TIME IS
勝つ投資術/GS元トップトレーダー直伝/オルカンの次/株式・債券ポートフォリオ【宇根尚秀】
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2025年11月9日

多忙なビジネスパーソンへ、圧倒的な成果を上げている著名人が時間術のヒントを提供する「TIME IS」。今回は、ゴールドマン・サックス元トップトレーダーの宇根尚秀氏に「勝つ投資術」を聞いた。 <出演者> 宇根尚秀|ゴールドマン・サックス 元トップトレーダー <参考書籍> 宇根尚秀『最後に勝つ投資術...
「最後に勝つ」投資術:元GSトレーダーが語るオルカン後の次なる一手
「最後に勝つ」投資術の著者である元ゴールドマン・サックスおよびゆうちょ銀行の金融プロ、宇根尚秀氏が、現代における堅実な資産形成戦略を語る。市場の荒波を乗り越え、長期的に富を築くための指針は、短期的な儲けに目を奪われがちな私たちに真の「投資の王道」を示すだろう。本稿では、同氏が提唱する基本原則から具体的なポートフォリオ戦略、そしてリスク管理の哲学までをQ&A形式で深掘りし、あなたの投資の次の一手を考える助けとなる。

Q. 投資初心者は、どのような投資を始めるべきか?
多くの投資家にとって最適なスタートは、グローバル分散パッシブ投資であると宇根氏は断言する。これは特定の銘柄選びに時間を費やすことなく、全世界の株式市場に連動する運用成果を目指す手法だ。具体的には、「オルカン」の通称で知られる投資信託、例えばeMAXIS Slim全世界株式などが代表的な金融商品に該当する。これらの商品一つで、世界の47カ国、約3000社もの企業に分散投資が叶う。

一見、面白みに欠ける選択に見えるかもしれないが、投資に時間を割けない多忙な現代人にとって、最も効率的かつ勝率の高い投資の王道と言える。深い専門性を身につける必要もなく、なぜ儲かるのかのロジックが腹落ちすれば、誰でも長期的な資産形成を期待できる。
Q. オルカンは、なぜ利益を生む可能性が高いのか?
オルカンが長期的に儲かる可能性が高い理由は、その収益の源泉に理論的な背景があるためだと宇根氏は語る。多くの経済数値は予測が困難だが、人口動態と技術革新という二つの要素は長期的に見てもプラスの方向へと動く可能性が高い。世界人口は今後20年以上にわたって増加し続け、技術革新も止まることなく進行すると予測される。
これらの要素が組み合わさることで、世界経済全体は成長を続けるという仮説が成り立つ。オルカンは、この世界経済全体の成長という大きな波に乗り、株式や債券といった「収入の分配権」を全部買いすることで、その恩恵を享受する投資手法だ。特定の成長株を見抜くのではなく、確実性の高いマクロトレンドに乗る合理的な戦略がオルカン投資の本質と言える。
Q. パッシブファンドとアクティブファンドは、どちらを選ぶべきか?
宇根氏は、大半の個人投資家にはパッシブファンドで十分だと明言する。金融業界の「不都合な真実」として、手数料控除後にはアクティブファンドの9割がパッシブファンドに勝てていないというデータが存在する。SPIVAという機関が発表するデータがこれを裏付けており、米国や欧州では依然としてアクティブファンドの多くがパッシブファンドに劣後している。

日本市場でも直近7割、長期的には8割のアクティブファンドがパッシブに敗北している事実がある。もちろん、世の中には「常勝」と呼ばれるアクティブファンドも確かに存在するが、これらは大口の機関投資家で運用枠が埋め尽くされており、一般投資家がアクセスすることは現実的に不可能に近い。このため、無理にアクティブ運用を追求するよりも、低コストなパッシブ運用を選択することが、賢明な判断と言える。
Q. 長期投資をする上で、どのようなリスク管理が必要か?
投資における成功は、目先の利益を追求することではなく、最悪のシナリオを想定したリスク管理に基づいた分散にあると宇根氏は強調する。株式市場は常に右肩上がりではなく、数年に一度は2割程度の調整局面があり、リーマンショックのような経済危機では5割の暴落もあり得る。人生の終盤に多額の資金が必要な時期に大暴落に見舞われれば、資産の回復に数年、あるいはそれ以上の期間を要する可能性もある。
人間の時間は有限であるため、特に投資期間が短い中高年には、株価が急落した際に退場せずに済むポートフォリオ設計が不可欠だ。この対策として、年齢やリスク許容度に応じて株式投資の割合を下げることがセオリーである。一般的に
「100-年齢%」
を株式の目安とし、残りを安定資産である債券(あるいは現金)で持つことで、全体の損失を抑制する戦略が推奨される。
Q. 具体的なポートフォリオの組み方として、どのような選択肢があるか?
オルカン単独投資ではリスクが高い。宇根氏は個人の状況に応じた具体的なポートフォリオを三つ提示する。リスク管理とリターンのバランスを考慮した、現実的な選択肢だ。
最もシンプルな「GPIF簡易ポートフォリオ」は、投資資金の50%をオルカン、残り50%を日本円現金で保有する。オルカンが半減しても全体の損失は約25%に抑えられ、心理的な安定を保ちやすい。時間をかけずに長期投資を続ける人へ推奨される。
「GPIF完全トレースポートフォリオ」は、日本の公的年金GPIFが採用する「4資産均等型」を模倣する。国内株、外国株、国内債券、外国債券にそれぞれ25%ずつ投資。プロが練り上げた配分は、低コストETF等の活用で年率約4%の堅実なリターンを期待させる。
「年齢別カスタマイズポートフォリオ」はGPIFモデルをベースに
「100-年齢%」
を株式割合とする戦略だ。30歳なら株式70%、債券30%に調整する。若年は高リスクで高リターンを、高齢は債券で安定を追求する。日本債券は現金保有と捉える。
Q. ロボアドバイザーの活用は有効か?
ロボアドバイザーは、運用を自動で行い手間を省けるという点では非常に優れたサービスであると宇根氏も認める。しかし、その利用には注意が必要だ。多くのロボアドバイザーサービスは年間1%程度の運用手数料がかかることが多い。長期的な投資において、この1%という手数料は決して軽視できるものではない。

オルカンのような低コストのインデックスファンドの信託報酬が年率0.05〜0.06%程度であることを考えると、ロボアドバイザーの高コストが運用成績を圧迫する可能性は十分にある。前述したGPIFベースのポートフォリオを、自身で低コストなETFや投資信託を組み合わせて運用する方が、手数料を抑えつつ高いリターンを得られる可能性が高いと宇根氏は指摘する。手間を重視するか、コストとリターンを重視するか、個人の判断が求められるところだ。