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高市ラリー、6つの関門。2030年までに日経平均6.3万円
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2025年11月1日

5.2万円を突破し、最高値を更新した日経平均株価。高市ラリーはなぜ起きているのか?この勢いが続くための関門は何か?楽天証券チーフ・ストラテジストの窪田真之氏に聞いた。 <ゲスト> 窪田真之|楽天証券 チーフ・ストラテジスト 日本株アナリスト兼ファンドマネージャー歴25年。年間100社を超える企業調...
日経平均はなぜ強い?外国人投資家が見る3つの構造変化と2030年の展望
近年、日本株、特に日経平均の上昇が顕著である。その原動力は外国人投資家の旺盛な買い意欲にあると言われている。この外国人投資家の動向は一時的なものなのか、それとも日本経済に構造的な変化が起きているのか。楽天証券の窪田真之氏が、現在の日本株を巡る3つの主要な構造変化と、2030年までの日経平均の予測、そして投資家が留意すべきリスクと戦略について解説する。

Q. なぜ現在、日経平均は上昇傾向にあるのか?
現在の日本株上昇を牽引する主なプレーヤーは、外国人投資家である。彼らは「日本企業」を資本家の目で見たときに注目すべき変化が三つあると分析しており、これらの構造変化への評価から日本株を買い続けている。この動きは以前から見られたが、高市政権の誕生をきっかけにその加速はさらに顕著になったと言えるだろう。
実際に、高市氏が総裁選に勝利した直後には、それまで売り越していた外国人投資家が翌週一週間で1兆円以上の日本株を買い越すなど、日本の政治情勢の転換を株価に織り込む動きを見せた。彼らは成長戦略を明確に打ち出し、日本経済を変えようとする政権の姿勢をポジティブに評価していると推測される。

Q. 外国人投資家が評価する、日本の3つの構造変化の詳細とは何か?
外国人投資家が日本株の買い材料とする3つの構造変化とは、「高市政権の成長戦略への期待」「デフレからインフレへの転換」「企業の自社株買いの増加」である。これらが複合的に作用し、日本株全体の魅力を高めている。
まず、一つ目の高市政権への期待だが、発足後既に「連立政権の成立」「閣僚人事の実行」「高い内閣支持率」の三つの関門をクリアしたと言える。外交面でも日米首脳会談の成功など良いスタートを切っている。しかし、長期政権となるには「外交(対米・対中での成果)」「公約の実現(補正予算、税制改正など)」「解散総選挙での勝利」といった残りの三つの難問をクリアする必要があるだろう。
二つ目のデフレからインフレへの転換は、日本経済に大きな影響を与える。インフレは国民生活には厳しい側面もあるが、名目GDPを押し上げ、日本企業の売上増加に直結する。1980年代には4〜5%であった名目GDP成長率がデフレ期には停滞していたが、インフレ基調への転換で再び年率3%程度の成長が見込まれており、製造業を中心に最高益を更新する企業が相次いでいる。

そして三つ目の「自社株買いの増加」も、日本株のバリュエーション向上に寄与している。かつての日本企業は、バブル崩壊後の経営危機に備え、リストラを避けるために多額の現預金や持ち合い株、不動産を抱え込む傾向にあった。しかし、現在は東京証券取引所や金融庁からの要請、さらには買収ファンド(アクティビスト)による外圧などを受け、これらの余剰資金を株主還元へと回す動きが加速している。
Q. インフレの進展と日本企業の自社株買いが株価に与える影響はどうか?
インフレと自社株買いは、直接的に株価にポジティブな影響を与える要素である。デフレ脱却に伴う物価上昇は、名目GDPの成長を通じて企業売上を伸ばす。特に「高市政権」は財政拡張を志向しており、インフレ抑制策を講じつつも、根本的なインフレ圧力を弱める政策は打ち出していないため、今後もインフレ基調は継続すると見られる。これまでの予想よりも高い年率2.6%のインフレが中長期的に継続する可能性があり、企業収益を押し上げるだろう。
一方、自社株買いは日本企業にまだ大きな余力があると指摘される。アメリカ企業では株価連動報酬の影響で過度な自社株買いを行い、財務内容を悪化させる例も見られるが、日本企業はバブル崩壊以降の慎重経営により、賃貸不動産の含み益や潤沢な手元現金を蓄積している。たとえば三菱地所の賃貸不動産の含み益は5兆円を超える規模だ。

