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【バンダイナムコの人材戦略】IPビジネスで勝ち抜く人材とは
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2025年11月7日

近年好調が続くバンダイナムコHD。過去最高の業績を達成する要因となったIP戦略とは?これからのグローバルなIPビジネスを勝ち抜くための人材は?代表取締役社長の浅古有寿氏に聞いた。 <ゲスト> 浅古有寿|バンダイナムコHD 代表取締役社長・CEO 1986年 株式会社バンダイ入社 経営企画や経営管理...
バンダイナムコの人材論とIPビジネスへの想い
エンターテインメント業界の雄、バンダイナムコホールディングスの浅古社長へのインタビューでは、同社の未来を見据えた経営戦略から独自の企業文化、そして求める人材像に至るまで、多岐にわたる洞察が明かされた。好調な業績を支える背景にある深い思慮と、IPビジネスにかける熱意について詳しく見ていこう。

Q. 長期的な成長戦略として特に力を入れていることは何か?
近年の業績伸長は既存事業の深掘りによる成果だが、10〜20年先の長期的な視点での取り組みには課題があった。この課題に対応するため、「CW360」という専門部隊を立ち上げた。この部署は、短期的な業績責任を持つ事業会社とは異なり、グループ全体の視点から未来への投資や未開拓領域へのチャレンジを担う役割を負う。具体的には、ソニーやGaudiyとの連携によるファンコミュニティの立ち上げなども進行しており、これは新事業創出だけでなく、若手人材の育成(OJT)の場としても機能させ、将来の経営層に求められる俯瞰的な視野を育む狙いがあるという。

Q. 「中小企業の集合体」というユニークな組織体制には、どのような意図があるのか?
バンダイナムコは、大小さまざまな個性豊かな企業が集まって構成されており、社長はこれを「中小企業の集合体」と表現する。トップダウンではなく、各事業会社が自主的に意思決定し、全体としてボトムアップで成長するスタイルを重視しているのが特徴である。組織文化の根底には「同魂異才」という理念があり、これは「同じ目的を持ちながらも異なる才能を持つ個性的な社員たちの集団」を意味する。ライバル意識ではなく、切磋琢磨することで全体の創造性と多様性を高めていると言えよう。
Q. 御社が求める人材像と、その背景にある哲学について教えてください?
バンダイナムコが求める人材は、スキルや経験以上に「熱い思い」を持つ人である。特にIP(知的財産)ビジネスにおいては、作品やキャラクターへの「愛」が不可欠であり、この情熱が困難を乗り越え、ビジネスを推進する原動力となるからだ。新卒だけでなく、同規模でキャリア採用も積極的に行っており、多様なバックグラウンドを持つ人材が集まることで組織内の化学反応を期待している。事業領域が広範なため、IPを「生み出す(0→1)」ことにも、「育てる(1→10)」ことにも関われる多様なキャリアパスが用意されており、自身の志向に合わせて挑戦できる環境を提供している。
Q. 失敗を恐れない「挑戦する社風」はどのように醸成されたのか?
バンダイナムコには、新しいことに果敢に挑戦し、たとえ失敗してもそれを「転び方」を学ぶ機会として捉える社風が根付いている。一度転んだ社員は次に同じ過ちを繰り返さないよう考え、視野が広がるため、失敗経験は重要なノウハウと見なされているのだ。過去には240億円の損失を出した事業責任者が後に社長・会長になった例もあるほど、挑戦とそこから得られる学びを高く評価している。こうした社風があるからこそ、社員は大きな「大怪我」をせずに多様なチャレンジができる環境があると言える。持ち株会社が長期的な投資を担うことで、各事業会社が短期的な業績プレッシャーにとらわれず挑戦に集中できる仕組みもこの社風を支える一因となっている。

Q. グローバル展開の歴史と現状をどのように見ているのか?
グローバル展開は決して最近のトレンドではなく、同社が1986年に海外に販売会社を持っていた頃から続く長年の取り組みである。かつては文化や放送インフラの違いにより苦労もあったが、先輩方の築いたノウハウと、インターネット配信プラットフォームの普及といった外部環境の変化が融合し、現在の成功の基盤となっている。2028年の海外売上比率50%達成を目指しているが、実際には国内事業も非常に好調なため、海外比率がなかなか上がらないという「嬉しい悲鳴」の状態だ。海外市場の開拓は、単に国内市場の縮小を補うためではなく、文化の輸出という使命感を持って積極的に進めている。
Q. 意外な国内事業の強みや、顧客とのタッチポイント戦略について教えてください?
国内事業では、ガシャポン、菓子、カード事業が特に好調を維持している。デジタルシフトが進む時代においても、お菓子のようなフィジカルな商品がファンとの重要な接点となっているという。例えば、「釣りグミ」や「キャラパキ」といったオリジナルのお菓子は、その美味しさと遊び心から高い人気を博している。子供の頃の「懐かしい」体験は、大人になった際の再発見や、IPへの愛着形成に繋がり、IPのロングセラー化に大きく貢献している。このようなフィジカルなタッチポイントは、単なる商品提供に留まらず、世代を超えてファンと繋がり、愛着を育むための戦略的な役割を担っているのだ。
Q. 経理畑出身の社長が、経営において最も大切にしていることは何か?

社長自身は、10年以上経理畑で会社の数字の流れを見てきた経験がある。その中で、バンダイには新しいことに挑戦し「散らかす」役割と、それを支え、後始末をして「片付ける」役割があることを学んだという。自らをクリエイターを支える「片付け屋」と位置づけ、その最大のミッションは、現場の事業ユニットが安心して自由闊達に事業に専念できる環境を整えることだと述べている。就任後は国内外の全グループ会社を行脚し、社員の顔が見える関係性を築くことで、現場の声を聞き、最適な環境を整備することに努めている。現場が主役であり、経営層はそれを後押しする「黒子」に徹するという哲学が、同社の成長を牽引していると言える。