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トップが現地解説:トヨタのブランド改革
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2025年11月8日

最上位ブランドとして「センチュリー」を位置付けるなど、ブランド改革を進めるトヨタ。トヨタの各ブランドはどう変わるのか?未来の車はどう進化していくのか?チーフブランディングオフィサーのサイモン・ハンフリーズ氏に、ジャパンモビリティショーの会場で解説してもらった。 ▼プロフィール サイモン・ハンフリー...
トヨタのブランド改革:すべての人から「あなた」へ、未来のモビリティを再定義する
トヨタがモビリティショーで発表した大規模なブランド改革について、チーフブランディングオフィサーであるサイモン・ハンフリーズ氏が語った。
画一的な「すべての人々のため」から、一人ひとりの「あなたのため」へと変貌を遂げるトヨタのビジョン、そしてその根底にある「発明スピリット」に迫る記事だ。
未来のモビリティとブランドの姿、そして日本のものづくりが世界に提示する価値は何なのだろうか。

Q. トヨタの大規模ブランド改革の狙いは何なのだろうか?
サイモン・ハンフリーズ氏によると、トヨタのブランド改革は、高級ブランド「センチュリー」を第4の独立ブランドとする大英断を含んでいる。
これは100年近い歴史を持つトヨタにおいて極めて大きな経営判断である。
改革の背景には、EV化やソフトウェア技術の進化といったモビリティを取り巻く環境の大きな変化があり、モビリティショーという場で新たなビジョンを提示する好機と捉えている。
ブランド戦略の根幹にあるのは、「人を見て、人を理解する」という思想だ。
単に移動手段を提供するだけでなく、車というモノを超えてユーザーの生活全体をより楽しく豊かにする「愛車」を創造することに狙いがあるという。
Q. なぜトヨタのブランド改革で「発明」が強調されるのか?
トヨタの原点は、豊田佐吉による自動織機の発明にまで遡る。
この自動織機の特許を英国企業に売却して得た資金が、自動車事業をスタートさせる基盤となった経緯がある。
つまり、一つの発明が世界的な大企業を誕生させるほどの力を持つことをトヨタの歴史は示しているのだ。
現在の豊田章男会長も「次の道を発明しよう」というビジョンを掲げている。

これは日本の得意分野である「発明スピリット」に立ち返り、それを現代の価値観に合わせて再定義し、未来を創造する原動力としようとする強い意志の表れだ。
ウォシュレットや昔のソニーのテレビに象徴されるように、日本には日用品においても発明を通じて人々の生活を豊かにしてきた歴史がある。この精神こそがトヨタブランドの核だ。
Q. 「Mobility for All」から「For You」への転換とはどのような内容か?
トヨタは従来の画一的なブランドメッセージ「Mobility for All(すべての人にモビリティを)」から、一人ひとりの多様な価値観やニーズに寄り添う「to you to you(あなたのために)」へと転換すると述べている。
この新しいアプローチを具現化するために、以下の4つの具体策を提示する。
大衆車の魅力を向上させる:カローラのようなマスプロダクトも無難ではいけない。部品の小型化などでデザインの自由度を高め、誰もが「かっこいい」と感じる車を目指す。
新興国向けのカスタマイズできる車:ユーザー自身が組み立て、用途に合わせて自由にカスタマイズできるオープンソース的な車両を提供し、地域社会の多様な生活を支援する。
障害者支援モビリティの拡充:AIとロボティクス技術を駆使し、車椅子に代わって階段を上ったりスポーツを楽しんだりできるモビリティを開発する。完全自動運転の子供用車両は、送迎の負担軽減と子供の新たな行動範囲創出に貢献する。
物流と人流の革新:次世代の商用車「通い箱」は、内部を自由にレイアウト変更でき、ラストワンマイル配送から地域住民の移動まで多様な課題解決に対応する。ロボタクシーはドライバーをなくし、小型化しながらも広大な室内空間を実現し、多様な人々が利用しやすい未来の移動を提案する。
Q. グループブランド(ダイハツ、レクサス、センチュリー)はどのように進化するのか?
トヨタはグループ全体のブランド戦略を再構築し、各ブランドの個性を明確にしている。
ダイハツは「大発明」をコンセプトに据える。
限られた軽自動車のサイズの中で、知恵と工夫を凝らしたモビリティを追求。例えば「未来のミゼット」として提案する小型車は、電動ママチャリを進化させたような発想で、子供が乗りたくなるようなボルダリング風の乗降口やお菓子入れなどを設けている。日常を楽しくするアイデアを詰め込んだ、遊び心溢れるプロダクトを展開する方向性だ。
レクサスはセンチュリーが独立ブランドとなったことで、従来の「長男」の役割から解放され、「次男坊」のように自由に挑戦できる存在へと進化する。
フラッグシップ「LS」はこれまでの“Luxury Sedan”という概念を大きく超え、"Luxury Space"としての新たな価値を提供する。
特に目を引くのは、6輪構造の採用によってタイヤを小型化し、3列目までアクセスしやすい広大な室内空間を実現した提案だ。これは従来のミニバンが抱える課題を解決し、快適性とデザイン性を両立させている。
さらに、レクサスは陸・海・空へと展開を広げ、単なる車を超えたライフスタイルブランドとしての地位を確立する構想を描いている。
クルー不要の自動運転ヨットや、都市での利用を想定した静音性の高い空飛ぶモビリティ(Jobyとの協業)、さらにはオフグリッド対応の住宅まで、レクサスは個人の自由を極限までサポートする総合的なライフスタイルプロバイダーへの進化を目指すという。
そして新たに独立ブランドとなった「センチュリー」は、日本のものづくりの粋とプライドを結集させた世界に通用する真のグローバル高級ブランドとして誕生する。
これはフォーマルなシーンで使う「タキシード」のようなセダンに加え、モダンなビジネスマン向けの「ジャケット」のようなSUV、さらには華やかなパーティーシーン向けの「パーティー着」のようなクーペを揃える。

