PIVOT TALK FOOTBALL
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2025年11月3日

実は日本人よりも日本人らしい一面もあった元サッカー日本代表監督アルベルト・ザッケローニ氏。2014年ブラジルW杯でなぜ日本は惨敗したのか?監督就任の経緯はどうだったのか? なぜトップ選手は彼を信頼したのか? 当時、テクニカルアシスタントコーチを務めたジャンパオロ・コラウッティ氏に話を聞いた。 ▼プ...
ザックジャパンの輝かしい成功の裏には、指揮官を支えた重要な人物たちの存在があった。元アシスタントコーチ、ジャンパオロ・コラウッティ氏は、アルベルト・ザッケローニ監督が日本で愛された理由、選手の秘められた才能の発掘、そして歴史を刻んだ2014年W杯の知られざる舞台裏を深く語る。
その証言からは、日本サッカーの驚くべき成長の軌跡と、コラウッティ氏が描くイタリアサッカー界への痛烈な提言、そして両国の未来を繋ぐ熱いビジョンが鮮やかに浮かび上がった。彼の言葉に耳を傾け、日本とイタリアのサッカー交流が生み出す新たな可能性を探る。

ザッケローニ監督は日本の文化を深く尊重し、日本社会に溶け込んだ。時には日本人以上に日本人らしいと評されるほどの礼儀正しさと品格が、選手やファンから絶大な信頼と愛情を得た大きな要因である。
特に、本田圭佑と香川真司という二人のスター選手を共存させるマネジメントは際立っていた。本来トップ下を望む香川選手を左サイドでのプレーに納得させるなど、巧みな調整力でチームの攻撃力を最大限に引き出した。この人間性と適応力が、彼の日本での成功を決定づけたといえる。
ザックジャパンではアシスタントコーチに加え、国内外の日本人選手スカウトや対戦相手の分析も担当した。彼のスカウト哲学は明確である。先入観を排除するため、メンバーリストを事前に確認せず試合を観戦し、純粋なパフォーマンスに基づいて選手の才能を見抜く手法を用いた。
この方法が、多くの有望株の発掘に繋がった。また、「若い選手は優秀で準備ができていれば、年齢に関わらずすぐに機会を与えるべき」という強い信念を持っていた。J2や大学リーグなど、カテゴリーを問わず才能を評価する柔軟な視点が特徴であったという。
久保裕也選手の発見には劇的なエピソードがある。天皇杯の試合を観戦中、J2京都の17歳であった久保選手が途中出場から試合の流れを大きく変えるプレーを披露したのだ。その落ち着きと決定力は、ベテラン選手を思わせる成熟ぶりで「ありえない」と感じるほどだったという。この印象から即座にザッケローニ監督へ推薦し、A代表への招集が実現した。

一方、吉田麻也選手はさらに意外な形で発見された。センターバックを探していた頃、診療所でたまたま目にしたスポーツ雑誌『Number』に、海外で活躍する吉田麻也選手の記事があったのだ。身長192cmでありながらMFもこなす多様性に注目し、監督を説得して視察に赴いた。当初懐疑的だった監督も最終的には説得され、吉田選手はアジアカップで大活躍し、代表の守備の要となった。運命的な出会いが才能を開花させた好例である。
ザッケローニ体制発足当初、選手やメディアの間には監督への懐疑的な見方が存在した。その空気を一変させたのが、就任後初戦のアルゼンチンとの親善試合である。試合前のミーティングで、監督は選手たちに対し「今日アルゼンチンに勝つためには、このようにプレーしなければならない」と、具体的な戦術と共に勝利を明言した。選手たちはこの大胆な言葉に驚きを隠せなかったが、監督の指示通りにプレーした結果、格上のアルゼンチンから歴史的勝利を掴み取った。
この勝利は、選手たちが監督の言葉を無条件に信じるようになる決定的な瞬間であり、ザックジャパンの4年間にわたる成功への「転換点」となった。監督は正直かつ誠実な姿勢で選手と向き合い、その信頼関係が緻密な戦術と結びつき、揺るぎないチームへと成長させたのである。
2014年ブラジルW杯での最大の悔恨は、多くの主力選手が怪我や疲労で万全のコンディションでなかったことである。内田篤人選手、槙野智章選手は慢性的な問題を抱え、今野泰幸選手、遠藤保仁選手も調子が悪かった。岡崎慎司選手はリーグ戦で疲弊し、本田圭佑選手や香川真司選手もシーズン終盤はほとんどプレーできなかった。

特にキャプテン長谷部誠選手は、W杯直前に膝の手術を2度受け、練習すれば膝が腫れるという状態であった。加えて、開催国ブラジルの広大な移動距離、時差、異なる気候条件が選手の回復をさらに困難にさせた。初戦のコートジボワール戦でのリードからの逆転負けは痛かったが、チーム内部にもう少し早く対応すべきであったという後悔が残ると語った。多くの課題を抱えたW杯だったという。
コラウティ氏は現在、自身のスポーツイベント会社を経営しており、イタリア陸上競技連盟やバレーボールチームの日本ツアーを企画するなど、日本とのビジネスを通じた関係を深めている。
特に注目すべきは、日本の大学選抜チームのイタリア遠征を企画し、セリエAのフィオレンティーナやACミランのユースチームに勝利を収めたことである。これにより、イタリアサッカー界に日本サッカーの質の高さを印象づけた。彼の目から見て、現在の日本は欧州で活躍する選手が信じられないほど増え、若手育成も著しい。彼は「もしセリエAのクラブ会長なら日本人選手だけを集める」と断言するほど、日本の選手が持つ誠実さやプロ意識、そして成長性に太鼓判を押している。
現在のイタリアサッカー界は、過去2大会連続でW杯出場を逃すなど苦境に立たされている。コラウティ氏は、連盟が外国人枠問題に固執し、他国の成功から学ぶ姿勢に欠けていると痛烈に批判した。若手選手を育てる重要性を認識しつつも、実戦経験の場が不足している現状に警鐘を鳴らす。

一方、日本サッカーについては、高いポテンシャルを持つ若手選手が豊富であると評価する。高井幸大選手や佐野航大選手のような若手は、できるだけ早く海外に出るべきだと強調した。コラウティ氏の「心からの夢」は、イタリアと日本の代表チームによる親善試合の実現である。両国のサッカー界が交流し、共に成長していく未来への強い希望を抱いている。イタリアサッカーは過去の栄光にすがるのではなく、謙虚に未来を見据え、計画性を持って若手を育てるべきだと訴えた。