PIVOT TALK HEALTH
石鹸が原因で2000人 集団発生も防ぐには
(1052)
1.2万回視聴
2025年11月9日

大人の食物アレルギーが近年急増していて、中でもナッツ類のアレルギーは12年で10倍に増えているという。アレルギー急増の背景とは? 花粉と果物のアレルギーには関連性がある?アレルギーへの対策や対処法とは?国立病院機構 相模原病院 福冨友馬 医師にアレルギーについて聞いた。 <プロフィール> 福冨友馬...
急増する食物アレルギーの真実: 認知の変化と新たな原因
近年、食物アレルギーを取り巻く状況は大きく変化している。かつて鶏卵や牛乳が主要原因であったが、現在では木の実類が急増し、大人になって突然アレルギーを発症するケースも珍しくない。花粉症が引き金となって果物や野菜に反応を起こす「花粉食物アレルギー症候群」の存在は特に重要だ。本記事では、国立病院機構相模原病院の福冨友馬先生の見解に基づき、進化する食物アレルギーの現状と、その裏にある意外な真実をQ&A形式で解き明かす。食とアレルギーへの正しい知識が、自己防衛の鍵となるだろう。

Q. 近年、ナッツアレルギーが急増している背景には何があるのか?
消費者庁のデータでは、木の実類のアレルギーが12年間で10倍以上(2011年2.3%→2023年24.6%)に急増した。特に子どもで顕著であり、かつての三大アレルゲンに迫る勢いである。急増の明確な原因は不明だが、健康志向の高まりによりクルミやカシューナッツの摂取機会が増加し、環境中にアレルゲンが普遍化していることが一因とされる。
クルミやカシューナッツのアレルギーはごく微量でもアナフィラキシーショックを起こす重篤なケースがあり、2025年度にはカシューナッツが食品表示義務の対象に追加される予定だ。ピーナッツは豆類で木の実類とは異なる点を理解しておくべきだろう。

Q. 食物アレルギーの一般的な認識と医学的定義はどのように異なるのか?
一般に「アレルギー」とは「食べ物に関連する不調全般」を指す場合が多い。しかし、医学用語における「アレルギー」は、「特定の物質に対し免疫メカニズムを介した有害な反応」と厳密に定義されている。この定義のズレが患者の混乱を招く一因だ。
例えば、山芋やキウイで口が痒くなる現象の多くは、医学的なアレルギー反応ではなく、食品自体に含まれる刺激物質(シュウ酸カルシウムなど)による一時的な反応だ。免疫システムが関与しないケースが多いため、医療機関での検査により初めて症状が免疫起因か判明する。アレルギー症状を訴え受診した大人の約半数はIgE抗体検査で陰性となるが、これはI型以外の免疫反応や刺激物質が原因である可能性が高い。検査が陰性でも症状があれば「気のせい」ではないため、専門医と相談することが肝要である。

Q. 花粉症が果物アレルギーの原因となる「花粉食物アレルギー症候群」とは何か?
大人になってから発症する果物アレルギーの多くは、果物の食べ過ぎでなく、花粉症によって引き起こされる「花粉食物アレルギー症候群(PFAS:Pollen-Food Allergy Syndrome)」であることが多い。これは世界的に認められている現象で、特に日本ではカバノキ科(ハンノキ、シラカンバ)の花粉症と密接に関連する。
PFASのメカニズムは「交差反応」と呼ばれる。花粉に含まれる特定のアレルゲンタンパク質(例: PR-10)と、特定の果物や野菜に含まれるタンパク質の構造が酷似しているため、体が誤って両者を同じものと認識し、アレルギー反応を起こすのだ。防御機能が比較的弱い鼻などの粘膜でまず花粉に感作され、その後に口から摂取した食物に反応するパターンが多い。逆のパターン(果物で花粉症になる)は稀だと考えられている。
症状は口の痒み(口腔アレルギー症候群:OAS)から始まることが多いが、徐々に悪化し咳、息苦しさ、アナフィラキシーに至るケースもあるため軽視してはならない。重篤な症状時は専門医を待つより救急病院で緊急対応を受けることが最優先だ。軽度であれば、普段服用している花粉症治療薬で症状を緩和できる可能性もある。
Q. 花粉症に起因する食物アレルギーには、具体的にどのようなパターンがあるのか?
日本における花粉と食物の交差反応は、主に3パターンある。
**カバノキ科花粉(ハンノキ、シラカンバなど)**:リンゴ、モモ、サクランボなどバラ科果物に反応しやすい。アレルゲンは熱や消化酵素に弱く、生食時に口の痒み(OAS)が主な症状だが、加熱すれば症状は出にくい。
**イネ科・キク科花粉**:メロン、スイカ、キュウリなどのウリ科やトマト、オレンジなどに反応。これも熱に弱くOASが主症状だが、進行すると生果物・野菜全般に反応する可能性もある。
**スギ・ヒノキ花粉**:バラ科果物、柑橘類、トマトなどに反応。頻度は低いが、アレルゲンが熱に強いため、桃の缶詰や梅干しなどの加工食品でも症状が出る。食後に運動すると症状が悪化する「食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)」のリスクも伴う。
特にカバノキ花粉症を持つ人は、豆乳を摂取する際に注意が必要だ。豆乳は液体で急速に吸収されるため、重篤なアナフィラキシーショックを起こすリスクが高い。過去に消費者庁からも注意喚起がなされた事例もある。これらのアレルギー症状は、花粉の飛散ピークが過ぎた5月〜6月頃に顕在化しやすく、花粉症の薬を自己判断で中断すると悪化を招く可能性もあるため、注意が必要である。

Q. 食物アレルギーは摂取だけでなく、環境中のアレルゲンに触れることでも発症するのか?
食物アレルギーは、口から摂取するだけでなく、皮膚や粘膜を介した環境からの接触でも発症し得る。2010年代には、小麦成分配合石鹸の使用により2,000人以上の利用者が小麦アレルギーを発症し、重症アナフィラキシーに至るケースも確認された。これは、食べる経路ではない接触によるアレルギー発症の典型例だ。
特に乳幼児の食物アレルギーは、離乳食開始前に皮膚の湿疹などを介してアレルゲンが体内に侵入し、成立するパターンが多い。身の回りのアレルゲン環境は発症の大きな要因となるのだ。大人になってアレルギーが発症しても、治らないと安易に諦めるべきではない。発症のきっかけとなった花粉症や化粧品など真の原因を特定し、その環境的接触を避けることで、症状が改善したり完治に至るケースも存在する。自己判断せず、専門の医療機関を受診し、アレルゲン特定と適切な対処を行うことが重要である。