鳳凰の再生を意味するオレンジ色や、西陣織りや輪島塗を内装に採用するなど、日本の最高峰の匠の技と美意識が惜しみなく投入された。後部座席はプライバシーを最大限に考慮し、外界から隔離された贅沢な空間を提供する究極のショーファードリブンカーとして設計されている。
Q. モビリティの変化においてデザインやブランディングの役割はどう変化しているのか?
デザイナーの役割は、単にプロダクトのスタイリングを行うだけでなく、「発想し、コンセプトを立て、ストーリーを作り、そして形にする」という本質的なプロセスを担う。
自動車の概念が広がり、ライフスタイル全般に及ぶ中で、デザイナーは車だけでなく、家や船、空のモビリティまで多岐にわたる領域で、顧客のビジョンを具体化し、「言葉」を魅力的な「モノ」として創造する力が求められるという。

トヨタでは、車好きの経営トップが、デザイナーたちが描く未来のモビリティを真剣に実現しようとサポートする体制が整っている。
数値では説明できない「かっこよさ」や「好き」といった主観的なニーズに応えるデザインが、ブランド価値を大きく左右するとハンフリーズ氏は指摘した。
Q. 世界市場で日本ブランドが優位に立つための重要な要素は何であるか?
世界で通用するブランドを築く上で、日本ブランドの最大の強みは「人を見て、人を理解する」という能力にあるとサイモン・ハンフリーズ氏は考えている。
世界中の人々が画一的なトレンドから離れて個性を求める今、日本のユニークな文化や美意識、細やかな気遣いに基づくアプローチへの関心が非常に高まっているという。
かつてトヨタはQDR(品質、耐久性、信頼性)で評価されてきたが、これは現代において「基礎」となった。
これからは、「この車が好き」「この車が欲しい」と思わせるような主観的な魅力が不可欠だ。
中国をはじめとする新興メーカーの台頭は競争を激化させるが、これは消費者の選択肢を増やし、業界全体を活性化させるポジティブな機会だ。
日本は他国の模倣ではなく、自信を持って「日本らしい」価値観とものづくりを世界に示していくべきであると、氏は強く主張した。
Q. トヨタがモビリティを通して実現したい最終的な野望とは何か?
サイモン・ハンフリーズ氏がモビリティを通じて最終的に実現したい野望は、非常にシンプルで普遍的だ。それは、「人が本当に欲しいと感じるものを作ること」、そして「人々の人生をよりオプティミスティックで楽しいものにすること」であるという。
車は「愛車」という言葉が存在するように、持ち主の心に深く寄り添う工業製品だ。その車をただ移動の道具としてだけでなく、人生を豊かに彩る存在へと昇華させることがトヨタの目指す未来だ。
単なる楽しさだけでなく、「楽しくかっこいい」未来を創造することが、トヨタのモビリティに対する究極の願望である。