経営者の「リストラを避けたい」という本音は不変かもしれないが、株価純資産倍率(PBR)1倍割れの放置は買収リスクを高め、東証や金融庁のガバナンス改革要請も強い。これらが後押しとなり、自社株買いは今後さらに増える方向にある。自社株買いは発行済み株式数を減らすことで一株当たり利益(EPS)と自己資本利益率(ROE)を高め、結果として株価の上昇に直結する。実際、2023年以降の株式市場において、外国人投資家が約7兆円買い越したのに対し、自社株買い(事業法人分のみ)は約21兆円に達し、株価の重要な下支え役となっているのだ。
自社株買いは「事業そのものとは直接関係ない」と見る向きもある。しかし、新たな設備投資の機会が見当たらない場合、余剰キャッシュを自社株買いに回すことは、自社の事業に再投資する行為であり、株主へのリターンを最大化する有効な手段であるという見方もできるだろう。
Q. 2030年に向けて、日経平均はどこまで上昇すると見込めるのか? その根拠は何か?
久保田氏は、景気サイクル(好況・不況を含む約5年間)を考慮した中長期的な視点から、2030年までに日経平均が6万3000円に到達すると予測している。これは従来の予想5万6000円を情報修正したものであり、主な根拠は、一株当たり利益(EPS)の年率6.5%成長であると分析する。

このEPS成長の背景には、主に三つの要因がある。第一に、インフレ率が年率2.6%と見込まれること。日本人のデフレマインドが払拭されきっていない中でのコンセンサスよりも強気な見通しだ。第二に、自社株買いの増加による発行済み株式数の減少である。これによりEPSが直接的に押し上げられる。第三に、日本企業の海外事業の拡大が挙げられる。これらの複合的な要素がEPSを年率6.5%のペースで高め、結果として日経平均を6万3000円へと導くと見ている。
ただし、インフレや自社株買いが企業を直接的に強くするわけではない。最終的に重要なのは、「高市政権」が掲げるような成長戦略によって、日本がAI、DX、宇宙、バイオといった遅れをとっている分野で真の競争力を取り戻せるかという点である。財政出動や金融緩和はあくまで環境づくりであり、具体的な成長分野における成果が持続的な株価上昇の最後の鍵となるだろう。
Q. 日本株市場に潜む主なリスク要因と、投資家が注意すべき点は何か?
現在の好材料には、全て裏返しのリスクが潜んでいる。主なリスクは以下の五点だ。
高市政権への期待の剥落(短期的な人気、政策実行力の限界など)
日米関税問題の再燃(対米投資約束の実行や個別品目での対立)
米中対立の激化(現状の小休止は一時的である可能性)
アメリカの利下げ期待の後退(年内利下げの見通し不透明化)
過熱感のあるAI関連株のバブル崩壊(ITバブルやインターネットバブルとの類似性)

特に、歴史を振り返ると、強いリーダーシップを持つ政権(例:小泉政権、アベノミクス初期)が資本主義的な構造改革を進める時期には、外国人投資家が日本株を大きく買い進める傾向があり、現在の高市ラリーも同様の局面にある。しかし、過熱感が強まる相場には短期的な調整リスクがつきものだ。アベノミクスがスタートした2013年には、当時のFRB議長バーナンキ氏の一言で日経平均が20%以上急落した「バーナンキショック」があった。この時、経済的な不安材料は何一つなかったにもかかわらず、市場の過熱が調整を招いた好例と言える。現状も、このような「○○ショック」がいつ起きてもおかしくない状況である。
このような状況下で投資家が取るべき戦略として、まず日本株においては、インフレに強い「バリュー株」への注目が有効だ。金融、資源関連、製造業といったPBR(株価純資産倍率)1倍割れで高配当利回りの銘柄は、インフレ環境でさらに収益を伸ばす可能性がある。また、中長期的な上昇トレンドは継続すると見られるが、短期的な過熱感が指摘される局面では、値上がりした分を少しずつ利益確定し、ポジションをリバランスすることも有効な戦略だ。市場に新規参入する投資家は、価格の変動リスクを抑えるために、時間分散して投資を進めるのが良いだろう。そして何よりも、市場に「変化」が起きた際には、誰よりも早くその兆候を察知する姿勢が重要である。