安定的なエネルギー供給の確立は喫緊の課題だ。

政府は解決策として、「省エネの徹底」と「国産エネルギーの拡大」を掲げる。AIの普及などで電力需要が増加する中、工場の省エネ設備導入、EVの推進、住宅の断熱性能向上などによって需要の伸びを抑制する。同時に、太陽光や風力といった再生可能エネルギー、そして原子力を「国産エネルギー」と明確に位置づけ、2040年までに供給量を倍増させる計画だ。
究極の解決策として注目されるのが「核融合発電」である。核融合はCO2を排出せず、海水から無尽蔵に燃料を得られ、安全性が高く、高レベル放射性廃棄物も発生しないという「夢のエネルギー」である。実現すれば世界のエネルギー問題を一挙に解決しうるインパクトを持つ。しかし、技術的難易度は高く、現在はまだ核融合反応でエネルギーを「生成する」第一段階にあり、電力への「取り出し」、そして「経済合理性の確保」という二つの大きな壁が立ちはだかる。実用化は2050年頃と見込まれる長い道のりだが、日本は長年の研究で培った技術的優位性を持ち、政府の国際協力と民間スタートアップの双方からの投資が開発加速の鍵を握る。
Q. 防衛産業は日本の新たな成長ドライバーとなりうるか?
東アジアの地政学リスクが高まる中、日本の防衛力の強化は不可欠である。未来の防衛システムでは、センサーで情報を「感知」し、AIが状況を「理解・判断」、そして無人機や従来兵器を用いて「行動」するサイクルが主流となると想定される。AI技術が防衛力の優劣を左右する時代となるだろう。
防衛費の増額は、まず既存の防衛企業の「オーガニック成長」(従来兵器の受注増)に繋がる。その成長で得た資金を、AIや無人機といった新たな防衛技術を持つスタートアップ企業の買収や提携(インオーガニック投資)に振り向け、未来の成長領域を獲得する戦略が重要となる。これは企業にとって新たな収益源を確保する機会となろう。
装備品移転三原則の緩和が進めば、日本の高度な防衛装備品を海外へ輸出する道も拓ける可能性がある。韓国が成功しているように、防衛産業が安全保障だけでなく、経済成長を牽引する輸出産業へと変貌を遂げる可能性を秘めている。
Q. コンテンツ産業を20兆円市場に押し上げる戦略的意義と課題は?
ゲームやアニメ、出版、映画などを含む日本のコンテンツ産業は、「クールジャパン」戦略の下、過去10年で海外売上高を1.4兆円から5.8兆円へと4倍以上に伸ばし、著しい成長を遂げている。政府はこれを日本を代表する成長産業と位置づけ、2033年までに海外売上高を20兆円にするという野心的な目標を設定した。
その実現のため、「エンタメ政策五原則」が策定された。これには、大規模かつ長期的な支援、そして個人のクリエイターにも届く支援の実現が盛り込まれている。特筆すべきは、「作品の内容に口を出さない」という原則を明記したことだ。これにより、政府の介入を懸念することなく、クリエイターが自由に創造活動を行える環境が保障されることとなった。

日本のコンテンツ産業の最大の強みは、漫画を原作としてアニメ化し、そのアニメを軸に音楽、ゲーム、グッズへと展開する「メディアミックス戦略」である。この成功モデルの起点となる漫画クリエイターや制作環境への支援を強化することが、20兆円目標達成に向けた最重要課題となるだろう。
Q. 政府の重点投資は成功するのか? その成否を分ける要素は何か?
高市政権の「17の戦略分野」への投資は「ばらまき」ではないと強調されている。政府が将来の「勝者」を事前に選定することは不可能であり、広く多様な分野に投資する「分散投資」は、国家戦略として合理的なアプローチである。一つの分野に絞る「選択と集中」は、失敗した場合の国家的なリスクが大きすぎるからだ。
この戦略は、コロナ禍やウクライナ戦争を経て、各国がサプライチェーンの強靭化を図り、国内での産業基盤再構築に舵を切るという世界的な潮流に合致している。日本においても、長期的な国内投資不足と経済の空洞化に対する有効な対抗策となることが期待される。政府が長期的な支援を確約することで、民間の成長期待を高め、投資を呼び込む「呼び水」の役割を果たすことになるだろう。
この重点投資戦略の成功には、「ガバナンスとモニタリング」が鍵を握る。具体的には、支援対象の選定を経済合理性や安全保障上の重要性に基づき適切に行い、KGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)を明確に設定し、政策効果を厳しく検証する仕組みが不可欠である。さらに、支援に期限を設ける「サンセット条項」を導入することで、漫然とした支援の継続を防ぎ、民間企業側に目標達成への強いインセンティブを与えることが重要となる。やりっぱなしにせず、成果を徹底的に追求する姿勢こそが、日本の未来を創る真の成長戦略を完成させるだろう。